[著者情報]
三島 健一(みしま けんいち)/お魚料理サイエンティスト
元築地市場仲卸。調理師。延べ1万枚以上の鱈を扱った経験から、魚の鮮度鑑定と分子調理学を融合させた独自の調理法を確立。料理教室「お魚サイエンス」主宰。「スーパーの魚を科学の力で最高の一皿に」をモットーに、論理的で再現性の高いレシピを伝信している。
スーパーの鮮魚コーナーで、きれいな鱈の切り身を見つけたとき。
「今日はお鍋にしようかな」
「ムニエルにしたらおいしそう」
そう思って手に取ったのに、ふとこんな不安がよぎることはありませんか?
「前に作ったらパサパサになった」
「家族に“鱈ってあんまり好きじゃない”と言われた」
「魚の臭みが残りそうで心配」
鱈は、冬の食卓にぴったりの白身魚です。
高たんぱくで低脂質、味も淡泊なので、鍋、ムニエル、ホイル焼き、フライ、スープなど、いろいろな料理に使えます。
でも、鱈は水分が多く脂が少ないため、加熱しすぎるとパサつきやすい魚でもあります。
つまり、鱈がパサつくのは、料理が下手だからではありません。
鱈の性質に合わせた下処理と火入れを知らなかっただけなのです。
この記事では、スーパーでの鱈の選び方、真鱈とスケトウダラの違い、臭みを抑える下処理、ふっくら焼くコツ、健康にうれしい栄養まで、初心者にもわかりやすく解説します。
安全に食べるために
魚は中心まで加熱して食べることが大切です。目安は、身が不透明になり、フォークでほぐれる状態です。食品安全の目安では、魚は中心温度63℃程度まで加熱することが示されています。小さなお子さん、妊娠中の方、高齢の方、体調が不安な方は、特にしっかり加熱して食べましょう。
この記事でわかること
- 鱈がパサつきやすい理由
- 真鱈とスケトウダラの違い
- スーパーで新鮮な鱈を選ぶポイント
- 臭みを抑える下処理
- ふっくら焼く火入れのコツ
- 鍋・ムニエル・ホイル焼きのポイント
- 鱈の栄養と健康メリット
- パサついた鱈のリメイク方法
鱈とはどんな魚?
鱈は、冬においしくなる白身魚です。
漢字で「魚へんに雪」と書くように、寒い季節の食材として親しまれています。
身は白く、味はあっさり。
脂が少ないため、こってりした魚が苦手な方でも食べやすいのが魅力です。
鍋に入れるとほろっとやわらかく、ムニエルにするとふっくら上品な味わいになります。
一方で、脂が少ないぶん、火を入れすぎると水分が抜けてパサつきやすくなります。

なぜ鱈はパサつきやすいの?
鱈がパサつきやすい理由は、水分が多く、脂質が少ないからです。
脂の多い魚は、加熱しても口当たりがしっとり感じやすいです。
でも、鱈のような低脂質の白身魚は、加熱しすぎると水分が抜け、身が締まって硬く感じやすくなります。
パサつきやすくなる原因
- 強火で長く焼きすぎる
- 下処理をせずに水分が出たまま焼く
- 粉をつけずに直接焼く
- 火が通ったあとも加熱し続ける
- 冷凍品を解凍後に水分を拭かずに使う
鱈をおいしく仕上げるには、「水分を上手に抜くところ」と「水分を逃がさないところ」の見極めが大切です。
臭みのある余分な水分は下処理で取り除き、調理中に必要なうるおいは逃がさないようにします。
真鱈とスケトウダラの違い
スーパーで「たら」と書かれている魚には、主に真鱈とスケトウダラがあります。
どちらも白身魚ですが、用途や特徴が少し違います。
| 種類 | 特徴 | 向いている料理 |
|---|---|---|
| 真鱈 | 身が白く、ふんわりした食感。冬の鍋や切り身料理でよく使われる | 鍋、ムニエル、ホイル焼き、フライ、ソテー |
| スケトウダラ | 身がやわらかく、加工品にも多く使われる。卵はたらこ・明太子の原料 | すり身、練り物、フライ、煮物、加工品 |
| 銀鱈 | 名前に鱈とあるが、マダラやスケトウダラとは別の魚。脂が多い | 西京焼き、照り焼き、煮付け |
鍋やムニエルなど、切り身そのものを楽しみたいときは真鱈が使いやすいです。
スケトウダラは、すり身や練り製品の原料としてもよく使われます。
また、「銀鱈」は名前に鱈と入っていますが、脂がのった別の魚です。
西京焼きなどで人気ですが、真鱈とは味も脂の量も大きく違います。
スーパーで新鮮な鱈を選ぶポイント
鱈は水分が多い魚なので、鮮度が落ちるとドリップが出やすく、臭みも出やすくなります。
買うときは、見た目とパックの中をよく確認しましょう。
新鮮な鱈の見分け方
- 身に透明感がある
- 身が白く、くすみが少ない
- 切り口がだれていない
- パックの中に水分や血水が少ない
- 身にハリがある
- 変色や強いにおいがない
パックの底に水分がたくさん出ているものは、鮮度が落ちている可能性があります。
また、身が白く濁りすぎている、黄色っぽい、強いにおいがある場合は避けたほうが安心です。
買ってきた鱈の保存方法
鱈は傷みやすい魚です。
買ってきたら、できるだけ早めに使いましょう。
冷蔵保存する場合
- パックから取り出します。
- キッチンペーパーで表面の水分を拭きます。
- 新しいキッチンペーパーで包みます。
- ラップや保存袋に入れます。
- チルド室または冷蔵庫の低温場所で保存します。
当日または翌日には使い切るのがおすすめです。
においや変色がある場合は、無理に使わないでください。
冷凍保存する場合
すぐに使わない場合は、冷凍保存もできます。
- 水分をしっかり拭き取ります。
- 1切れずつラップで包みます。
- 冷凍用保存袋に入れます。
- 空気を抜いて冷凍します。
使うときは、冷蔵庫でゆっくり解凍し、出てきた水分を拭き取ってから調理しましょう。
臭みを抑える下処理
鱈の臭みを抑えるには、調理前のひと手間が大切です。
おすすめは、軽く塩をして水分を拭き取る方法です。
魚の臭み取りでは、塩をふってしばらく置き、出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取る方法がよく使われます。
基本の下処理
- 鱈の切り身をバットや皿に置きます。
- 両面に軽く塩をふります。
- 5〜10分ほど置きます。
- 表面に出てきた水分をキッチンペーパーでやさしく拭き取ります。
- 必要に応じて、酒を少量ふってさらに臭みをやわらげます。
塩をふると、余分な水分と一緒に臭みが出やすくなります。
ただし、長く置きすぎると身が締まりすぎたり、塩辛くなったりします。
切り身なら5〜10分程度を目安にしましょう。
鱈をふっくら仕上げる3つのコツ
1. 下処理で水分を拭き取る
パックから出してそのまま焼くと、水分が多くて臭みが残ったり、焼き色がつきにくくなったりします。
塩をして出てきた水分を拭くことで、臭みを抑え、身も扱いやすくなります。
2. 小麦粉や片栗粉で薄くコーティングする
ムニエルやソテーにする場合は、焼く直前に小麦粉や片栗粉を薄くまぶしましょう。
粉が表面をコーティングし、身崩れを防ぎやすくなります。
さらに、焼き色もきれいにつき、ソースも絡みやすくなります。
3. 強火で焼き続けない
鱈は火が通りやすい魚です。
強火で長く焼くと、表面が乾き、身が硬くなりやすいです。
表面に焼き色をつけたら、火を少し弱める、または蓋をして余熱も使いながら火を通しましょう。
中心まで火が入り、身が不透明になり、フォークでほぐれる状態になれば食べごろです。
鱈のムニエルをふっくら作る方法
鱈をパサつかせずに楽しむなら、ムニエルはとてもおすすめです。
小麦粉で表面を包み、バターの香りをまとわせることで、淡泊な鱈がごちそうになります。
材料
- 真鱈の切り身:2切れ
- 塩:少々
- こしょう:少々
- 小麦粉:適量
- オリーブオイル:小さじ2
- バター:10g
- レモン:お好みで
作り方
- 鱈に軽く塩をふり、5〜10分置きます。
- 出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取ります。
- こしょうをふり、小麦粉を薄くまぶします。
- フライパンにオリーブオイルを入れて中火で温めます。
- 鱈を入れ、片面に軽く焼き色をつけます。
- 裏返して火を少し弱め、蓋をして中まで火を通します。
- 仕上げにバターを入れ、溶けたバターをスプーンでかけます。
- 身が不透明になり、ふんわりほぐれる状態になったら完成です。
レモンを少し絞ると、さっぱり食べられます。
バターを焦がしすぎないよう、仕上げに入れるのがポイントです。
鍋で鱈をおいしく食べるコツ
鱈といえば、やはり鍋ですよね。
ただし、鍋でも煮すぎると身が崩れたり、パサついたりします。
鍋のコツ
- 鱈は最後のほうに入れる
- ぐつぐつ煮立てすぎない
- 弱めの火でやさしく火を通す
- 火が通ったら早めに食べる
- 下処理で塩をして水分を拭いておく
鱈は火が通りやすいので、野菜やきのこにある程度火が通ってから入れるのがおすすめです。
強く煮立てると身が崩れやすいため、静かに火を入れましょう。
ホイル焼きでしっとり仕上げるコツ
ホイル焼きは、鱈をしっとり仕上げやすい調理法です。
きのこや野菜と一緒に包むと、蒸気でやさしく火が入ります。
おすすめの具材
- しめじ
- えのき
- 玉ねぎ
- にんじん
- 長ねぎ
- レモン
- バター
作り方のポイント
- 下処理した鱈をアルミホイルにのせます。
- きのこや野菜をのせます。
- 酒を少量ふります。
- バターやレモンをのせます。
- しっかり包みます。
- フライパンやトースターで加熱します。
酒を少し加えると、蒸し焼きになり、身がしっとりしやすくなります。
食べる前に、中心まで火が通っているか確認しましょう。
冷凍鱈をおいしく使うコツ
冷凍の鱈は便利ですが、解凍後に水分が出やすいです。
その水分をそのままにすると、臭みやパサつきの原因になります。
冷凍鱈の扱い方
- 冷蔵庫でゆっくり解凍する
- 急ぐ場合は袋に入れて流水解凍する
- 解凍後の水分をしっかり拭く
- 塩をして再度水分を拭く
- 焼く場合は小麦粉や片栗粉を薄くまぶす
解凍後の水分を拭くだけでも、仕上がりはかなり変わります。
鱈の栄養|高たんぱく・低脂質が魅力
鱈は、健康を意識する方にも取り入れやすい魚です。
文部科学省の食品成分データベースでは、まだら生100gあたり、エネルギー72kcal、たんぱく質17.6g、脂質0.2gとされています。
低脂質でたんぱく質をとりやすいので、ダイエット中の食事や、脂っこい料理を控えたい日のメニューにも向いています。
| 成分 | まだら生100gあたり |
|---|---|
| エネルギー | 72kcal |
| たんぱく質 | 17.6g |
| 脂質 | 0.2g |
| 炭水化物 | 0.1g |
| ビタミンD | 1.0μg |
ただし、鱈自体が低脂質でも、バターや揚げ油を多く使うとカロリーは上がります。
健康を意識するなら、ホイル焼き、鍋、蒸し料理、少量の油で作るムニエルなどがおすすめです。
鶏ささみとの違い
高たんぱく・低脂質と聞くと、鶏ささみを思い浮かべる方も多いでしょう。
鱈も同じように、軽い食事に使いやすい食材です。
鶏ささみに飽きた時や、魚を増やしたい時に取り入れると、食卓の幅が広がります。
鱈を取り入れるメリット
- 白身でクセが少ない
- 和風・洋風どちらにも合う
- 鍋やスープに入れやすい
- 低脂質でたんぱく質をとりやすい
- 魚の栄養を食卓に取り入れられる
「健康のために食べなきゃ」と思うより、「おいしいから食べたい」と思える調理法を見つけることが、続けるコツです。
パサついた鱈を救うリメイク方法
もし鱈がパサついてしまっても、捨てる必要はありません。
水分やソースを足せば、別の料理としておいしく食べられます。
おすすめリメイク
- ほぐしてクリームスープに入れる
- トマト煮込みにする
- マヨネーズと和えてサンドイッチの具にする
- 卵と一緒に雑炊に入れる
- ポテトサラダに混ぜる
- カレー粉を加えて魚そぼろにする
パサついた鱈は、ソースや汁気のある料理に入れると食べやすくなります。
よくある質問
Q. 鱈がパサパサになる原因は何ですか?
A. 主な原因は加熱しすぎです。鱈は脂が少なく水分が多い魚なので、強火で長く焼くと水分が抜けて硬くなりやすいです。下処理で水分を拭き、小麦粉を薄くまぶし、火を入れすぎないようにしましょう。
Q. 鱈の臭みを取るにはどうすればいいですか?
A. 軽く塩をふって5〜10分置き、出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取る方法がおすすめです。酒を少量ふると、さらに臭みがやわらぎやすくなります。
Q. 真鱈とスケトウダラはどちらを買えばいいですか?
A. 鍋やムニエル、ホイル焼きなど切り身を楽しむ料理なら真鱈が使いやすいです。スケトウダラは加工品やすり身の原料としてもよく使われます。
Q. 鱈はどのくらい加熱すればいいですか?
A. 身が不透明になり、フォークでほぐれる状態が目安です。食品安全の目安では、魚は中心温度63℃程度まで加熱することが示されています。生焼けが心配な場合は、中心温度計を使うと安心です。
Q. 冷凍鱈でもおいしく作れますか?
A. 作れます。冷蔵庫でゆっくり解凍し、出てきた水分をしっかり拭き取ってから調理しましょう。塩をして水分を拭く下処理も効果的です。
Q. 鱈はダイエット中にも向いていますか?
A. 鱈は低脂質でたんぱく質をとりやすい魚です。ただし、バターや揚げ油を多く使うとカロリーが増えるため、鍋、蒸し料理、ホイル焼きなどにすると取り入れやすいです。
Q. 銀鱈は鱈と同じですか?
A. 銀鱈は名前に鱈と入りますが、真鱈やスケトウダラとは別の魚です。脂が多く、味わいも違います。西京焼きや照り焼きに向いています。
まとめ:鱈は下処理と火入れでふっくらおいしくなる
鱈は、冬の食卓にぴったりの白身魚です。
高たんぱく・低脂質で、鍋、ムニエル、ホイル焼き、フライ、スープなど、いろいろな料理に使えます。
パサつきや臭みが気になる場合も、選び方、下処理、火入れを少し工夫するだけで、ぐっとおいしくなります。
今回のポイントをまとめます。
- 鱈は水分が多く脂が少ないため、加熱しすぎるとパサつきやすい
- 鍋やムニエルには真鱈が使いやすい
- パックの中に水分や血水が少なく、身に透明感があるものを選ぶ
- 調理前に軽く塩をして、出てきた水分を拭き取る
- ムニエルやソテーは小麦粉や片栗粉を薄くまぶす
- 強火で焼き続けず、蓋や余熱も使ってやさしく火を通す
- 魚は中心まで加熱し、身が不透明でほぐれる状態を確認する
- まだら生100gあたり、たんぱく質17.6g、脂質0.2gの低脂質食材
- パサついた場合は、スープやトマト煮、雑炊にリメイクできる
「鱈はパサつくから苦手」と思っていた方も、ぜひ一度、塩で下処理してからムニエルやホイル焼きにしてみてください。
ふっくらやさしい白身の味わいに、きっと鱈の印象が変わります。
今夜の食卓に、旬の鱈をおいしく取り入れてみてくださいね。
参考情報
- 文部科学省「食品成分データベース:まだら 生」
- FoodSafety.gov「Safe Minimum Internal Temperatures」
- FDA「Safe Food Handling」
- 農林水産省「aff 2020年1月号 魚の知識」
- ニッスイ「おさかなの基本 下処理のコツ」
- 東京都中央卸売市場「タラ」