上司や取引先へのメールを書いているときに、「念頭に置いてご検討ください」と入力して、ふと手が止まったことはありませんか?
「この言い方、少し偉そうに聞こえないかな?」と感じたなら、その感覚はとても大切です。
ビジネスメールでは、言葉の意味が正しくても、相手との関係性によっては少し強く聞こえてしまうことがあります。
「念頭に置く」は、「心に留めておく」「忘れずに意識する」という意味の言葉です。
自分の行動について使う場合は問題ありませんが、目上の人に対して「念頭に置いてください」と伝えると、相手に「忘れないでください」「意識しておいてください」と指示しているように聞こえる場合があります。
そこでこの記事では、「念頭に置く」を目上の人に使ってよいのか、どのように言い換えれば失礼になりにくいのかを、ビジネスメールですぐに使える例文つきでやさしく解説します。
【この記事の執筆者】
松本 結衣(Matumoto Yui) / ビジネスマナー講師・元大手企業エグゼクティブ秘書
企業向けマナー研修登壇数500回以上。若手社員やビジネス初心者の方に向けて、現場で使いやすい言葉遣いをわかりやすく伝えています。「失礼にならないかな?」という不安に寄り添いながら、安心して使える表現を丁寧に紹介します。
結論:「念頭に置いてください」は目上の人には避けた方が安心
結論からお伝えすると、目上の人に対して「念頭に置いてください」と書くのは、できれば避けた方が安心です。
「念頭に置く」には、「常に心に留めておく」「忘れずに意識する」という意味があります。意味そのものは悪い言葉ではありません。
ただし、「念頭に置いてください」と相手に向けて使うと、少し命令に近い響きになることがあります。
特に、上司や取引先など、自分より立場が上の相手に使うと、「覚えておいてください」「忘れないでください」と指示しているように受け取られる可能性があるのです。
もちろん、相手が必ず不快に感じるというわけではありません。
しかし、ビジネスメールでは少しでも誤解されやすい表現は避け、より丁寧でやわらかい言い方に変えるのが安心です。
目上の人に何かを知っておいてほしいときは、次のような表現に言い換えると、ぐっと印象がよくなります。
- お含みおきください
- ご承知おきいただけますと幸いです
- ご留意くださいますようお願いいたします
- ご認識いただけますと幸いです
- ご確認のうえ、ご検討いただけますと幸いです
「念頭に置く」の意味をやさしく確認
「念頭に置く」の「念頭」とは、心の中や頭の中を意味する言葉です。
つまり「念頭に置く」は、何かを忘れずに意識しておく、心に留めておくという意味になります。
たとえば、次のような使い方であれば自然です。
安全面を念頭に置いて、作業を進めてまいります。
お客様のご意見を念頭に置き、今後の改善に努めます。
このように、自分の行動について使う場合は、とても自然で丁寧な印象になります。
一方で、次のように相手へ向けて使うと、少し強い印象になることがあります。
この点を念頭に置いてご検討ください。
意味は伝わりますが、目上の人に対してはやや指示のように聞こえるため、ビジネスメールでは別の表現に言い換えるのがおすすめです。
目上の人に使える「念頭に置く」の言い換え表現
「念頭に置く」を言い換えるときは、場面に合わせて選ぶことが大切です。
何を伝えたいのかによって、最適な表現が変わります。
まずは、使いやすい言い換え表現を一覧で確認してみましょう。
| 言い換え表現 | 向いている場面 | 印象 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| お含みおきください | 事情を理解してほしいとき | 丁寧でやわらかい | 高い |
| ご承知おきいただけますと幸いです | 事前に知っておいてほしいとき | やや事務的だが丁寧 | 高い |
| ご留意くださいますようお願いいたします | 注意してほしい点があるとき | 丁寧な注意喚起 | 高い |
| ご認識いただけますと幸いです | 前提や状況を共有したいとき | ビジネスらしく自然 | 中〜高 |
| ご確認のうえ、ご検討ください | 資料や条件を見て判断してほしいとき | 実務的で使いやすい | 高い |
一番おすすめは「お含みおきください」
目上の人や取引先に対して、もっとも使いやすい言い換え表現のひとつが「お含みおきください」です。
「お含みおきください」は、こちらの事情や背景を理解したうえで、心に留めておいてほしいときに使います。
相手に強く求める印象が少なく、やわらかく丁寧に伝えられるのが特徴です。
たとえば、休業期間や納期の変更、対応に時間がかかる可能性などを伝える場面でよく使われます。
例文:休業期間を伝える場合
誠に勝手ながら、弊社では下記の期間を夏季休業とさせていただきます。
休業期間中にいただいたお問い合わせにつきましては、営業再開後、順次対応いたします。
ご不便をおかけいたしますが、何卒お含みおきくださいますようお願い申し上げます。
例文:対応に時間がかかる可能性を伝える場合
現在、多くのお問い合わせをいただいており、通常よりもご返信にお時間を頂戴する場合がございます。
恐れ入りますが、あらかじめお含みおきくださいますようお願いいたします。
「念頭に置いてください」よりも、相手への配慮が伝わりやすい表現です。
迷ったときは、まず「お含みおきください」を候補にするとよいでしょう。
事前に知っておいてほしいなら「ご承知おきいただけますと幸いです」
決定事項や変更点などを、あらかじめ相手に伝えておきたいときは「ご承知おきいただけますと幸いです」が使いやすい表現です。
「ご承知おきください」だけでも意味は通じますが、少し事務的で一方的に聞こえることがあります。
そのため、目上の人や取引先には「ご承知おきいただけますと幸いです」とすると、よりやわらかい印象になります。
例文:会議時間の変更を伝える場合
次回の定例ミーティングにつきまして、開始時間が14時から15時へ変更となりました。
恐れ入りますが、あらかじめご承知おきいただけますと幸いです。
例文:前提条件を伝える場合
本資料は現時点での情報をもとに作成しているため、今後内容が変更となる可能性がございます。
その点につきまして、あらかじめご承知おきいただけますと幸いです。
社内メールや事務連絡ではとても使いやすい表現です。
ただし、謝罪やお願いの場面では少し硬く感じられることもあるため、その場合は「お含みおきください」の方が自然です。
注意してほしい点があるなら「ご留意ください」
相手に注意してほしいことや、見落とさないでほしい点がある場合は「ご留意ください」が適しています。
「注意してください」と書くと少し強い印象になりますが、「ご留意ください」にすると、ビジネスらしい丁寧な注意喚起になります。
さらにやわらかくしたい場合は、「ご留意くださいますようお願いいたします」「ご留意いただけますと幸いです」とするとよいでしょう。
例文:資料の確認ポイントを伝える場合
本日お送りした資料につきまして、3ページ目の金額欄に修正がございます。
ご確認の際は、該当箇所にご留意くださいますようお願いいたします。
例文:契約内容の注意点を伝える場合
ご契約内容に一部変更がございますため、別添資料の赤字部分をご確認ください。
特に納品時期につきましては、ご留意いただけますと幸いです。
「ここを見落とさないでほしい」という場面では、「念頭に置いてください」よりも「ご留意ください」の方が自然です。
やわらかく伝えたいときの言い換え例
ビジネスメールでは、同じ内容でも少し言い回しを変えるだけで、印象が大きく変わります。
次のように言い換えると、目上の人にも失礼になりにくくなります。
| 避けたい表現 | おすすめの言い換え |
|---|---|
| この点を念頭に置いてください。 | この点につきまして、ご留意いただけますと幸いです。 |
| 納期変更を念頭に置いてご対応ください。 | 納期が変更となっておりますので、あらかじめご承知おきいただけますと幸いです。 |
| こちらの事情を念頭に置いてください。 | こちらの事情につきまして、何卒お含みおきくださいますようお願いいたします。 |
| 注意点を念頭に置いて確認してください。 | 注意点をご確認のうえ、ご対応いただけますと幸いです。 |
特に取引先へのメールでは、「ください」で終わる表現を少しやわらげるだけでも、丁寧な印象になります。
「念頭に入れる」は誤用なので注意
「念頭に置く」と似た言葉として、「念頭に入れる」と言ってしまう方がいますが、これは誤用です。
「念頭」はすでに「心の中」「頭の中」という意味を持つ言葉です。
そのため、「念頭に入れる」という表現は不自然になります。
おそらく、「頭に入れる」と「念頭に置く」が混ざってしまった言い方だと考えられます。
正しくは、次のように使い分けましょう。
- 念頭に置く
- 心に留める
- 頭に入れる
- 考慮する
- 意識する
ビジネスメールでは、言葉の誤用が相手に気づかれやすいこともあります。
特に大切なメールでは、「念頭に入れる」と書いていないか、送信前に一度確認しておくと安心です。
✍️ ビジネスマナー講師からのひとこと
「念頭に入れる」は、よくある言い間違いです。もし迷ったら、「念頭に置く」または「心に留める」に言い換えましょう。メールを書くときは、少し立ち止まって言葉を確認するだけで、相手に与える印象がぐっと丁寧になります。
自分の決意を伝えるときは「念頭に置く」を使ってもOK
ここまで、目上の人に対して「念頭に置いてください」と使うのは避けた方がよいとお伝えしました。
ただし、自分自身の行動について使う場合は問題ありません。
たとえば、上司から指摘を受けたあとに、「ご指摘いただいた点を念頭に置き、今後の業務に活かしてまいります」と書くのは、とても自然です。
この場合は、相手に何かを求めているのではなく、自分が意識して行動するという意味になります。
そのため、丁寧で前向きな印象を与えられます。
例文:上司への返信
ご指摘いただき、誠にありがとうございます。
今回いただいたご意見を念頭に置き、今後は確認体制をより徹底してまいります。
引き続きご指導のほど、よろしくお願いいたします。
例文:取引先への返信
貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございます。
ご指摘の内容を念頭に置き、今後のご提案内容に反映してまいります。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
このように、「自分が念頭に置く」という使い方なら、ビジネスシーンでも安心して使えます。
シーン別・そのまま使えるメール例文
ここからは、実際のビジネスメールで使いやすい例文を、場面別にご紹介します。
取引先に変更点を伝える場合
平素より大変お世話になっております。
先日ご案内いたしました納品スケジュールにつきまして、一部変更がございます。
詳細は添付資料に記載しておりますので、ご確認いただけますと幸いです。
なお、納品予定日が変更となっております点、あらかじめご承知おきいただけますようお願いいたします。
上司に確認をお願いする場合
お疲れ様です。
企画書の修正版を添付いたします。
前回ご指摘いただいた点を反映しておりますので、ご確認いただけますと幸いです。
特に2ページ目の費用欄につきまして、ご留意くださいますようお願いいたします。
事情を理解してほしい場合
誠に恐れ入りますが、現在確認に通常よりお時間をいただいております。
〇日までには改めてご連絡いたしますので、何卒お含みおきくださいますようお願い申し上げます。
謝罪文で使う場合
このたびはご不便をおかけし、誠に申し訳ございません。
現在、原因の確認と再発防止策の検討を進めております。
今後は同様のことがないよう、今回のご指摘を念頭に置き、社内での確認体制を徹底してまいります。
まとめ
「念頭に置く」は、決して悪い言葉ではありません。ただし、目上の人に対して「念頭に置いてください」と使うと、少し上から目線に聞こえてしまうことがあります。
相手に失礼なく伝えたいときは、場面に合わせて次のように言い換えるのがおすすめです。
- 事情を理解してほしいときは「お含みおきください」
- 事前に知っておいてほしいときは「ご承知おきいただけますと幸いです」
- 注意してほしいときは「ご留意ください」
- 資料や条件を見てほしいときは「ご確認のうえ、ご検討ください」
また、「念頭に入れる」は誤用なので注意しましょう。
正しくは「念頭に置く」または「心に留める」です。
言葉選びに迷って調べているあなたは、すでに相手への配慮ができている方です。
ほんの少し表現を整えるだけで、メールの印象はぐっと丁寧になります。
この記事の例文を参考に、自信を持って送信ボタンを押してくださいね。
【参考文献リスト】
- Chatwork: 「念頭に置く」の意味やビジネスシーンでの使い方を【例文付き】で詳しく解説
- マイナビニュース: 「念頭に置く」の意味は? 「念頭に入れる」は誤用? 例文や類語、敬語も紹介
- TRANS.Biz: 「念頭に置く」の意味とは?敬語表現や類語・言い換えを例文で解説