「親の介護が必要になってきた気がするけれど、何から始めればいいのかわからない」
そんなとき、最初の大きな一歩になるのが要介護認定の申請です。
ただ、はじめて手続きをする方にとっては、「どこに申請するの?」「何を準備すればいいの?」「調査では何を聞かれるの?」と不安がたくさんありますよね。
要介護認定は、介護保険サービスを利用するための入口です。
ここでつまずいてしまうと、その後の介護サービス利用まで遠回りになってしまうこともあります。
でも大丈夫です。流れをひとつずつ知っておけば、必要以上に身構えなくても進められます。
この記事では、要介護認定とは何かという基本から、申請先、必要書類、認定調査、主治医意見書、結果通知の見方、その後の手続きまで、初心者の方にもわかりやすく順番にご紹介します。
1. 要介護認定とは?まず知っておきたい基本
要介護認定とは、介護保険サービスを利用するために必要な「介護の必要度」を判定する仕組みです。
市区町村に申請し、訪問調査や主治医意見書などをもとに審査され、次のいずれかに判定されます。
- 非該当
- 要支援1・2
- 要介護1〜5
この結果によって、利用できるサービスの種類や量の目安が決まります。
たとえば、訪問介護、デイサービス、福祉用具貸与、住宅改修などを介護保険で利用したい場合は、まずこの認定を受ける必要があります。
要支援と要介護の違い
簡単にいうと、次のような違いがあります。
- 要支援:まだできることは多いけれど、一部に見守りや手助けが必要な状態
- 要介護:日常生活のさまざまな場面で、より継続的な介護が必要な状態
たとえば、買い物や掃除など家事面の支援が中心なら要支援になることがありますし、食事・排せつ・入浴などに介助が必要なら要介護に判定されることがあります。
誰が申請できるの?
原則として、次の方が対象です。
- 第1号被保険者:65歳以上の方
- 第2号被保険者:40歳以上65歳未満で、特定疾病が原因で介護が必要になった方
「最近もの忘れが増えた」「転びやすくなった」「家事や通院の付き添いが必要になってきた」など、日常生活に支えが必要になってきたと感じたら、早めに相談してみるのがおすすめです。
2. 要介護認定の流れをまず全体でつかもう
はじめて申請するときは、細かいことよりもまず全体の流れを知っておくと安心です。

要介護認定は、おおまかに次の順番で進みます。
- 市区町村に申請する
- 認定調査員の訪問調査を受ける
- 主治医意見書が作成される
- 一次判定・二次判定で審査される
- 結果通知が届く
- ケアプランを作成してサービス利用へ進む
認定結果は、原則として申請から30日以内に通知されます。
ただし、主治医意見書の回収に時間がかかったり、申請が集中していたりすると、結果が遅れることもあります。
そのため、「すぐ使いたいサービスがある」「退院後の支援を早く整えたい」という場合は、なるべく早めに動き始めることが大切です。
3. 申請はどこでできる?窓口と必要書類
要介護認定の申請先は、基本的に本人が住んでいる市区町村の介護保険担当窓口です。
市役所や区役所の「介護保険課」「高齢福祉課」などが窓口になっていることが多いです。
また、次のようなところでも相談や申請支援を受けられます。
- 地域包括支援センター
- 居宅介護支援事業所
- 入院先の医療機関の相談員
- 施設の相談窓口
「いきなり市役所に行くのは不安」という方は、まず地域包括支援センターに相談するのも安心です。
申請時に準備したいもの
自治体によって多少違いはありますが、一般的には次のようなものを準備します。
| 書類・情報 | 内容 |
|---|---|
| 要介護認定申請書 | 窓口や自治体ホームページで入手 |
| 介護保険被保険者証 | 65歳以上の方は通常必要 |
| 本人確認書類 | マイナンバーカード、運転免許証など |
| 主治医の情報 | 病院名、医師名、電話番号など |
| 代理人の書類 | 代理申請の場合は委任状などが必要な場合あり |
第2号被保険者の方は、医療保険証の情報が必要になることがあります。
詳しくは自治体窓口で確認すると安心です。
オンライン申請はできる?
自治体によっては、マイナポータルを使ったオンライン申請に対応しています。
ただし、すべての市区町村が対応しているわけではありません。
対応していても、その後の訪問調査や主治医意見書の手続きは別に必要です。
「全部ネットだけで終わる」というよりは、申請の入口をオンラインで行える自治体がある、と考えておくとわかりやすいです。
4. 認定調査(訪問調査)では何を見られるの?
申請後、認定調査員が自宅や入院先、施設などを訪問し、本人の心身の状態を確認します。
この認定調査は、要介護認定の中でもとても大切な場面です。
調査は全国共通の基準で行われ、基本調査は74項目です。
そこに加えて、調査員が気づいたことや家族から聞いた内容を「特記事項」として記録します。

よく確認される内容
調査では、次のようなことが確認されやすいです。
- 立ち上がり、歩行、移動はどのくらいできるか
- トイレや排せつに介助が必要か
- 食事は自分でできるか
- 入浴や着替えにどのくらい助けが必要か
- 日時や場所がわかるか
- 物忘れや混乱があるか
- 服薬管理ができるか
- 転倒や夜間の見守りが必要か
調査時間は30分〜1時間ほどが目安ですが、状態によって前後します。
認定調査で大切なのは「普段どおり」を伝えること
認定調査の場では、本人ががんばってしまうことがよくあります。
たとえば、普段は家族の支えがないと難しい動作でも、「できます」と答えてしまうことがあります。
でも、ここで無理をしてしまうと、実際より軽く判定されることがあります。
大切なのは、「その日たまたまできたかどうか」ではなく、普段の生活ではどうかを伝えることです。
そのため、できれば普段介護をしている家族が同席し、次のような具体例を補足できると安心です。
- 夜中に何度もトイレ介助が必要
- 一人で歩くと転倒が心配
- 服薬を忘れやすい
- お風呂は声かけだけでは難しい
- 日によって認知症の症状に波がある
事前にメモを用意しておくと安心
当日になると、意外と伝えたいことを忘れてしまいます。
そのため、1〜2週間ほどの様子をメモしておくのがおすすめです。
- どの場面で介助が必要か
- 転倒やヒヤッとした出来事
- 夜間の介助回数
- 食事・排せつ・入浴の困りごと
- 物忘れや混乱の様子
こうしたメモは、調査員への説明にも役立ちますし、あとで主治医に相談するときにも使いやすいです。
5. 主治医意見書とは?何をしておけばいい?
訪問調査と並んで大切なのが、主治医意見書です。
これは、本人の病気や心身の状態、日常生活への影響などを、主治医が医学的な視点から記載する書類です。
通常は、市区町村が主治医に直接依頼します。
ただし、2025年以降の整理では、自治体によっては申請前に主治医意見書を準備して申請時に提出する運用も可能とされています。
とはいえ、全国一律ではないため、まずは自治体窓口に確認するのが安心です。
主治医意見書で大切なのは「生活の困りごとを医師に伝えておくこと」
診察室では短時間しか話せないため、家での困りごとが主治医に十分伝わっていないことがあります。
たとえば、次のようなことは、診察だけでは見えにくいです。
- 夜に何度も起きて介助が必要
- 家の中でも転びやすい
- 食事をこぼす、むせやすい
- 服薬管理が難しい
- 認知症の症状で家族の見守りが欠かせない
こうした実情を事前にメモにして受診時に伝えておくと、医師にも状況が伝わりやすくなります。
かかりつけ医がいない場合は?
主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師が対応することがあります。
ただし、普段の状態を把握している医師がいた方が話が進みやすいため、できれば早めに相談先を確認しておくと安心です。
6. 認定結果が届いたらどうする?
認定結果は、郵送で届くのが一般的です。
通知には、次のような内容が記載されています。
- 認定区分(非該当・要支援1〜2・要介護1〜5)
- 認定の有効期間
- 更新時期
要支援1・2の場合
要支援1・2と認定された場合は、介護予防サービスや介護予防・日常生活支援総合事業の利用につながります。
ケアプランは、地域包括支援センターの担当職員が作成するのが基本ですが、居宅介護支援事業者のケアマネジャーが作成する場合もあります。
要介護1〜5の場合
要介護1以上の場合は、在宅で介護サービスを利用するなら、居宅介護支援事業所と契約してケアマネジャーにケアプランを作ってもらう流れが一般的です。
利用できるサービスには、たとえば次のようなものがあります。
- 訪問介護
- デイサービス
- 訪問看護
- 福祉用具貸与
- 住宅改修
- ショートステイ
「何を選べばいいかわからない」と感じる方が多いので、まずはケアマネジャーと一緒に整理していくと安心です。
認定結果に納得できない場合
「実際より軽い判定に感じる」「困りごとが十分反映されていない気がする」という場合は、不服申立て(審査請求)を検討できます。
また、認定の有効期間中でも、状態が大きく変わった場合は区分変更申請が可能です。
まずは自治体窓口や地域包括支援センター、ケアマネジャーに相談してみましょう。
7. 申請をスムーズに進める5つのポイント
はじめて要介護認定を申請する方に向けて、特に大切だと感じるポイントを5つにまとめます。
① 書類と情報を先にそろえる
申請書、被保険者証、本人確認書類、主治医情報などを先に確認しておくと、窓口で慌てずに済みます。
② 困りごとを具体的にメモしておく
「なんとなく大変」ではなく、「夜2回トイレ介助が必要」「週に2回転びそうになる」など、具体的な内容を残しておくと伝わりやすいです。
③ 本人にも“普段どおりでいい”と伝えておく
無理にがんばらなくていいこと、できないことは正直に話してよいことを、本人にもやさしく伝えておくと安心です。
④ 家族が同席して補足する
普段介護している家族が調査に同席すると、日常の様子をより正確に伝えやすくなります。
⑤ 一人で抱え込まず専門家に相談する
地域包括支援センター、ケアマネジャー、市区町村窓口は、介護申請の心強い味方です。迷ったら、早めに相談してみましょう。
8. 相談先はどこ?困ったときに頼れる窓口
要介護認定は、書類・調査・医師との連携など、初めての方には少し複雑に感じることがあります。
そんなときは、次の窓口を頼って大丈夫です。
地域包括支援センター
高齢者や家族の相談を無料で受けてくれる公的な窓口です。申請の流れ、介護保険制度、今後の支援まで幅広く相談できます。
市区町村の介護保険担当窓口
申請の正式な窓口です。必要書類や自治体ごとのルールを教えてもらえます。
居宅介護支援事業所
ケアマネジャーが所属している事業所です。申請の支援や、その後のサービス利用相談につながりやすいです。
病院の地域連携室・医療ソーシャルワーカー
入院中や退院前なら、病院側の相談員が申請の流れを教えてくれることがあります。
なお、民間の代行サービスもありますが、内容や費用は事業者によって大きく異なります。
まずは公的な相談窓口を利用し、そのうえで必要に応じて検討するのが安心です。
9. まとめ|要介護認定は“準備”と“連携”で進めやすくなる
要介護認定の申請は、親の介護が必要になったときの大切な第一歩です。
初めてだと不安も多いですが、流れを知って準備しておけば、必要以上に難しく考えなくても進められます。
特に大切なのは、次の5つです。
- 申請前に必要書類と主治医情報を整理しておく
- 日常生活の困りごとを具体的にメモしておく
- 認定調査では普段どおりの状態を伝える
- 主治医にも生活の実情を共有しておく
- 地域包括支援センターなどに早めに相談する
介護は、一人で抱え込むほどつらくなりやすいものです。
だからこそ、申請の段階から、制度や専門職を上手に頼ることがとても大切です。
「まだ早いかも」と迷っている段階でも、相談してみる価値はあります。
早めに動くことで、その後の介護生活が少しラクになることも少なくありません。
不安な気持ちをひとつずつ整理しながら、無理のない形で第一歩を踏み出してみてくださいね。
→ 「まだ早いかも…」と思ったら読む記事:要介護認定の申請を検討するタイミングと判断基準
【参考情報】
厚生労働省「介護サービスの利用のしかた」
厚生労働省「介護保険制度の概要」
厚生労働省「主治医意見書に関する資料」
https://tobusan-kaigo.com/youkaigo-nintei-higaitou/