人間など多くの哺乳類は、性染色体(XYやXX)によって性別が決まりますが、ワニやカメ、トカゲなど一部の爬虫類では、卵が孵化する際の温度によってオス・メスが決定されるという特性があります。
これを「温度依存型性決定(TSD: Temperature-Dependent Sex Determination)」といいます。
特にワニの場合、卵の孵化時の温度によって次のように性別が分かれることが知られています:
- 30℃以下 → メス
- 30~32℃ → オスまたはオスメス半々
- 33℃以上 → メス
つまり、中間の温度でオス、それ以外ではメスになるというのがワニの一般的な傾向です。
ただし、具体的な温度の境界はワニの種類や環境によって多少異なることがあります。
なぜ温度で性別が変わるの? ホルモンのはたらきに注目
この性別の変化は、卵の中で形成されるホルモンバランスに由来します。
温度によって性ホルモン(エストロゲンやアンドロゲン)の分泌が変化し、そのバランスがオス・メスを決定するのです。
例えば、低温や高温ではエストロゲン(メスのホルモン)が優位に働き、メスの個体が生まれやすくなります。
一方、適度な中間温度ではアンドロゲン(オスのホルモン)が優位に働き、オスが生まれる確率が高くなります。
人工繁殖では性別の調整も可能
動物園や保護施設などでワニを人工的に繁殖させる場合、この温度による性決定の性質を活用して、意図的にオスやメスの割合をコントロールすることができます。
繁殖プログラムのバランスを取るうえで、非常に重要な知識といえるでしょう。
カメは逆のパターン! 種によって異なる性決定
ちなみに、カメの場合はワニとは逆で、低温だとオス、高温だとメスが生まれる傾向があります。
このように、同じ爬虫類でも種類によって温度と性別の関係は異なるため、研究者たちはそれぞれの種に応じた温度管理が必要になります。
ワニの鳴き声とコミュニケーション
ちょっと意外かもしれませんが、ワニは「ゴォォォォー」というような声で鳴くことが知られています。
これは仲間とのコミュニケーションの一種で、繁殖期のオスとメスのやり取りや、オス同士の縄張り争いなどでも鳴き声が使われます。
また、気圧の変化や激しい天候(豪雨・雷など)に反応して鳴くこともあると言われています。
ワニの鳴き声には、感情や環境の変化が反映されているのかもしれません。
まとめ|ワニの性別は自然の温度にゆだねられている
ワニの性別が「温度」で決まるというのは、自然界の不思議さを物語る興味深い事実です。
人間のような遺伝的性決定とは異なり、ワニの世界では環境が次世代の性別を左右するというダイナミックな進化のしくみが存在します。
この知識は、ワニに限らず地球の生物多様性や気候変動との関係性を考えるうえでも重要な視点となるでしょう。