[著者情報]
👤 この記事を書いた人:田中 真人(たなか まさと)
元商社マンのビジネスコミュニケーション・コーチ
大手企業の新人研修講師として延べ3,000人を指導。「マナーはルールではなく、相手への思いやり」をモットーに、堅苦しくない実践的な指導で若手社員から支持を得ている。「失敗は成長の種。素直な君なら、言葉を変えるだけですぐに化けるよ」と背中を押す、頼れる先輩コーチ。
上司に資料の出来を褒められて、とっさに「あ、嬉しいです!」と返してしまった帰り道。
「あれ、今の返し方って学生気分だと思われたかな…」「もっと社会人らしい言葉があったんじゃないか…」と、電車の窓に映る自分を見て後悔していませんか?
その気持ち、痛いほどよく分かります。
私も新人の頃、同じ失敗をして頭を抱えたことがありますから。
でも、安心してください。「嬉しい」という感情自体は素晴らしいものです。
上司もあなたの素直さを決して悪いとは思っていないはずです。
ただ、その素直な感情を「大人の言葉」に変換するフィルターを一枚通すだけで、あなたの評価は劇的に変わります。
この記事では、元商社マンで現在はビジネスコーチをしている私が、褒められた瞬間に0.5秒で口から出るべき「正解フレーズ」と、会話を弾ませる「コンボ技」を伝授します。
明日からは、褒められるのが待ち遠しくなりますよ。
なぜ「嬉しいです」だと損をするのか?ビジネス敬語の「3つの役割」
そもそも、なぜビジネスシーンで「嬉しいです」と言うと、少し幼稚に見えてしまうのでしょうか?
それは、敬語が持つ役割に関係しています。
ビジネスにおける敬語は、単に相手を敬うためだけのマナーではありません。
「自分を律し、感情を客観的な言葉に置き換える知性」を示すツールでもあります。
「嬉しい」という言葉は、あなたの感情そのものです。
それをそのまま口に出すことは、裏を返せば「感情をコントロールしていない」という印象を与えかねません。
一方で、「光栄です」や「恐縮です」といった言葉は、自分の置かれた状況を客観視し、相手への敬意を含んだ表現です。
つまり、「嬉しい」という生の感情を、「光栄です」という知的な言葉に変換してアウトプットできるかどうか。
ここに、学生とプロのビジネスパーソンの決定的な違いがあるのです。
【保存版】褒められたら0.5秒で返す!「感謝・恐縮・意欲」の3段活用チャート
では、具体的にどう言い換えれば良いのでしょうか?
とっさの場面で迷わないように、「嬉しい」という感情を「感謝」「恐縮」「意欲」の3つの方向に分解して整理しましょう。
この3つさえ押さえておけば、どんな褒め言葉にも0.5秒で反応できます。

1. 感謝の言い換え:「光栄です」
最も汎用性が高く、使いやすいのがこれです。
「嬉しい」という感情を、「あなたに評価されて名誉に思います(感謝)」というニュアンスで伝えます。
- 「部長にそう言っていただけて、光栄です。」
2. 恐縮の言い換え:「恐れ入ります」
相手がかなり目上の人だったり、過分な褒め言葉をいただいたりした時は、「自分には勿体ないです(恐縮)」という姿勢を見せます。
- 「身に余るお言葉、恐れ入ります。」
3. 意欲の言い換え:「励みになります」
これが使えると、上司は一番喜びます。
単に喜ぶだけでなく、「その評価をエネルギーに変えて、次も頑張ります(意欲)」という前向きな姿勢を示せるからです。
- 「そのお言葉、大変励みになります。」
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 迷ったら「励みになります」を選んでください。
なぜなら、上司が部下を褒める最大の目的は「モチベーションを上げること」だからです。「嬉しい」と喜ぶ部下も可愛いですが、「それを糧に頑張ります」と返す部下は、上司にとって頼もしい存在に映ります。この一言が、次のチャンスを引き寄せますよ。
「とんでもないです」で会話を殺していませんか?評価を上げる「否定+肯定」のコンボ技
日本人の美徳として、褒められた時に「いえいえ、とんでもないです!」と謙遜することがありますよね。
でも、これだけで会話を終わらせていませんか?
実は、「とんでもないです」だけの返答は、ビジネスでは「会話キラー」になりがちです。
相手の「褒めたい」という気持ちを全否定することになるため、そこで会話がプツンと途切れてしまうのです。
そこで使ってほしいのが、「否定+肯定」のコンボ技です。
謙遜の「とんでもないです」の後に、すかさず感謝の「光栄です」を繋げるのです。
- NG例: 「君、今回のプレゼン良かったよ」→「いえいえ、とんでもないです…(沈黙)」
- OK例: 「君、今回のプレゼン良かったよ」→「いえいえ、とんでもないです。でも、そう言っていただけて光栄です!」
このように、「とんでもないです」で謙虚さを見せつつ、「光栄です」で相手の顔を立てる。
このコンボ技を使えば、謙虚でかつ感じの良い、絶妙なコミュニケーションが成立します。
誘われた時・貰った時…シーン別「喜び」の変換リスト
褒められた時以外にも、「嬉しい」と感じる瞬間はたくさんあります。
食事に誘われた時、お土産を貰った時、仕事を手伝ってもらった時。
それぞれのシーンに合わせた「大人の言い換え」をリストにしました。
📊 比較表
シーン別「嬉しいです」の大人の言い換えリスト
| シーン | いつもの言葉 | 大人の言い換え | ニュアンス・効果 |
|---|---|---|---|
| 食事・飲みに誘われた時 | 行きたいです! | 喜んで(お供させていただきます) | 誘ってくれたことへの感謝と、積極的な受諾の姿勢を示す。 |
| プレゼント・お土産を貰った時 | 貰っていいんですか? | 頂戴します / 大切に使わせていただきます | 遠慮するよりも、素直に受け取る方が相手も嬉しい。「大切にする」と添えるとベスト。 |
| 仕事を手伝ってもらった時 | 嬉しいです、助かります | 心強いです / 勉強になります | 単なる作業の軽減ではなく、相手の存在やスキルへの敬意を表す。 |
| 期待の言葉をかけられた時 | 頑張ります! | ご期待に添えるよう精進します | 「頑張る」という精神論を、「結果を出す」というプロの決意表明に変換する。 |
特に、上司や先輩に仕事を手伝ってもらった時に「助かります」と言うのは、実は少し上から目線(評価)のニュアンスが含まれることがあります。
そんな時は「〇〇さんがいてくださると心強いです」と言い換えてみてください。
相手の自尊心をくすぐる、魔法の言葉です。
よくある質問(FAQ)
最後に、言葉遣いに関してよくある疑問にお答えします。
Q. 「参考になります」は目上の人に使っていいですか?
A. NGです。 「参考にする」という言葉には、「自分の考えの足しにする(採用するかは自分で決める)」という評価のニュアンスが含まれます。目上の人の意見やアドバイスに対しては、「勉強になります」を使いましょう。
Q. メールと会話で使い分けるべきですか?
A. はい、少し使い分けるとよりスマートです。メールなどの書き言葉では「拝受しました」「光栄に存じます」といった硬めの表現が好まれますが、会話でそれを連発すると堅苦しくなります。会話では、「嬉しいです」という素直な言葉の後に「励みになります」を添えるくらいの、柔らかい表現でも十分に敬意は伝わります。
まとめ:言葉が変われば、扱われ方が変わる。明日から「光栄です」を使ってみよう
「嬉しいです」と言えるあなたの素直さは、素晴らしい武器です。それを捨てる必要はありません。
ただ、そこに「光栄です」や「励みになります」という大人の語彙力をプラスするだけで、周囲はあなたを「新人」ではなく「信頼できるビジネスパートナー」として見るようになります。
言葉が変われば、相手の反応が変わり、やがてあなた自身の扱われ方も変わっていきます。
最初は少し照れくさいかもしれません。
でも、明日誰かに褒められたら、それはチャンスです。
勇気を出して、「励みになります!」と返してみてください。
その一言が、あなたのキャリアを押し上げる最初の一歩になるはずです。
[参考文献リスト]