「なんでこの子、お顔がないの?」
遠足や運動会の前日、お子さんと一緒にてるてる坊主を作っていて、そんなふうに聞かれて困ったことはありませんか?
なんとなく作ってきたけれど、よく考えると「顔って最初から描いていいの?」「てるてる坊主ってそもそも何者なの?」と、意外と知らないことも多いですよね。
しかも調べてみると、「由来が怖い」「歌詞がこわい」などの情報が出てきて、ますます子どもにどう説明したらいいのか迷ってしまうこともあります。
でも大丈夫です。
てるてる坊主は、昔の人たちの「明日晴れてほしいな」という素直な願いが込められた、季節の小さなおまじないのような存在です。
この記事では、てるてる坊主の顔はいつ描くのか、由来はどんなふうに伝わっているのか、そして小さなお子さんにどうやさしく話せばいいのかを、わかりやすくまとめました。
【この記事を書いた人】
飯島 芳子 (童話作家)
季節行事や昔ながらの伝承を、親子向けにやさしく伝える記事を中心に執筆しています。難しい話をそのまま伝えるのではなく、「子どもにも安心して話せる言い方」に整えるのが得意です。
てるてる坊主の顔はいつ描くの?
結論からいうと、昔ながらの作法では、てるてる坊主は最初は顔を描かずに吊るし、願いがかなったあとに目を入れるとされています。
日本玩具博物館の解説では、江戸後期の文献『嬉遊笑覧』などから、当時は「照々法師(てりてりほうし)」などと呼ばれ、晴天の願いがかなったときに目を書き入れ、神酒を飲ませたらしいことがわかると紹介されています。
つまり、最初は「のっぺらぼう」のままでお願いをして、晴れたら「ありがとう」の気持ちで顔を入れる、という流れだったようです。
この形は、願いごとをして、かなったらお礼をするという昔ながらの考え方に近いものですね。
じゃあ、最初から顔を描いたらダメ?
ここで気になるのが、「最初から顔を描いたら間違いなの?」ということではないでしょうか。
答えとしては、絶対にダメというわけではありません。
たしかに昔の作法としては、願いがかなってから目を入れる形が紹介されていますが、今は家庭や園、学校でもいろいろな作り方があります。
特に小さなお子さんと一緒に作るときは、「お顔がないと怖い」「にこにこ顔にしたい」と感じることもありますよね。
そういうときは、無理に伝統にこだわりすぎなくて大丈夫です。
いちばん大切なのは、親子で「明日晴れるといいね」と楽しく願いをこめることです。
やさしい考え方
昔ながらの形を知っておくのはすてきなこと。でも、子どもと作る時間がつらくなってしまうなら、笑顔の顔を最初から描いても大丈夫。楽しく作れることがいちばんです。
てるてる坊主の由来は?
てるてる坊主の由来には、いくつかの話があります。
日本玩具博物館では、そのひとつとして中国の「掃晴娘(そうせいじょう/サオチンニャン)」の影響が考えられると紹介しています。
掃晴娘は、雲を掃いて晴れをもたらす存在として伝えられる人形や伝説の娘です。
ただし、これは「こういう影響が考えられる」という形で伝えられているもので、由来をひとつに決めきるというより、昔の人々の晴れを願う風習が日本で形を変えながら親しまれてきた、と考えるほうが自然です。
また、日本玩具博物館では、晴れた日に山に現れる妖怪「日和坊」とのつながりを考える説にも触れています。
つまり、てるてる坊主は「これが唯一の正解の由来です」と言い切るより、いろいろな願いや伝承が重なって、今の形になったと見るのがやさしくてわかりやすいです。
「由来が怖い」と言われるのはなぜ?
てるてる坊主を調べると、「由来が怖い」と書かれた記事を見かけることがありますよね。
その理由のひとつとしてよく挙げられるのが、童謡「てるてる坊主」の3番です。
Weathernewsの解説でも、この歌には3番まであり、3番には「そなたの首をチョンと切るぞ」という、今の感覚ではかなりびっくりする歌詞があると紹介されています。
たしかに言葉だけを見ると、とても強い表現です。
でも、この歌詞をそのまま「怖い昔話」と受け取るより、昔の人たちがそれだけ真剣に天気を願っていた、と受け止めるほうがわかりやすいです。
今のように天気予報が発達していない時代には、雨が続くことは暮らしに大きく関わる問題でした。
遠足どころか、農作物や生活そのものに影響した時代もあります。
そうした背景の中で、「どうか晴れてほしい」という気持ちが強く表れたもののひとつと考えると、少し見え方が変わります。
子どもにはどう伝えればいい?
大人としては由来を知っておきたいけれど、小さなお子さんにはもっとやさしく伝えたいですよね。
そんなときは、難しい歴史や怖い歌詞まで話さなくて大丈夫です。
まずは、こんなふうに伝えると安心です。
📊 比較表
子どもにやさしく伝える てるてる坊主の説明フレーズ
| 子どもの質問 | 2〜3歳くらい向け | 4〜6歳くらい向け |
|---|---|---|
| これ誰? | 「明日のお天気を晴れにしてねってお願いする子だよ」 | 「お空を晴れにしてねってお願いする、昔からあるおまじないのお人形だよ」 |
| なんで顔がないの? | 「晴れたら、にこにこのお顔を描いてあげるんだよ」 | 「明日晴れたら、ありがとうって気持ちでお顔を描くんだって」 |
| どうして作るの? | 「晴れるといいなってお願いするためだよ」 | 「遠足やおでかけの日に晴れてほしいから、昔からお願いしていたんだよ」 |
このくらいの伝え方なら、こわがらせずに、やさしく受け止めてもらいやすいです。
のっぺらぼうを怖がるときはどうする?
小さなお子さんの中には、顔のないてるてる坊主を見て「こわい」と感じる子もいます。
そんなときは、無理に「お顔は後でね」と押し通さなくて大丈夫です。
たとえば、こんなふうに声をかけてみてください。
- 「じゃあ最初から、にこにこ顔にしてお願いしようか」
- 「晴れてほしいから、うれしいお顔を描こうね」
- 「やさしいお顔にして、お天気にお願いしようね」
大切なのは、作法を守ることより、親子で安心して楽しく作れることです。
のっぺらぼうが苦手なお子さんには、最初から笑顔にしたり、ほっぺを描いたり、リボンをつけたりして、かわいくアレンジしてあげるのもおすすめです。

まとめ
てるてる坊主の顔は、昔ながらの作法では最初は描かず、晴れたら目を入れるとされてきました。
これは江戸時代の文献や、日本玩具博物館の解説からもうかがえます。
また、由来については、中国の掃晴娘の影響が考えられることや、昔の人たちが強く晴れを願ってきた背景があることもわかっています。
ただ、小さなお子さんに伝えるときは、むずかしい歴史やこわい歌詞をそのまま話す必要はありません。
「明日晴れるといいねってお願いするお人形だよ」
「晴れたらありがとうってお顔を描くんだよ」
そんなふうに、やさしく伝えてあげれば十分です。
そして、もしお子さんがのっぺらぼうを怖がるなら、最初から笑顔を描いても大丈夫。
いちばん大切なのは、親子で楽しく願いをこめることです。
ぜひ明日は、お子さんと一緒に「晴れますように」とてるてる坊主を飾ってみてくださいね。
【参考文献リスト】
- 日本玩具博物館「てるてる坊主・照々法師・日和坊主」
- 日本玩具博物館「夏の展示準備が始まりました」
- Weathernews「『てるてる坊主』の歌に隠された意外な秘密」