著者プロフィール
松木 忠(まつき ただし)/ビジネスライティング講師
企業研修や社内文書の添削を通じて、若手社員の報告書・提案書・メール文面の改善をサポート。難しい文章術ではなく、「相手に伝わる順番」「読み手が迷わない接続詞の使い方」を大切に、初心者にも実践しやすい文章改善法を紹介しています。
報告書や提案書を見直していて、こんなふうに感じたことはありませんか?
「しかし」が何度も出てくる。
「しかし」「しかしながら」「ですが」が続いて、文章が重たい。
上司に提出する前なのに、なんだか幼く見える気がする。
提出直前に気づくと、少し焦ってしまいますよね。
「とりあえず『ですが』に置き換えようかな」
「『しかしながら』にすれば丁寧に見える?」
「類語を増やせば、文章がうまく見えるのでは?」
そう考える方も多いと思います。
でも、実は「しかし」を別の言葉に置き換えるだけでは、読みやすい文章にはなりません。
大切なのは、前後の文が本当に「逆接」なのか、それとも「対比」「条件」「補足」「例外」なのかを見極めることです。
この記事では、ビジネス文書で「しかし」が続いてしまう原因、自然な言い換え表現、報告書やメールで使えるリライト例を、初心者の方にもわかりやすく解説します。
まず結論|「しかし」の連続は、単語ではなく構造を直す
文章の中で「しかし」が何度も続くとき、まず見直したいのは言い換え表現ではありません。
最初に確認したいのは、前後の文の関係です。
たとえば、次の2つはどちらも「しかし」でつなげられそうに見えます。
- 新サービスは機能が豊富です。しかし、操作が難しいです。
- 参加は原則必須です。しかし、体調不良の場合は欠席できます。
けれど、この2つは同じ逆接ではありません。
1つ目は「機能が豊富」という良い面と、「操作が難しい」という課題を比べています。つまり対比です。
2つ目は「原則必須」というルールに、「体調不良の場合」という例外を加えています。つまり条件・例外です。
このように考えると、次のように直せます。
- 新サービスは機能が豊富です。一方で、操作の難しさが課題です。
- 参加は原則必須です。ただし、体調不良の場合は欠席できます。
「しかし」を使いすぎている文章は、語彙力不足ではなく、前後の関係が整理されていないことが原因の場合があります。
やさしいポイント
「しかし」が続いたら、まずは言い換えを探す前に、「これは逆接? 対比? 条件? 補足?」と考えてみましょう。接続詞は、文章の関係性を示す道しるべです。
なぜ「しかし」が続くと読みにくくなるの?
「しかし」は、前の内容を受けて、それとは反対の内容を述べるときに使う接続詞です。
とても便利な言葉ですが、何度も続くと、読み手には次のような印象を与えることがあります。
- 否定が多く、少しきつく感じる
- 言い訳が続いているように見える
- 文章の流れがぶつ切りに感じる
- 同じ表現が続き、単調に見える
- 論理の関係が整理されていないように見える
たとえば、次の文章を見てみましょう。
新システムは操作性が高いです。しかし、導入コストが高いです。しかし、長期的には業務効率化が期待できます。しかし、現場からは不安の声も出ています。
意味は伝わりますが、「しかし」が続くことで、読み手は少し疲れてしまいます。
また、良い点と悪い点が交互に出てくるため、結論がどこに向かっているのかも見えにくくなっています。
このような文章は、次のように整理できます。
新システムは操作性が高く、長期的には業務効率化が期待できます。一方で、導入コストの高さと、現場の不安感が課題です。そのため、導入前に費用対効果の試算と、現場向け説明会の実施が必要です。
「しかし」を減らしただけで、文章全体の方向性が見えやすくなりました。
読みやすい文章とは、難しい言葉を使った文章ではありません。
読み手が、前後の関係を迷わず理解できる文章です。
「しかし」の基本の意味と使ってよい場面
「しかし」は、必ずしも悪い言葉ではありません。
むしろ、前の内容と後ろの内容がはっきり対立しているときには、とても使いやすい表現です。
「しかし」が自然な例
- 計画は順調に進んでいました。しかし、急な仕様変更により、納期の見直しが必要になりました。
- 価格は魅力的です。しかし、サポート体制には不安が残ります。
- 多くの社員が賛成しています。しかし、一部の部署からは慎重な意見も出ています。
このように、前の内容から予想される流れとは違う内容を述べるとき、「しかし」は自然に使えます。
ただし、1つの文章や段落の中で何度も使うと、否定が続いているように見えやすくなります。
目安として、同じ段落の中で「しかし」が2回以上出てきたら、言い換えや構成の見直しを検討しましょう。
「しかし」の言い換え一覧|文脈別に使い分けよう
ここでは、ビジネス文書で使いやすい「しかし」の言い換え表現を、文脈別に整理します。
大切なのは、「どれが一番丁寧か」ではなく、前後の文の関係に合っているかです。
| 言い換え表現 | 使う場面 | ニュアンス | 例文 |
|---|---|---|---|
| 一方で | 良い面と悪い面、A案とB案を比べるとき | 客観的な対比 | 導入効果は高いです。一方で、初期費用が課題です。 |
| その一方で | 前の内容と反対側の視点を加えるとき | やや丁寧な対比 | 若年層の利用は増えています。その一方で、高齢層への認知は十分ではありません。 |
| ただし | 条件や例外を加えるとき | ルール・条件の補足 | 全員参加を原則とします。ただし、体調不良の場合はこの限りではありません。 |
| もっとも | 前の内容を補足し、少し引き戻すとき | やや硬めの補足 | 短期的な効果は見込めます。もっとも、継続的な改善には追加検証が必要です。 |
| とはいえ | 前の内容を認めたうえで、別の見方を示すとき | やわらかい逆接 | 予算は限られています。とはいえ、必要最低限の対策は行うべきです。 |
| とはいうものの | 前の内容を受け止めながら、現実的な課題を示すとき | やや丁寧で説明的 | 改善傾向は見られます。とはいうものの、目標達成にはまだ時間がかかります。 |
| なお | 補足情報を加えるとき | 淡々とした補足 | 会議は14時開始です。なお、資料は事前に共有済みです。 |
| ただ | 少しやわらかく補足や注意点を加えるとき | 口語寄りでやわらかい | 内容は問題ありません。ただ、表現を少し調整したほうがよさそうです。 |
| ですが | メールなどでやわらかく逆接を示すとき | 会話に近い丁寧さ | ご提案ありがとうございます。ですが、今回は見送らせていただきます。 |
| しかしながら | 改まった文書で、はっきり逆接を示すとき | フォーマルで硬め | ご提案は大変魅力的です。しかしながら、現時点では予算の確保が困難です。 |
ビジネス文書では、「しかしながら」を使うと丁寧に見えることがあります。
ただし、文章全体が硬くなりやすいため、メールや社内文書では「一方で」「ただし」「とはいえ」を使ったほうが自然な場合もあります。
「一方で」と「ただし」の違い
「しかし」の言い換えで特に迷いやすいのが、一方でとただしです。
この2つは似ているようで、役割が違います。
| 表現 | 役割 | 使う場面 | 例 |
|---|---|---|---|
| 一方で | 対比 | メリットとデメリット、A案とB案などを比べる | 効果は高い。一方で、費用も高い。 |
| ただし | 条件・例外 | 前の内容に制限や注意点を加える | 参加は自由です。ただし、事前申込が必要です。 |
迷ったときは、次のように考えるとわかりやすいです。
- 比べているなら「一方で」
- 条件を付けているなら「ただし」
例1:一方でが合う文
修正前:新ツールは操作が簡単です。しかし、細かい設定には時間がかかります。
修正後:新ツールは操作が簡単です。一方で、細かい設定には時間がかかります。
これは「簡単」という良い面と、「時間がかかる」という課題を比べているため、「一方で」が自然です。
例2:ただしが合う文
修正前:資料の提出期限は金曜日です。しかし、事前に相談があれば延長できます。
修正後:資料の提出期限は金曜日です。ただし、事前に相談があれば延長できます。
これは「金曜日が期限」というルールに、「相談があれば延長できる」という条件を加えているため、「ただし」が自然です。

プロっぽく見える「しかし」を減らす5つのリライト術
ここからは、実際に文章を直すときの方法を紹介します。
単語を置き換えるだけでなく、文章の流れそのものを整えていきましょう。
1. 対比に変える
良い面と悪い面を並べるときは、「しかし」よりも「一方で」が自然です。
Before:
新サービスは問い合わせ対応を自動化できます。しかし、初期設定に時間がかかります。
After:
新サービスは問い合わせ対応を自動化できます。一方で、初期設定に時間がかかる点は課題です。
「しかし」だと否定的に見えますが、「一方で」にすると、冷静に比較している印象になります。
2. 条件・例外に変える
前の内容に条件を加える場合は、「ただし」が向いています。
Before:
原則として全社員が研修に参加します。しかし、出張中の社員は録画視聴とします。
After:
原則として全社員が研修に参加します。ただし、出張中の社員は録画視聴とします。
このように、「ただし」はルール・条件・例外の説明に向いています。
3. 補足に変える
前の文を否定しているわけではなく、単に情報を追加しているだけなら、「しかし」は不要です。
Before:
会議は15時から行います。しかし、資料は事前に共有済みです。
After:
会議は15時から行います。なお、資料は事前に共有済みです。
この場合、「資料は共有済み」という情報は、前の文を否定していません。
そのため、「なお」を使うと自然です。
4. 接続詞を削る
前後の関係が自然に伝わる場合は、接続詞を削ったほうが読みやすくなることがあります。
Before:
前回のキャンペーンでは申込数が伸びませんでした。しかし、今回は広告文を見直したことで、申込数が増加しました。
After:
前回のキャンペーンでは申込数が伸びませんでした。今回は広告文を見直したことで、申込数が増加しました。
「前回」と「今回」が対比になっているため、接続詞がなくても意味は伝わります。
むしろ、削ることで文章がすっきりします。
5. 文章の順番を入れ替える
「しかし」が続く文章は、情報の順番が整理されていないことがあります。
その場合は、接続詞を直すより、文の順番を変えるほうが効果的です。
Before:
新システムは高機能です。しかし、導入コストが高いです。しかし、長期的には人件費を削減できます。
After:
新システムは高機能で、長期的には人件費の削減が期待できます。一方で、導入コストが高いため、初年度の予算確保が課題です。
良い点をまとめ、課題を最後に整理することで、文章の流れが自然になりました。
報告書で使えるリライト例
ここでは、実際のビジネス文書に近い例で見ていきましょう。
例1:売上報告
修正前:
今月の売上は前月比で増加しました。しかし、目標には届きませんでした。しかし、新規顧客からの問い合わせは増えています。
修正後:
今月の売上は前月比で増加しました。一方で、目標には届いていません。なお、新規顧客からの問い合わせは増えているため、来月以降の受注につなげる施策が必要です。
「売上増加」と「目標未達」は対比なので「一方で」を使います。
「問い合わせ増加」は補足情報なので「なお」でつなぐと自然です。
例2:提案書
修正前:
A案は費用を抑えられます。しかし、導入に時間がかかります。しかし、B案は短期間で導入できます。
修正後:
A案は費用を抑えられる点がメリットです。一方で、導入には時間がかかります。短期間での導入を重視する場合は、B案が有力な選択肢です。
A案とB案を比べる場合は、「しかし」を続けるより、比較軸を明確にしたほうが読みやすくなります。
例3:謝罪メール
修正前:
ご指摘の件について確認いたしました。しかし、弊社側では同様の不具合を確認できておりません。しかし、引き続き調査を進めます。
修正後:
ご指摘の件について確認いたしました。現時点では、弊社側で同様の不具合は確認できておりません。引き続き調査を進め、確認でき次第、改めてご報告いたします。
謝罪や問い合わせ対応では、「しかし」が続くと反論のように見えることがあります。
事実を淡々と分けて書いたほうが、誠実な印象になります。
メールで「しかし」を使うときの注意点
メールでは、相手の表情が見えません。
そのため、「しかし」を使うと、思ったより強く受け取られることがあります。
特に、取引先や目上の方に対しては、次のような言い換えを使うと印象がやわらぎます。
| 少し強く見える表現 | やわらかい表現 |
|---|---|
| しかし、対応は難しいです。 | 恐れ入りますが、現時点での対応は難しい状況です。 |
| しかし、納期には間に合いません。 | 一方で、現在の進行状況では納期の調整が必要です。 |
| しかし、その条件では受けられません。 | ただし、その条件で進める場合は、追加確認が必要です。 |
| しかし、弊社の責任ではありません。 | 確認した範囲では、弊社側での不具合は確認できておりません。 |
メールでは、言葉を強くするよりも、状況・理由・代替案を丁寧に伝えることが大切です。
やってはいけないNGリライト
NG1:「しかし」をすべて「ですが」に置き換える
「しかし」が続くからといって、すべてを「ですが」に変えても、文章はあまり改善しません。
NG例:
売上は増えました。ですが、目標には届きませんでした。ですが、問い合わせは増えています。
言葉は変わっていますが、同じ逆接が続いているため、読みにくさは残っています。
NG2:「しかしながら」を多用する
「しかしながら」は丁寧に見えますが、使いすぎると硬く重たい文章になります。
NG例:
本案は有効です。しかしながら、費用面に課題があります。しかしながら、長期的な効果は期待できます。
改まった文書でも、毎回「しかしながら」を使う必要はありません。
NG3:逆接ではないのに「しかし」を使う
補足や追加の情報に「しかし」を使うと、読み手が「何が反対なの?」と迷ってしまいます。
NG例:
会議は13時からです。しかし、会議室はAです。
改善例:
会議は13時からです。会議室はAです。
この場合は接続詞がなくても十分です。
「しかし」を直すときの3ステップ
文章を見直すときは、次の順番で進めるとスムーズです。
- 「しかし」に印をつける
まずは文章内の「しかし」「ですが」「けれども」「ただし」などに印をつけます。 - 前後の関係を分類する
逆接、対比、条件、補足、不要のどれに当たるかを確認します。 - 接続詞を選ぶ、または削る
関係に合う接続詞に変えるか、なくても通じる場合は削ります。
この3ステップを使うと、機械的な言い換えではなく、文章の流れに合った自然な修正ができます。
見直し用チェックリスト
報告書やメールを提出する前に、次の項目を確認してみましょう。
- 同じ段落に「しかし」が2回以上出ていないか
- 「しかし」を「ですが」に置き換えただけになっていないか
- 前後の関係が本当に逆接なのか
- 対比なら「一方で」が使えないか
- 条件や例外なら「ただし」が使えないか
- 補足なら「なお」「また」が使えないか
- 接続詞を削っても意味が通じないか
- 読み手に否定的な印象を与えすぎていないか
- 結論がどこにあるか明確か
- 一文が長くなりすぎていないか
文章を上手に見せるコツは、難しい言葉を増やすことではありません。
読み手が迷わないように、情報の関係を整理することです。
よくある質問
Q. 「しかし」はビジネス文書で使ってはいけませんか?
A. 使っても問題ありません。ただし、連続して使うと否定が続く印象になりやすいため、文脈に応じて「一方で」「ただし」「とはいえ」などを使い分けると読みやすくなります。
Q. 一番丁寧な「しかし」の言い換えは何ですか?
A. 場面によります。改まった文書なら「しかしながら」が使いやすい場合もありますが、毎回使うと硬くなります。対比なら「一方で」、条件なら「ただし」、やわらかく受け止めたいなら「とはいえ」が自然です。
Q. 「ですが」は失礼ですか?
A. 失礼とは限りません。メールや会話に近い文面では自然に使えます。ただし、正式な報告書や提案書では、やや口語的に見えることがあるため、「一方で」「ただし」「しかしながら」なども検討しましょう。
Q. 「けれども」はビジネス文書で使えますか?
A. 使えないわけではありませんが、やや日常会話に近い印象です。社内チャットややわらかいメールでは使えますが、報告書や提案書では「一方で」「ただし」「とはいえ」のほうが自然なことが多いです。
Q. 「しかしながら」と「とはいえ」はどう違いますか?
A. 「しかしながら」は前の内容と後の内容の対立を比較的はっきり示す、硬めの表現です。「とはいえ」は前の内容を一部受け止めたうえで別の見方を示すため、少しやわらかい印象になります。
Q. 接続詞は多いほうが丁寧ですか?
A. 多ければ丁寧というわけではありません。接続詞が多すぎると、文章が重くなることがあります。前後の関係が自然に伝わる場合は、思い切って削ると読みやすくなります。
Q. 上司に「文章が幼い」と言われました。何から直せばいいですか?
A. まずは同じ接続詞の繰り返しを確認しましょう。そのうえで、「しかし」を使っている文を、対比・条件・補足・不要に分類して直すと、文章全体が落ち着いた印象になります。
まとめ|「しかし」は言い換えるより、前後の関係を整えよう
「しかし」が続く文章は、単語を置き換えるだけでは読みやすくなりません。
大切なのは、前後の文がどのような関係にあるのかを見極めることです。
- 「しかし」は逆接を示す便利な接続詞
- 連続すると、否定的・言い訳がましい印象になることがある
- 対比なら「一方で」「その一方で」が使いやすい
- 条件や例外なら「ただし」が自然
- 補足なら「なお」「また」が向いている
- 前後の関係が明らかな場合は、接続詞を削ると読みやすくなる
- 報告書やメールでは、読み手が迷わない流れを意識する
文章がうまい人は、難しい言葉をたくさん知っている人ではありません。
読み手にとって、情報の関係がわかりやすい順番で書ける人です。
次に報告書やメールを見直すときは、「しかし」を探して、前後の関係を一つずつ確認してみてください。
それだけでも、文章はぐっと落ち着き、ビジネス文書らしい読みやすさに近づきます。