
この記事の著者:伊藤 晃 (Ito Akira)
ビジネスマナー講師 / 元葬儀社スタッフ
葬儀社での勤務経験(5年)を活かし、現在は企業研修で年間1,000人以上の新入・若手社員に「現場で恥をかかないマナー」を指導。「マナーは形式ではなく心」を信条とし、教科書的な正解よりも、現場で本当に役立つ「及第点の振る舞い」を伝えています。
仕事中に突然入った、取引先関係者の訃報。「今夜のお通夜に参列しなければならない」となったとき、あなたの頭をよぎったのはこんな不安ではありませんか?
「喪服なんて会社に置いてないし、家に帰る時間もない…」
「香典っていくら包めばいいの? 上司に聞いてもいいのかな?」
急なことで焦る気持ち、痛いほどわかります。でも、安心してください。
「喪服がないから行けない」なんて思う必要は全くありません。
元葬儀社スタッフとして断言しますが、お通夜は本来「取り急ぎ駆けつける」場所。
完璧な喪服よりも、あなたの「すぐに来ました」という気持ちの方が、遺族にとっては嬉しいものです。
この記事では、手持ちのスーツとコンビニで揃うアイテムだけで、社会人として恥をかかない「及第点の参列術」を伝授します。
これを読めば、自信を持って会場へ向かえますよ。
「喪服がない!」と焦らないで。お通夜はダークスーツが正解な理由
「お通夜=喪服」と思い込んでいませんか?
実はこれ、大きな誤解です。
本来、お通夜とは「訃報を聞いてすぐに駆けつける」もの。
そこに完璧な喪服で現れると、かえって「死を予期して準備していたのか」と誤解を与えかねない、という考え方さえあります。
ですから、お通夜においては、平服(ダークスーツ)は喪服の代用として正式に認められているのです。
「喪服がない」と焦る必要はありません。
むしろ、仕事帰りのスーツ姿であること自体が、「急いで駆けつけた」という誠意の証になります。
ただし、どんなスーツでも良いわけではありません。社会人として失礼にならない「OKライン」と「NGライン」を確認しておきましょう。
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【会社関係】香典は5,000円が相場。でも「独断」は絶対NG!
次に悩むのが「香典」です。
20代のあなたが取引先関係のお通夜に参列する場合、香典の相場は「5,000円」が基本です。
しかし、ここで最も注意すべきなのは金額ではありません。
「自分一人で勝手に判断して包むこと」です。
会社関係の場合、香典は上司や同僚と「連名」にするケースや、会社として「供花」を出す代わりに香典を辞退するケースなど、独自のルールが存在することがあります。
もしあなたが良かれと思って5,000円を包んで持参し、後で「部署でまとめて1万円包んだのに、君だけ別に出したのか?」となっては、抜け駆けしたようで気まずい思いをすることになります。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 香典を用意する前に、必ず直属の上司や先輩に「香典はどうしますか?」と確認してください。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、会社としての対応と個人の対応が食い違うトラブルが頻発するからです。「連名にするから3,000円でいいよ」と言われるかもしれませんし、「今回は個人で出して」と言われるかもしれません。この確認フローを踏むことが、社内での信頼を守るためにも不可欠です。
香典袋の書き方についても触れておきましょう。本来は「悲しみで墨が薄まった」という意味の薄墨を使うのがマナーですが、急な場合は黒のサインペンや筆ペンでも許容範囲です(ボールペンはNG)。表書きは「御霊前」を選べば、ほとんどの宗派に対応できます。
コンビニで揃う「急な参列セット」。これだけあれば恥はかかない
「黒いネクタイも数珠も持ってない…」
そんな時、頼りになるのがコンビニです。最近のコンビニは冠婚葬祭グッズが充実しており、急な参列に必要なアイテムはほぼ全て揃います。
今すぐコンビニに駆け込んで、以下の「三種の神器」を調達しましょう。
- 黒ネクタイ
多くのコンビニで、ワイシャツや下着のコーナーに置いてあります。光沢のない無地のものを選びましょう。 - 香典袋(御霊前)
文具コーナーにあります。水引が印刷された簡易的なもので構いません。中に封筒が入っているタイプが便利です。筆ペンも合わせて購入しましょう。 - 数珠
店舗によっては取り扱いがない場合もありますが、大型店や駅前の店舗では置いていることが多いです。もし見つからなければ、100円ショップも覗いてみてください。最悪、数珠がなくても焼香はできますが、持っていると「ちゃんとしている感」が出ます。
また、香典を包む「袱紗(ふくさ)」がない場合は、地味な色(紫や紺、グレーなど)のハンカチで代用できます。
香典袋をむき出しでポケットから出すのはマナー違反ですので、必ずハンカチに包んで持参しましょう。
受付〜焼香〜退席。現場でドギマギしないための「振る舞い」シミュレーション
準備が整ったら、いざ会場へ。
現場で挙動不審にならないよう、一連の流れをシミュレーションしておきましょう。
1. 受付での振る舞い
受付に着いたら、まずは「この度はご愁傷様です」と小さく一礼します。
ここで重要なのが名刺です。
会社を代表して参列する場合、芳名帳に記帳する代わりに名刺を出すのが一般的です。
- 名刺の出し方: 名刺の右下(縦書きなら左下)を小さく折ります。これは「急いで駆けつけた」という意味や、「本人が参列した証(代理ではない)」という意味があります。
- 渡し方: 香典袋に添えて出すか、受付にある名刺受けに入れます。
2. 焼香の手順
最も緊張するのが焼香ですが、宗派によって作法(回数など)が異なります。
もし前の人のやり方を見てわからなければ、「基本の1回」で大丈夫です。
- 遺影に一礼。
- 親指、人差し指、中指で抹香(まっこう)をつまむ。
- 額の高さまで持ち上げる(「いただく」と言います。※浄土真宗などいただかない宗派もありますが、いただいても失礼にはなりません)。
- 香炉にパラパラと落とす。
- 合掌し、遺影に一礼して下がる。
回数や作法を間違えても、誰も咎めたりしません。大切なのは、故人を悼む心です。
3. 通夜振る舞い
焼香の後、別室で食事やお酒を勧められることがあります(通夜振る舞い)。
「忙しいから」と断るのはマナー違反。
一口でも箸をつけることが供養になります。
ただし、長居は無用です。
お茶を一口飲むだけでも構いませんので、少しだけ立ち寄ってから退席しましょう。

大切なのは「形式」より「駆けつける気持ち」
ここまで、急な参列のためのマナーをお伝えしてきました。
服装はダークスーツでOK、香典は上司に確認、持ち物はコンビニで揃う。
これさえ押さえておけば、社会人として恥をかくことはありません。
最後に一つだけ。
ご遺族にとって一番嬉しいのは、立派な喪服や高額な香典ではありません。
忙しい仕事の合間を縫って、あなたが息を切らして駆けつけてくれた、その事実です。
「形式」にとらわれて不安になる必要はありません。
あなたの「すぐに来ました」という気持ちこそが、何よりの供養であり、誠意なのです。
さあ、コンビニで黒ネクタイを買って、胸を張って行ってらっしゃい。
あなたの参列が、きっとご遺族の慰めになります。