その足の付け根の痛み、放置しないで。50代女性のための「股関節の正しい見つけ方」

【監修者プロフィール】

三田 幸三(日本整形外科学会認定 整形外科専門医)
股関節疾患(変形性股関節症など)の診療実績多数。特に中高年女性の保存療法(リハビリテーション)に注力し、「切らずに治す」治療を積極的に提案している。

「椅子から立ち上がるときに、足の付け根がズキッとする」

「歩き始めだけ痛いけれど、しばらく歩くと少し楽になる」

「お尻の横が痛い気がするけれど、これって股関節なの?」

50代前後になると、こうした股関節まわりの違和感に気づく方が増えてきます。

最初は「筋肉痛かな」「年齢のせいかな」と思って、つい様子を見てしまいますよね。

でも、足の付け根の奥に痛みがある場合、股関節からのサインが隠れていることがあります。

特に、立ち上がりや歩き始めの痛みは、変形性股関節症などの初期症状として見られることがあります。

もちろん、足の付け根の痛みがすべて股関節の病気というわけではありません。

腰、筋肉、腱、神経、婦人科系の不調など、別の原因で痛むこともあります。

だからこそ、まずは「股関節がどこにあるのか」を正しく知ることが大切です。

この記事では、50代女性にもわかりやすく、股関節の正しい場所、間違えやすい痛みの位置、受診の目安、日常生活でできる負担の減らし方をやさしく解説します。

この記事でわかること

  • 股関節の正しい位置
  • お尻の横の出っ張りと股関節の違い
  • 足の付け根が痛むときに考えられる原因
  • 50代女性に股関節の痛みが出やすい理由
  • 整形外科を受診したほうがよい症状
  • 自宅で気をつけたい生活の工夫
  • 痛いときに避けたい運動や自己流ケア
目次
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まず確認:股関節は体のどこにある?

股関節は、骨盤と太ももの骨をつないでいる大きな関節です。

場所は、足の付け根の奥にあります。

医学的には、足の付け根のことを鼠径部(そけいぶ)といいます。

イメージしやすく言うと、立ったときに下着のラインや、いわゆるV字のラインになる部分の奥です。

多くの方が「股関節はお尻の横の出っ張った骨あたり」と思いがちですが、そこは股関節そのものではありません。

お尻の横で触れる出っ張りは、大転子(だいてんし)と呼ばれる太ももの骨の一部です。

股関節はもっと体の奥深くにあるため、指で直接触ることはできません。

股関節と大転子の違い

場所特徴痛みの出方の例
股関節足の付け根、鼠径部の奥にある立ち上がり、歩き始め、脚を開く動きで痛むことがある
大転子お尻の横、太ももの外側に触れる骨の出っ張り横向きで寝たとき、押したとき、階段で痛むことがある

足の付け根の奥が痛いのか、お尻の横が痛いのかで、考えられる原因が変わることがあります。

ただし、自分だけで判断するのは難しいため、痛みが続く場合は整形外科で相談しましょう。

1分でできる股関節の位置の探し方

股関節は直接触れませんが、「このあたりにある」と確認することはできます。

痛みが強いときは無理をせず、痛みのない範囲で行ってください。

確認方法

  1. 椅子に浅く座る、または仰向けになります。
  2. 足の付け根のV字ラインの中央あたりに、指先を軽く当てます。
  3. そのまま、片脚を少しだけ持ち上げます。
  4. 次に、膝を軽く外へ開いたり、内側へ戻したりします。
  5. 指の奥で動くような感覚がある場所が、股関節のある位置の目安です。

強く押す必要はありません。

股関節は体の奥にあるため、表面からグリグリ押して確認しようとすると、かえって痛みが出ることがあります。

「足の付け根の奥にあるんだな」と場所をイメージできれば十分です。

注意

痛みが強いとき、しびれがあるとき、転倒後に痛みが出たときは、自己チェックをせず早めに医療機関を受診してください。

股関節の正しい位置と受診目安の図解

足の付け根が痛いときに考えられる原因

足の付け根が痛む原因はひとつではありません。

股関節そのものが原因のこともあれば、腰や筋肉、腱、神経、内臓系の不調が関係することもあります。

ここでは、よく見られる原因をわかりやすく紹介します。

1. 変形性股関節症

50代以降の女性で注意したい代表的な原因のひとつが、変形性股関節症です。

股関節の軟骨がすり減ったり、関節に変化が起きたりすることで、痛みや動かしにくさが出ます。

初期には、立ち上がりや歩き始めに足の付け根が痛むことがあります。

進行すると、歩く距離が短くなったり、靴下を履きにくくなったり、爪切りがつらくなったりすることがあります。

2. 股関節まわりの筋肉や腱の痛み

股関節の周りには、たくさんの筋肉や腱があります。

運動、階段の上り下り、長時間歩いた後などに、筋肉や腱に負担がかかって痛みが出ることがあります。

この場合、股関節の奥というより、太ももの前側、内側、お尻の横などが痛むこともあります。

3. 大転子周辺の痛み

お尻の横の骨の出っ張り、大転子の周辺が痛むこともあります。

横向きで寝たときに痛い、押すと痛い、階段で外側が痛いという場合は、股関節の中ではなく、外側の組織が関係していることもあります。

ただし、股関節の病気をかばって歩き方が変わり、大転子まわりに痛みが出ることもあります。

4. 腰からくる痛み

腰の神経が関係して、足の付け根や太ももに痛みが出ることもあります。

腰痛、しびれ、足に力が入りにくい感じがある場合は、腰の病気も考える必要があります。

5. その他の原因

まれに、婦人科系、泌尿器系、消化器系の不調が足の付け根の痛みとして感じられることもあります。

発熱、強い腹痛、吐き気、排尿時の痛み、不正出血などを伴う場合は、整形外科以外の診療科が必要になることもあります。

50代女性に股関節の痛みが出やすい理由

50代前後になると、股関節まわりの痛みを感じる女性が増えることがあります。

その背景には、いくつかの要因が重なっています。

女性に多い股関節の形の特徴

日本では、変形性股関節症の原因として、股関節の骨の形が関係しているケースが多いとされています。

たとえば、骨盤側の屋根の部分が浅い状態を、臼蓋形成不全または寛骨臼形成不全と呼びます。

この状態があると、股関節の一部に負担がかかりやすく、長い年月の中で痛みにつながることがあります。

もちろん、臼蓋形成不全がある人全員が痛くなるわけではありません。

また、痛みの原因が必ず臼蓋形成不全というわけでもありません。

正確な状態は、レントゲンなどの検査で確認する必要があります。

筋力低下や体重増加の影響

股関節は、歩く、立つ、階段を上るなど、日常生活でいつも体重を支えています。

股関節まわりの筋力が落ちると、関節への負担が増えやすくなります。

また、体重が増えると、歩くたびに股関節へかかる負担も大きくなります。

だからといって、急に激しい運動を始める必要はありません。

痛みがある場合は、医師や理学療法士に相談しながら、無理のない運動を選ぶことが大切です。

更年期による体の変化

50代前後は、更年期に伴って体の変化を感じやすい時期です。

疲れやすさ、筋力低下、体重の変化、睡眠の質の低下などが重なると、関節まわりの不調を感じやすくなることがあります。

股関節の痛みを「年齢のせい」と決めつけず、体からのサインとして見てあげましょう。

変形性股関節症かも?よくある初期サイン

変形性股関節症では、初期に次のような症状が出ることがあります。

  • 椅子から立ち上がると足の付け根が痛い
  • 歩き始めにズキッとする
  • しばらく歩くと少し楽になることがある
  • 階段の上り下りがつらい
  • 靴下を履く動作がしにくい
  • 足の爪を切りにくい
  • 和式トイレや正座がつらい
  • 長く歩くと足の付け根が重だるい

こうした症状が続く場合は、早めに整形外科で相談しましょう。

早い段階で状態を確認できれば、生活の工夫や運動療法などで痛みを管理しやすくなることがあります。

すぐ受診したほうがよい症状

足の付け根の痛みの中には、早めの受診が必要なものもあります。

次のような場合は、我慢せず医療機関に相談してください。

早めに受診したいサイン

  • 転倒やけがの後から強い痛みがある
  • 痛くて体重をかけられない
  • 安静にしていても痛い
  • 夜、痛みで眠れない
  • 足にしびれや力の入りにくさがある
  • 発熱、腫れ、赤みがある
  • 痛みが数日〜1週間以上続いている
  • 歩き方が明らかに変わってきた

「そのうち治るかも」と思っているうちに、痛みをかばって腰や膝まで痛くなることもあります。

不安なときは、早めに確認することが安心につながります。

病院ではどんな検査をするの?

整形外科を受診すると、まず痛みの場所、いつから痛いか、どんな動きで痛むかを確認します。

そのうえで、股関節の動き、歩き方、脚の長さ、押したときの痛みなどを診察します。

必要に応じて、レントゲン検査を行うことがあります。

レントゲンでは、股関節のすき間、骨の形、変形の程度などを確認します。

症状や状態によっては、MRIや血液検査などが検討されることもあります。

受診時に伝えるとよいこと

  • 痛む場所
  • いつから痛いか
  • どんな動きで痛いか
  • 歩ける距離
  • 夜間痛があるか
  • しびれがあるか
  • 過去のけがや股関節の指摘
  • 日常生活で困っていること

「靴下が履きにくい」「階段がつらい」など、生活の困りごとも大切な情報です。

遠慮せずに伝えましょう。

治療は必ず手術?初期は保存療法が中心になることも

股関節の痛みがあると、「すぐ手術と言われたらどうしよう」と不安になりますよね。

でも、変形性股関節症などの股関節の病気でも、初期からすぐ手術になるとは限りません。

症状の程度や画像検査の結果、生活への影響を見ながら、まずは保存療法が選ばれることがあります。

保存療法とは、手術をしない治療や生活管理のことです。

保存療法の例

  • 股関節に負担をかけにくい生活の工夫
  • 体重管理
  • 杖の使用
  • 痛み止めや湿布などの薬物療法
  • 理学療法士によるリハビリ
  • 股関節周囲の筋力トレーニング
  • 水中歩行など負担の少ない運動

ただし、保存療法でよくなるか、手術を検討したほうがよいかは人によって違います。

自己判断で運動を増やしたり、痛みを我慢して歩き続けたりするのは避けましょう。

医師と相談しながら、自分に合った治療方針を決めることが大切です。

日常生活で股関節の負担を減らすコツ

股関節の痛みがあるときは、日常生活の小さな工夫が役立つことがあります。

無理なくできることから始めてみましょう。

1. 長時間歩きすぎない

痛みを我慢して長く歩くと、股関節への負担が増えることがあります。

買い物や外出では、途中で休憩を入れましょう。

痛みがある日は、無理に歩数を増やさないことも大切です。

2. 階段よりエレベーターを使う

階段は股関節に負担がかかりやすい動作です。

痛みがあるときは、エレベーターやエスカレーターを使うことをためらわないでください。

「楽をしている」のではなく、関節を守る工夫です。

3. 和式より洋式の生活へ

正座、しゃがみ込み、和式トイレは股関節に負担がかかりやすい姿勢です。

痛みがある方は、椅子生活や洋式トイレを選ぶと負担を減らしやすくなります。

4. 杖を上手に使う

杖に抵抗がある方も多いですが、股関節の痛みがあるときは、杖が負担を減らす助けになります。

一般的には、痛い脚と反対側の手で杖を持つことが多いです。

ただし、体の状態によって合う使い方は変わるため、医師や理学療法士に確認すると安心です。

5. 体重管理を意識する

股関節は体重を支える関節です。

急なダイエットではなく、食事の見直しや無理のない運動で、少しずつ体への負担を減らしましょう。

痛みがあるときは、歩く運動よりも水中歩行や自転車こぎなど、負担の少ない運動が向くことがあります。

痛いときに避けたい自己流ケア

股関節の痛みがあると、「少し動かせば治るかな」と思ってストレッチやウォーキングを頑張りたくなるかもしれません。

でも、痛みを我慢して行う運動は逆効果になることがあります。

避けたいこと

  • 痛みを我慢して長距離ウォーキングをする
  • 足を無理に開くストレッチをする
  • 動画を見ながら自己流で激しい筋トレをする
  • 痛い場所を強く押し続ける
  • 「年齢のせい」と決めつけて放置する
  • 痛み止めだけで長期間ごまかす

運動は大切ですが、股関節の状態に合っていることが前提です。

痛みが続く場合は、先に整形外科で状態を確認し、必要に応じてリハビリ指導を受けましょう。

温める?冷やす?痛みがあるときの考え方

股関節まわりの痛みでは、温めたほうが楽になる方もいれば、冷やしたほうがよい場合もあります。

基本的には、慢性的なこわばりや筋肉の張りには、温めることで楽になることがあります。

お風呂で体を温める、冷えを避ける、軽く血流をよくするなどです。

一方で、急に強い痛みが出た、熱っぽい、腫れている、けがをした直後という場合は、炎症やけがの可能性もあります。

その場合は無理に温めず、安静にして早めに受診しましょう。

迷ったら自己判断しすぎない

温めても冷やしても痛みが強い、歩けない、夜も痛いという場合は、早めに医療機関で相談してください。

湿布はどこに貼ればいい?

股関節は体の奥にあるため、湿布を貼ったからといって関節そのものに直接届くわけではありません。

ただ、痛みをかばって周囲の筋肉が張っている場合、足の付け根、太ももの前側、お尻の横など、痛みを感じる場所に貼ることで楽になることがあります。

湿布を使う場合は、次の点に注意しましょう。

  • かぶれやすい方は短時間から試す
  • 同じ場所に長時間貼り続けない
  • 入浴前後や日光に当たる部位は注意する
  • 痛みが続く場合は湿布だけで様子を見すぎない

湿布で一時的に楽になっても、原因が解決しているとは限りません。

痛みを繰り返す場合は、整形外科で確認しましょう。

よくある質問

Q. 股関節はお尻の横にあるのですか?

A. 股関節は足の付け根、鼠径部の奥にあります。お尻の横で触れる骨の出っ張りは大転子と呼ばれる部分で、股関節そのものではありません。

Q. 立ち上がるときだけ痛い場合も受診したほうがいいですか?

A. 痛みが一時的で軽く、すぐ改善するなら様子を見ることもあります。ただし、何度も繰り返す、1週間以上続く、歩きにくい、靴下が履きにくいなどがあれば整形外科で相談しましょう。

Q. 股関節の痛みは必ず変形性股関節症ですか?

A. いいえ。筋肉や腱の痛み、腰からくる痛み、大転子周辺の痛み、その他の病気が関係することもあります。自己判断せず、必要に応じて検査を受けることが大切です。

Q. 痛くてもウォーキングを続けたほうがいいですか?

A. 痛みを我慢して歩くのはおすすめできません。股関節の状態によっては負担になることがあります。運動を続けたい場合は、医師や理学療法士に相談しましょう。

Q. 手術になるのが怖くて病院に行けません。

A. 受診したからといって、すぐ手術になるとは限りません。初期では生活の工夫、薬、リハビリなどの保存療法が検討されることもあります。状態を知ることが、将来の選択肢を守る第一歩になります。

Q. 整体やマッサージに行ってもいいですか?

A. 強い痛みや歩きにくさがある場合は、先に整形外科で原因を確認するほうが安心です。骨や関節の状態がわからないまま強い施術を受けると、痛みが悪化することがあります。

Q. 股関節に良いストレッチはありますか?

A. 股関節の状態によって合う運動は違います。自己流で無理に開脚したり、痛い方向へ伸ばしたりするのは避けましょう。整形外科や理学療法士に、自分に合う運動を教えてもらうのがおすすめです。

まとめ:足の付け根の痛みは、早めに場所を確認して相談を

股関節は、お尻の横ではなく、足の付け根の奥にあります。

お尻の横で触れる骨の出っ張りは大転子で、股関節そのものとは位置が違います。

足の付け根の奥が痛む場合、股関節からのサインのことがあります。

特に、立ち上がりや歩き始めに痛む、靴下が履きにくい、階段がつらいなどの症状が続くときは、整形外科で相談しましょう。

今回のポイントをまとめます。

  • 股関節は鼠径部、足の付け根の奥にある
  • お尻の横の出っ張りは大転子で、股関節とは別の場所
  • 立ち上がりや歩き始めの痛みは、変形性股関節症の初期症状のことがある
  • 足の付け根の痛みには、腰・筋肉・腱など別の原因もある
  • 痛みが続く場合は自己判断せず整形外科で相談する
  • 初期では保存療法が検討されることもある
  • 痛みを我慢したウォーキングや自己流ストレッチは避ける
  • 生活の工夫で股関節への負担を減らすことが大切

痛みがあると、不安になりますよね。

でも、原因を知り、今の状態に合った対策を始めることで、安心につながります。

「年齢のせい」とひとりで抱え込まず、気になる痛みが続くときは、早めに整形外科で相談してみてください。

これからも自分の足で気持ちよく歩くために、今日の小さな気づきを大切にしていきましょう。


参考情報

  • 日本整形外科学会「変形性股関節症」
  • 日本整形外科学会「変形性股関節症」PDF資料
  • 日本理学療法士協会「変形性股関節症」関連資料
  • MSDマニュアル「変形性関節症」
  • MSDマニュアルプロフェッショナル版「股関節の評価」
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