【著者情報】
山野 健太/日本顎咬合学会認定医
臨床経験15年以上、年間数百件のナイトガード作成・調整を行い、歯根破折から多くの患者の歯を救ってきた実績に基づき、専門的な知見を分かりやすくお届けします。
朝起きると、あごがだるい。
家族から「夜中に歯ぎしりしていたよ」と言われた。
奥歯がすり減っている気がする。
そんな不安を感じて、歯ぎしり用のマウスピースを探していませんか?
ドラッグストアやネット通販を見ると、手軽に買える市販マウスピースがたくさんあります。
「まずは安い市販品で試してみようかな」と思う方も多いですよね。
ただし、歯ぎしりや食いしばりが気になる場合は、自己判断で市販品を長く使い続けるより、まず歯科医院で相談するのがおすすめです。
歯ぎしり用のマウスピースは、正式にはナイトガードやスプリントと呼ばれることがあります。
歯科医院で作るナイトガードは、歯型を取り、一人ひとりの噛み合わせに合わせて作ります。
保険適用で作れる場合もあり、3割負担なら5,000円前後が目安と案内している歯科医院もあります。
この記事では、市販マウスピースと歯科医院のナイトガードの違い、ソフトタイプとハードタイプの特徴、費用、通院回数、受診したほうがよいサインまで、初心者にもわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 歯ぎしり用マウスピースの役割
- 市販品と歯科医院製ナイトガードの違い
- ソフトタイプとハードタイプの特徴
- 歯科医院で作る費用の目安
- 保険適用になるケース
- 完成までの通院回数
- 受診したほうがよい症状
- ナイトガードのお手入れ方法
歯ぎしり・食いしばりとは?
歯ぎしりや食いしばりは、専門的にはブラキシズムと呼ばれることがあります。
寝ている間に歯をギリギリこすり合わせたり、無意識に強く噛みしめたりする状態です。
本人は気づきにくく、家族から指摘されて初めて気づくこともあります。
歯ぎしりは、音が出るものだけではありません。
音がなくても、強く噛みしめている場合があります。
歯ぎしり・食いしばりで起こりやすいサイン
- 朝起きると顎がだるい
- こめかみや頬の筋肉が疲れている
- 歯がすり減っている
- 歯にヒビが入る
- 詰め物や被せ物が取れやすい
- 奥歯が痛い
- 冷たいものがしみる
- 口が開きにくい
- 顎を動かすと音がする
- 家族に歯ぎしり音を指摘される
大阪大学歯学部附属病院の相談記事でも、睡眠中の歯ぎしりや食いしばりでは、起きているときと違って力の制御がされにくく、歯根破折の原因になることがあると説明されています。
ナイトガードの役割は「歯ぎしりを止める」ことではない
ここで大切なのは、ナイトガードを入れれば歯ぎしりそのものが完全に止まる、というわけではないことです。
ナイトガードの主な目的は、睡眠中に歯や顎にかかる力のダメージをやわらげることです。
大阪大学歯学部附属病院の相談記事でも、歯ぎしりの根本的な治療法は見つかっておらず、対症療法としてマウスピースを使うと説明されています。
つまり、ナイトガードは歯ぎしりを完全に消す道具ではなく、大切な歯を守るための保護具と考えると分かりやすいです。

市販マウスピースと歯科医院製ナイトガードの違い
市販マウスピースと歯科医院で作るナイトガードは、見た目が似ていても大きな違いがあります。
いちばん大きな違いは、歯型と噛み合わせに合っているかどうかです。
| 比較項目 | 市販マウスピース | 歯科医院製ナイトガード |
|---|---|---|
| 作り方 | 自分で温めて成形するものが多い | 歯科医院で型取りして作る |
| フィット感 | 合う人もいるが、ずれやすい場合がある | 歯型に合わせて作るため合いやすい |
| 噛み合わせ調整 | 基本的に自己判断 | 歯科医師が確認・調整する |
| 費用 | 比較的安い | 保険適用なら3割負担で5,000円前後が目安 |
| 向いている使い方 | 一時的な応急確認程度 | 継続的な歯ぎしり・食いしばり対策 |
市販品がすべて悪いわけではありません。
しかし、合わないものを使うと、噛み合わせが不安定になったり、一部の歯だけに力がかかったりすることがあります。
痛みや違和感があるのに使い続けるのは避けましょう。
市販マウスピースで注意したいこと
市販マウスピースは、手軽に買えるのがメリットです。
ただし、歯ぎしりが強い方や、顎に痛みがある方には合わないことがあります。
市販品で起こりやすい困りごと
- 口の中でずれる
- 厚みがあって眠りにくい
- 噛み合わせがしっくりこない
- 一部の歯だけ強く当たる
- すぐに穴が開く
- 朝起きると顎が余計に疲れる
- 歯ぐきに当たって痛い
特に、自己成形タイプは見た目では合っているように見えても、噛み合わせまでは細かく調整できません。
短期間なら問題なく使える方もいますが、長く使うなら歯科医院で相談したほうが安心です。
ソフトタイプとハードタイプの違い
ナイトガードには、大きく分けてソフトタイプとハードタイプがあります。
元記事では「ハードタイプが唯一の正解」としていましたが、実際には症状や歯ぎしりの強さ、歯科医師の判断によって使い分けられます。
| タイプ | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| ソフトタイプ | 柔らかく、装着時の違和感が少ないことがある | 歯ぎしりが強いと穴が開きやすいことがある |
| ハードタイプ | 硬い樹脂で作られ、すり減りや破損に強いことがある | 慣れるまで違和感が出ることがある |
歯科医院によっては、まずソフトタイプを使い、歯ぎしりの強さや穴の開き方を見て、ハードタイプを検討する場合もあります。
大切なのは、自分で素材を決めることではなく、歯科医師に歯や顎の状態を見てもらうことです。
ハードタイプがすすめられやすいケース
ハードタイプは、歯ぎしりや食いしばりの力が強い方にすすめられることがあります。
硬い素材のため、ソフトタイプより破れにくく、噛み合わせの調整をしやすい場合があります。
ハードタイプが検討されやすいケース
- 歯ぎしりの力が強い
- ソフトタイプに穴が開きやすい
- 詰め物や被せ物が壊れやすい
- 歯のすり減りが大きい
- 噛み合わせの確認や調整が必要
ただし、ハードタイプがすべての人に最適とは限りません。
違和感が強い方や、歯科医師が別のタイプを適すると判断する場合もあります。
「硬いから怖い」「柔らかいから安心」と決めつけず、診察を受けて相談しましょう。
歯科医院でナイトガードを作る費用
歯ぎしりや食いしばり、顎関節症などの診断があり、治療目的でナイトガードを作る場合、保険適用になることがあります。
保険適用の場合、3割負担で5,000円前後と案内している歯科医院が多く見られます。
ただし、費用は診察内容、検査、地域、医療機関、保険点数の改定などによって変わります。
初診料、検査料、型取り、調整料などが加わることもあります。
費用の目安
| 種類 | 費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 保険適用のナイトガード | 3割負担で5,000円前後 | 診断や治療目的がある場合 |
| 自費のナイトガード | 数万円程度になることもある | 素材や設計、医院の方針により異なる |
| 市販マウスピース | 1,000円〜数千円程度 | 自分で調整。噛み合わせの診断はない |
正確な費用は、受診予定の歯科医院に確認してください。
予約時に「歯ぎしり用のナイトガードを保険で作れるか相談したい」と伝えるとスムーズです。
ナイトガード完成までの流れ
歯科医院でナイトガードを作る場合、一般的には2回程度の通院で完成することが多いです。
ただし、虫歯や歯周病、詰め物の不具合がある場合は、先に治療が必要になることもあります。
一般的な流れ
- 診察・相談
- 歯や顎、噛み合わせの確認
- 必要に応じてレントゲンや検査
- 歯型取り
- ナイトガード作製
- 完成後に装着確認
- 噛み合わせや当たり具合を調整
- 使用後の定期チェック
完成までの期間は、歯科医院や技工所の状況によって変わりますが、1週間前後を目安に案内されることが多いです。
ナイトガードを使うときの注意点
ナイトガードは、作って終わりではありません。
使いながら、違和感や痛みがないか確認し、必要に応じて調整してもらうことが大切です。
使い始めに起こりやすいこと
- 口の中に違和感がある
- 話しにくい
- 唾液が増える
- 寝つきにくい
- 朝、少し窮屈に感じる
多くの場合、数日から1週間ほどで慣れることがあります。
ただし、痛みが強い、歯ぐきに当たる、外れやすい、噛むと一部だけ強く当たる場合は、無理に使い続けず歯科医院で調整してもらいましょう。
ナイトガードのお手入れ方法
ナイトガードは毎晩使うものなので、清潔に保つことが大切です。
汚れたまま使うと、においや細菌の増殖につながることがあります。
基本のお手入れ
- 使用後は水で洗う
- やわらかい歯ブラシで軽くこする
- 熱湯で洗わない
- 乾燥させて専用ケースに入れる
- 定期的に洗浄剤を使う
- 歯磨き粉で強くこすりすぎない
熱湯を使うと、変形する可能性があります。
また、歯磨き粉には研磨剤が入っていることがあるため、傷がつく場合があります。
お手入れ方法は、作製した歯科医院の指示に従いましょう。
受診したほうがよいサイン
歯ぎしりや食いしばりは、自分では気づきにくいことがあります。
次のような症状がある場合は、早めに歯科医院で相談しましょう。
- 朝起きると顎がだるい
- 口が開きにくい
- 顎を動かすと音がする
- 歯がしみる
- 歯が欠けた
- 詰め物や被せ物がよく取れる
- 奥歯が痛い
- 歯がすり減っていると言われた
- 家族に歯ぎしり音を指摘された
- 市販マウスピースで痛みが出た
歯ぎしりは、放置すると歯だけでなく顎関節にも負担がかかることがあります。
痛みが強くなる前に相談すると、対策を立てやすくなります。
歯ぎしり対策はマウスピースだけではない
ナイトガードは歯を守るために役立ちますが、歯ぎしりの原因を完全に取り除くものではありません。
歯ぎしりには、睡眠、ストレス、飲酒、喫煙、服薬、生活習慣など、さまざまな要因が関係すると考えられています。
そのため、ナイトガードとあわせて、生活面も少し整えていくとよいでしょう。
今日からできるセルフケア
- 寝る前のスマホ時間を短くする
- 寝る前の飲酒を控えめにする
- カフェインを夕方以降に取りすぎない
- 日中に噛みしめていないか意識する
- 上下の歯を離す習慣をつける
- 頬やこめかみをやさしく温める
- ストレスをため込みすぎない
日中の食いしばりに気づいたら、「唇は閉じて、上下の歯は離す」を意識してみましょう。
小さな習慣でも、顎の負担を減らす助けになります。
よくある質問
Q. 市販マウスピースは使わないほうがいいですか?
A. 一時的に使える方もいますが、合わないものを長く使うのはおすすめできません。顎の痛み、歯の痛み、ずれ、違和感がある場合は使用を中止し、歯科医院で相談してください。
Q. 歯科医院のナイトガードは保険適用ですか?
A. 歯ぎしり、食いしばり、顎関節症などの診断があり、治療目的で作る場合は保険適用になることがあります。自費になるケースもあるため、受診する歯科医院に確認しましょう。
Q. 費用はいくらくらいですか?
A. 保険適用で3割負担の場合、5,000円前後と案内する歯科医院が多いです。ただし、初診料や検査、調整内容によって変わります。
Q. ソフトタイプとハードタイプはどちらがいいですか?
A. 症状や歯ぎしりの強さによって異なります。ソフトタイプは違和感が少ないことがありますが、強い歯ぎしりでは破れることがあります。ハードタイプは調整しやすく耐久性がある一方、慣れるまで違和感が出ることがあります。歯科医師と相談して決めましょう。
Q. ナイトガードを使えば歯ぎしりは治りますか?
A. ナイトガードは歯ぎしりを完全に止めるものではありません。歯や顎へのダメージを減らすための保護具です。
Q. 痛くて眠れない場合はどうすればいいですか?
A. 痛みがある場合は、合っていない可能性があります。無理に使い続けず、歯科医院で調整してもらいましょう。
Q. どのくらいで作れますか?
A. 一般的には、型取りから完成まで1週間前後、通院は2回程度が目安です。ただし、歯の治療が先に必要な場合は時間がかかることがあります。
Q. ナイトガードはどのくらい持ちますか?
A. 歯ぎしりの強さや素材、お手入れによって変わります。すり減り、穴、ひび、変形があれば歯科医院で確認してもらいましょう。
まとめ:歯ぎしりが気になるなら、市販品で迷う前に歯科医院へ相談しよう
歯ぎしりや食いしばりは、自分では気づきにくいものです。
しかし、睡眠中に強い力がかかることで、歯のすり減り、歯のヒビ、詰め物の破損、顎のだるさ、歯根破折などにつながることがあります。
市販マウスピースは手軽ですが、噛み合わせに合っていないものを長く使うと、違和感や痛みが出ることがあります。
歯科医院で作るナイトガードは、歯型を取り、歯科医師が噛み合わせを確認しながら作るため、継続的な対策として安心しやすい方法です。
今回のポイントをまとめます。
- 歯ぎしり・食いしばりは歯や顎に負担をかける
- ナイトガードは歯ぎしりを止めるものではなく、歯を守るための保護具
- 市販品は手軽だが、合わないものを長く使うのは注意が必要
- 歯科医院製ナイトガードは歯型に合わせて作る
- ソフトタイプとハードタイプは症状により使い分ける
- 保険適用なら3割負担で5,000円前後が目安
- 完成までの通院は2回程度が多い
- 痛みや違和感があれば調整が必要
- 朝の顎のだるさや歯の痛みがある場合は早めに相談する
「とりあえず市販品で済ませようかな」と思ったときこそ、一度歯科医院で相談してみてください。
あなたの歯や顎の状態に合った方法を知ることが、大切な歯を長く守る第一歩になります。
参考情報
- 大阪大学歯学部附属病院「夜中に歯ぎしりをしているようで…予防法はありませんか?」
- 日本歯科医師会「テーマパーク8020 顎関節症」
- 社会保険診療報酬支払基金「口腔内装置」
- 歯科医院各院のナイトガード費用・保険適用に関する案内