「恐縮です」より一歩大人の配慮を。コピペで使える、状況別『憚(はばか)られる』メール術

藤原慎

この記事の著者:藤原 慎

ビジネスコミュニケーション・コンサルタント / 元大手商社営業部長

商社時代に数々の難交渉をまとめ上げ、「言葉一つで空気を変える」と評された。現在は若手社員向けの研修で、実践的なメール術を指導。

「言いにくいことをメールで伝える時、送信ボタンを押す指が止まってしまうこと、ありますよね。」

取引先の部長に催促のメールを送らなければならない。

でも、「気が引ける」と書くのは稚拙だし、「恐縮です」ばかり使っていると、なんだか頼りなく見えてしまう…。

そんな時こそ、「憚られる(はばかられる)」の出番です。

この言葉には、相手への敬意と、こちらの申し訳なさを同時に伝える不思議な力があります。

私が商社時代、何度も窮地を救われたこの言葉の「効力」と「正しい使い方」を、現場の視点でお伝えします。

辞書的な意味だけでなく、「今すぐそのまま送れるメール文面」も用意しました。

この記事を読み終える頃には、あなたは自信を持って送信ボタンを押せるようになっているはずです。


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「憚られる」の意味とは?「恐縮です」との決定的な違い

まず、「憚られる」という言葉の持つ力を正しく理解しましょう。

「憚られる」は、「遠慮される」「気が引ける」という意味の改まった表現です。

ビジネスシーンにおいては、相手への配慮を示す「クッション言葉」の代表格として機能します。

では、よく使われる「恐縮です」とは何が違うのでしょうか?

  • 恐縮です: 「すみません」「申し訳ない」という謝罪や萎縮のニュアンスが強い。
  • 憚られる: 「あなたの立場や状況を尊重して、一歩下がります」という奥ゆかしさと配慮のニュアンスが強い。

つまり、「恐縮です」が単に頭を下げている状態だとすれば、「憚られる」は相手を立てつつ、知的に振る舞っている状態と言えます。

目上の相手に対して言いにくいことを伝える際、「憚られる」を使うことで、「教養がある」「配慮ができる」という印象を与え、無理な要求も通りやすくなる効果があります。

これが、私がこの言葉を「大人の武器」と呼ぶ理由です。


【コピペOK】状況別「憚られる」を使ったメール文例集

それでは、実際に鈴木さんが直面しているシチュエーション別に、そのまま使えるメール文面をご紹介します。

コピーボタン付きテキストボックス風デザインで文例を表示

ケース1:催促(返信がない時)

相手が忙しいことは百も承知。

それでも連絡しなければならない時に、「憚られますが」を挟むことで、「あなたの忙しさは理解しています」というメッセージを暗に伝えます。

ケース2:依頼(無理なお願い)

通常なら断られても仕方がないようなお願いをする時、「申し上げるのは憚られますが」と前置きすることで、相手の心理的ハードルを下げ、検討のテーブルについてもらいやすくなります。

ケース3:お断り(誘いを断る)

「憚らせていただきます」は、「参加したい気持ちはあるが、状況がそれを許さない」というニュアンスを含みます。

ただし、少し硬い表現なので、親しい間柄なら「遠慮させていただきます」の方が自然な場合もあります。


「憚りながら」は別物!恥をかかないための誤用チェック

ここで一つ、絶対に注意してほしいことがあります。それは、「憚りながら(はばかりながら)」との混同です。

似ている言葉ですが、意味は全く異なります。

  • 憚られる: (受身)相手に配慮して、自分が遠慮する。
  • 憚りながら: (能動)僭越ながら、自分の意見を言う。

例えば、「憚りながら申し上げますと、その案には反対です」のように使います。

これを「憚られながら」と言ってしまうと誤用ですし、逆に相手への配慮を示したい場面で「憚りながら」を使うと、「偉そうに意見を言おうとしている」と誤解されかねません。

また、慇懃無礼(いんぎんぶれい)にも注意が必要です。

「憚られる」は丁寧な言葉ですが、1通のメールの中に何度も登場すると、「丁寧すぎて逆に嫌味っぽい」印象を与えてしまいます。

「クッション言葉は、1メールにつき1回まで」

このルールを鉄則として覚えておいてください。


相手との距離感で使い分ける!言い換え表現のバリエーション

ビジネスでは、相手との距離感に合わせて言葉を選ぶ柔軟性が求められます。

「憚られる」は万能ですが、相手によっては硬すぎることもあります。

以下の表を参考に、相手に合わせた最適なフレーズを選んでみてください。

📊 比較表
相手別推奨フレーズ比較表

相手との関係性推奨フレーズニュアンス・特徴
直属の上司・親しい先輩気が引けるのですが
心苦しいのですが
柔らかい表現。素直な感情を伝えることで、親近感を保ちつつ配慮を示す。
取引先・他部署の部長憚られますが
恐縮ですが
硬めの表現。一定の距離感を保ち、礼儀正しさを最優先する場合に最適。
役員・社長・謝罪時お詫びの言葉もございません
申し上げにくいことですが
最上級の硬さ。「憚られる」よりも直接的な表現の方が、誠意が伝わる場合がある。

直属の上司に「憚られますが」を使うと、「他人行儀だな」と思われるかもしれません。

その場合は「気が引けるのですが」と素直に伝えた方が、人間関係は円滑になります。

逆に、初めて連絡する取引先の役員には、「憚られますが」が持つ格調高さが信頼に繋がります。


言葉の選び方一つで、信頼は作れる

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

「憚られる」という言葉が、単なる古臭い日本語ではなく、現代のビジネスでも強力な武器になることがお分かりいただけたでしょうか。

メールは文字だけのコミュニケーションです。だからこそ、たった一語の選び方が、あなたの「人格」を作ります。
「恐縮です」の一辺倒から卒業し、相手を思いやる「憚られる」を使えるようになったあなたは、もう一歩大人のビジネスパーソンです。

さあ、このフレーズを使って、自信を持って送信ボタンを押してください。

あなたの配慮は、必ず相手に伝わります。


参考文献

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