突然の激しい動悸「PSVT」とは?命の危険・自分でできる対処法・治療法をやさしく解説

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この記事の監修者:循環器専門医・不整脈専門医
年間数百件の不整脈治療(カテーテルアブレーション等)を担当。若い世代の動悸の悩みにも精通しており、突然の激しい動悸に怯える患者の恐怖心に深く寄り添い、難解な医学用語を徹底的に噛み砕いて説明する「優しく頼れる主治医」として診療にあたっている。

仕事中、家事の途中、寝る前にリラックスしていたとき……。

何の前触れもなく、突然、心臓が「ドドドドッ」と異常な速さで打ち始めて、怖くなったことはありませんか?

「このまま心臓が止まるのでは?」
「救急車を呼んだほうがいい?」
「病院に行っても、発作が治まっていたらわからないのでは?」

突然の激しい動悸は、本当に不安になりますよね。初めて経験した方なら、パニックになってしまうのも無理はありません。

そのような「突然始まって、突然スッと治まる激しい動悸」は、原因のひとつとしてPSVT(発作性上室性頻拍)という不整脈が考えられます。

PSVTは、心臓の電気信号が一時的にぐるぐる回ってしまい、脈が急に速くなるタイプの不整脈です。多くの場合、心臓の筋肉そのものが壊れているわけではありません。

ただし、胸の痛み、息苦しさ、強いめまい、失神しそうな感じを伴う場合は、PSVT以外の病気が隠れていることもあります。自己判断で放置せず、必要なときはすぐに医療機関へ相談することが大切です。

この記事では、PSVTの特徴、自分でできる発作時の対処法、病院へ行く目安、Apple Watchなどの記録の活用法、カテーテルアブレーションという治療法まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • PSVTとはどんな不整脈なのか
  • 突然の激しい動悸が起きるしくみ
  • 自分でできる「迷走神経刺激法」の注意点
  • 救急受診が必要な危険サイン
  • Apple Watchなどの記録を受診時に活かす方法
  • 薬物治療とカテーテルアブレーションの違い
目次
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PSVTとは?突然始まり、突然終わる「速い動悸」

PSVTとは、発作性上室性頻拍のことです。

難しい言葉に聞こえますが、分けて考えると少しわかりやすくなります。

  • 発作性:突然起こる
  • 上室性:心臓の上の部屋、またはその周辺が関係する
  • 頻拍:脈がとても速くなる

つまりPSVTは、急に脈が速くなり、しばらくすると急に治まる不整脈です。

発作中は、心拍数が1分間に150〜250回ほどになることもあり、胸が激しくバクバクしたり、首や胸のあたりでドクドクと強く感じたりします。

発作は数分で止まることもあれば、数十分以上続くこともあります。人によっては、年に数回だけの方もいれば、何度も繰り返す方もいます。

「このまま死んでしまう?」PSVTは命に関わるの?

突然、心臓がものすごい速さで打ち始めると、「このまま死んでしまうのでは」と感じてしまいますよね。

まずお伝えしたいのは、PSVTの多くは、すぐに命に直結する不整脈ではないということです。

PSVTは、心臓の電気信号が一時的に「空回り」して、脈が速くなっている状態です。心臓の筋肉や弁が急に壊れてしまった、という意味ではありません。

ただし、だからといって「絶対に大丈夫」と自己判断してよいわけではありません。

次のような症状を伴う場合は、PSVT以外の危険な不整脈や心臓の病気が隠れていることもあります。

  • 胸の強い痛みや圧迫感がある
  • 息苦しさが強い
  • 冷や汗が出る
  • 意識が遠のく
  • 失神しそう、または失神した
  • 動悸が長く続いて止まらない

このような症状がある場合は、我慢せず、救急受診や救急相談を考えてください。

やさしくひとこと
「多くは命に直結しにくい」と「放置してよい」は別です。突然の強い動悸を経験したら、一度は循環器内科で相談しておくと安心です。

なぜ突然バクバクするの?PSVTのしくみ

心臓は、電気信号によって規則正しく動いています。

通常は、心臓の上のほうから出た電気が、決まった通り道を通って下へ流れ、心臓全体をリズムよく動かしています。

ところがPSVTでは、この電気の通り道のどこかで、電気信号がぐるぐる回るような状態になることがあります。

たとえるなら、普通は一本道を進むはずの電気信号が、何かの拍子に「輪っか状の道」に入り込み、同じところをぐるぐる回ってしまうようなイメージです。

その間、心臓は何度も何度も刺激されるため、急に脈が速くなります。

この「電気の空回り」が止まると、動悸もスッと治まります。

そのため、PSVTは「突然始まり、突然終わる」ことが多いのです。

PSVTのしくみと発作時の安全な対処法

PSVTの主な症状

PSVTでは、次のような症状が出ることがあります。

  • 突然の激しい動悸
  • 胸がバクバクする感じ
  • 脈がとても速くなる
  • 首や胸がドクドクする感じ
  • 息苦しさ
  • 胸の違和感
  • ふらつき
  • めまい
  • 脱力感
  • 不安感、パニック感

特に特徴的なのは、スイッチが入ったように突然始まり、スイッチが切れたように突然終わることです。

一方で、脈がバラバラに乱れる、胸の痛みが強い、意識が遠のくなどの場合は、ほかの不整脈や心臓病の可能性もあります。

PSVTとパニック発作は違うの?

突然の動悸があると、「これはパニック発作なのかな?」と迷う方もいます。

PSVTとパニック発作は、どちらも動悸や不安感を伴うことがあり、体感だけでは見分けにくい場合があります。

ただし、PSVTは心臓の電気信号による不整脈です。一方、パニック発作は強い不安や自律神経の反応が中心です。

PSVTでは、脈拍が非常に速く、規則正しく打つことが多く、突然始まり突然終わる傾向があります。

パニック発作では、動悸とともに過呼吸、手足のしびれ、強い恐怖感などが目立つこともあります。

ただし、自己判断は難しいため、繰り返す場合は心電図などで確認することが大切です。

発作が起きたらどうする?まずは安全な姿勢をとりましょう

突然の動悸が起きると、焦って立ち上がったり、歩き回ったりしたくなるかもしれません。

でも、めまいやふらつきがある状態で動くと、転倒する危険があります。

まずは次の順番で落ち着いて対応しましょう。

  1. その場で座る、または横になる
  2. 深呼吸をして、脈が速いか確認する
  3. 胸痛・息苦しさ・失神しそうな感じがないか確認する
  4. 症状が軽く、意識がはっきりしていれば、迷走神経刺激法を試す
  5. 止まらない、または危険サインがある場合は医療機関へ相談する

「自分で止めよう」と無理をするより、安全を確保することが一番大切です。

自分でできる対処法:迷走神経刺激法とは?

PSVTの発作では、状態が安定している場合に、迷走神経刺激法で発作が止まることがあります。

迷走神経とは、心臓の働きをゆるやかにする方向に関係する神経です。

この神経を刺激することで、電気の空回りが止まり、動悸が落ち着くことがあります。

ただし、迷走神経刺激法は、すべての動悸に効くわけではありません。

また、胸痛や強い息苦しさ、意識が遠のく感じがあるときに無理に行うのは危険です。

方法1:息こらえ・いきみ動作

一般的によく知られている方法が、息こらえやいきみ動作です。

  1. 座る、または横になります。
  2. 大きく息を吸います。
  3. トイレでいきむように、お腹に軽く力を入れます。
  4. 10秒ほど行い、その後ゆっくり力を抜きます。

無理に長く息を止める必要はありません。苦しくなるほど頑張らないでください。

方法2:冷たい刺激を使う

冷たい水で顔を洗う、冷たいタオルを顔に当てるなどで、迷走神経が刺激されることがあります。

ただし、氷水に長く顔をつける、息が苦しい状態で無理をする、といった行為は避けましょう。

やってはいけない自己対処

次のような方法は、自己判断で行わないでください。

  • 首を強く押す
  • 首の血管をマッサージする
  • 立ったまま強くいきむ
  • 苦しくなるまで息を止める
  • 何度も繰り返して無理に止めようとする

特に、首を押す方法は医療者が状況を見て行うものであり、自己判断では危険です。

安全のために
迷走神経刺激法は、意識がはっきりしていて、胸痛や強い息苦しさがないときに、座るか横になって行いましょう。少しでも不安が強い場合は、無理に自分で止めようとせず、医療機関へ相談してください。

すぐ受診・救急相談したほうがよい危険サイン

突然の動悸があっても、数分で自然に治まり、その後いつも通りに過ごせる場合もあります。

しかし、次の症状がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。

  • 動悸が20〜30分以上続く
  • 胸が痛い、締めつけられる感じがある
  • 息苦しさが強い
  • 冷や汗が出る
  • めまいやふらつきが強い
  • 失神しそう、または失神した
  • 顔色が悪い
  • 脈が速いだけでなく、バラバラに乱れている
  • 心臓病を指摘されたことがある
  • 妊娠中、または高齢で症状が強い

迷ったときは、「大げさかな」と我慢しすぎないことが大切です。

特に胸痛、息苦しさ、失神しそうな感じがあるときは、救急受診を考えてください。

発作が治まっても、一度は循環器内科へ

PSVTは、病院に着くころには発作が治まっていることがよくあります。

そのため、通常の心電図では異常が見つからないことも珍しくありません。

それでも、発作を繰り返している場合や、強い不安がある場合は、一度は循環器内科を受診することをおすすめします。

病院では、次のような検査が行われることがあります。

  • 12誘導心電図
  • ホルター心電図
  • イベント心電図
  • 血液検査
  • 心臓超音波検査
  • 必要に応じた専門的な不整脈検査

発作の頻度が少ない場合、短時間の検査だけでは見つからないこともあります。

そのため、発作時の記録がとても大切になります。

Apple Watchなどのスマートウォッチは役立つ?

Apple Watchなどのスマートウォッチは、発作時の心拍数や心電図の記録を残すうえで役立つことがあります。

特に、「発作が起きたときの記録」が残っていると、受診時に医師が判断するための参考になります。

ただし、スマートウォッチだけでPSVTを確定診断することはできません。

また、Apple Watchの心電図機能は主に心房細動の検出などを目的とした機能であり、すべての不整脈を正確に判定できるわけではありません。

大切なのは、スマートウォッチを「診断する道具」ではなく、「医師に相談するための記録を残す道具」として使うことです。

発作時に記録しておきたいこと

  • 発作が始まった時間
  • 発作が終わった時間
  • 心拍数
  • 規則正しい脈だったか、バラバラだったか
  • 胸痛や息苦しさがあったか
  • めまいや失神しそうな感じがあったか
  • 発作前にカフェイン、飲酒、寝不足、ストレスがあったか
  • スマートウォッチの心電図記録

記録は、メモアプリや紙のメモでも十分役立ちます。

PSVTの治療法:薬で抑える方法と、根治を目指す方法

PSVTの治療は、発作の頻度、症状の強さ、生活への支障、本人の希望によって変わります。

主な治療法は次の2つです。

  • 薬物治療
  • カテーテルアブレーション

薬物治療

薬物治療では、発作を起こしにくくする薬や、発作時に使う薬が検討されることがあります。

発作がまれで、短時間で自然に止まり、生活への支障が少ない場合は、経過観察になることもあります。

一方で、発作が頻繁に起こる、症状がつらい、救急受診を繰り返している場合は、薬による予防を考えることがあります。

ただし、薬は発作を抑える目的で使うもので、PSVTの電気回路そのものをなくす治療ではありません。

カテーテルアブレーション

カテーテルアブレーションは、不整脈の原因となる電気の通り道を治療する方法です。

足の付け根などの血管から細い管を入れ、心臓の中で不整脈の原因となる部分を調べ、必要な場所に熱を加えるなどして治療します。

PSVTでは、カテーテルアブレーションによって根治を目指せる場合があります。

「根治」と聞くと魅力的に感じる一方で、カテーテルを使う治療には合併症のリスクもゼロではありません。

そのため、発作の頻度や症状の強さ、年齢、持病、生活への影響をふまえて、専門医とよく相談して決めることが大切です。

カテーテルアブレーションはどんな人に向いている?

カテーテルアブレーションは、次のような方で検討されることがあります。

  • 発作を繰り返して生活に支障がある
  • 動悸が怖くて外出や仕事に不安がある
  • 薬を長く飲み続けることに抵抗がある
  • 薬で十分に発作を抑えられない
  • 薬の副作用が気になる
  • 妊娠や将来のライフプランを考えて治療方針を相談したい

一方で、発作がごくまれで、短時間で自然に止まり、症状が軽い場合は、必ずしもすぐ治療が必要とは限りません。

大切なのは、「怖いから我慢する」のではなく、選択肢を知ったうえで、自分の生活に合う方法を医師と一緒に選ぶことです。

発作を起こしやすいきっかけはある?

PSVTの根本には、心臓の電気の通り道の問題があります。

ただし、発作のきっかけとして、次のようなものが関係することがあります。

  • 睡眠不足
  • 強いストレス
  • 疲労
  • アルコール
  • カフェインのとりすぎ
  • 脱水
  • 急な運動
  • 体位の変化
  • 風邪や発熱

すべてを完全に避ける必要はありませんが、「発作が起きた日の共通点」をメモしておくと、自分の傾向が見えてきます。

日常生活で気をつけたいこと

PSVTが疑われる方は、日常生活で次のことを意識してみましょう。

  • 睡眠をしっかりとる
  • 疲れをためすぎない
  • カフェインをとりすぎない
  • アルコールを控えめにする
  • 水分をこまめにとる
  • 発作時の記録を残す
  • 不安を一人で抱え込まない

ただし、生活改善だけでPSVTそのものが必ず治るわけではありません。

発作を繰り返す場合は、循環器内科で相談しましょう。

PSVTと心房細動の違い

PSVTとよく比較される不整脈に、心房細動があります。

どちらも動悸を感じることがありますが、特徴が少し違います。

項目PSVT心房細動
脈の特徴速く、規則正しいことが多い速さが不規則でバラバラになりやすい
始まり方突然始まり、突然終わることが多い気づかないうちに始まることもある
年齢若い世代にもみられる年齢とともに増えやすい
注意点症状が強い場合や長く続く場合は受診脳梗塞予防などの管理が必要になることがある

脈が規則正しいか、バラバラかは見分けのヒントになりますが、正確には心電図で確認する必要があります。

よくある質問

Q. PSVTは自然に治ることがありますか?

A. 発作そのものは自然に止まることがあります。ただし、PSVTの原因となる電気回路が残っている場合、また発作を繰り返すことがあります。頻度が少なく症状が軽ければ経過観察になることもありますが、不安が強い場合は循環器内科で相談しましょう。

Q. 発作が数分で止まった場合も病院に行くべきですか?

A. 一度だけで短時間、かつ胸痛や失神などがなければ緊急性は高くないこともあります。ただし、初めての激しい動悸や、繰り返す発作がある場合は、一度循環器内科で相談しておくと安心です。

Q. 発作中に救急車を呼ぶ目安は?

A. 胸の痛み、強い息苦しさ、失神しそうな感じ、冷や汗、意識が遠のく症状がある場合、また動悸が長く続く場合は、救急受診を考えてください。迷った場合も無理せず相談しましょう。

Q. 迷走神経刺激法で必ず止まりますか?

A. 必ず止まるわけではありません。効果がある人もいますが、効かないこともあります。何度も無理に繰り返すのではなく、止まらない場合や症状が強い場合は医療機関へ相談してください。

Q. Apple WatchでPSVTと診断できますか?

A. Apple Watchなどは発作時の心拍数や心電図記録の参考になりますが、PSVTの確定診断は医師の診察や心電図評価が必要です。記録がある場合は、受診時に医師へ見せましょう。

Q. カテーテルアブレーションを受ければ必ず治りますか?

A. PSVTではカテーテルアブレーションで根治を目指せることがあります。ただし、成功率や再発の可能性、合併症リスクは不整脈の種類や体の状態によって異なります。専門医とよく相談して決めましょう。

まとめ:突然の激しい動悸は、怖がりすぎず、でも放置しすぎないで

突然、心臓が激しくバクバクすると、本当に怖いですよね。

PSVTは、突然始まり突然終わる速い動悸を起こす不整脈です。

多くの場合、すぐに命に直結するものではありませんが、症状が強い場合や長く続く場合は注意が必要です。

今回のポイントをまとめます。

  • PSVTは、心臓の電気信号が一時的に空回りして起こる不整脈
  • 突然始まり、突然終わる速い動悸が特徴
  • 胸痛、息苦しさ、失神しそうな感じがある場合は早めに救急相談
  • 状態が安定していれば、迷走神経刺激法で止まることがある
  • Apple Watchなどの記録は、受診時の参考になる
  • 治療には薬物治療とカテーテルアブレーションがある
  • 発作を繰り返す場合は循環器内科へ相談する

「また発作が起きたらどうしよう」と一人で不安を抱え続ける必要はありません。

発作時の様子を記録し、循環器内科で相談することで、原因がはっきりし、対処法や治療の選択肢も見えてきます。

怖がりすぎず、でも放置しすぎず。

ご自身の体を守るために、まずは一度、専門医に相談してみてくださいね。


参考情報

  • 国立循環器病研究センター「不整脈科 対象疾患・治療法」
  • MSDマニュアル家庭版「発作性上室頻拍(SVT、PSVT)」
  • 慶應義塾大学病院 KOMPAS「発作性上室性頻拍・心室頻拍」
  • Mayo Clinic「Supraventricular tachycardia」
  • 日本不整脈心電学会・日本循環器学会関連情報
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