高齢者が突然歩けなくなるという出来事は、家族にとって大きな不安と衝撃をもたらします。
特にパーキンソン病などの持病を抱える場合、「病気の進行なのか、それとも別の原因なのか?」と戸惑うことも多いでしょう。
今回は、私の父が実際に経験した「突然歩けなくなる」という出来事をもとに、原因や対応、そして介護の現実について詳しくお伝えします。
父の異変:1週間で歩けなくなった足
90歳近い父はパーキンソン病を患っており、少しずつ足の動きが悪くなっていました。
しかし、ある日を境に急に足が前に出なくなり、「歩けない」と訴えるようになったのです。
それまでは手すりを使えば何とか歩けていたのに、突然手を引いて介助しなければ一歩も前に進めない状態に…。
生活習慣は特に変わっていないのに、こんなに急激に歩けなくなることがあるのかと、家族としても強い違和感を覚えました。
パーキンソン病だけが原因ではない?
父はパーキンソン病の薬をきちんと服用し、毎月医師の診察も受けていました。
通常であれば、こんなに急激に症状が進行することは少ないはずです。
そこで「他の病気が隠れているのではないか?」と疑い、医師へ相談することにしました。
介護認定の見直しで分かったこと
ちょうどその頃、介護認定の更新時期でもありました。
以前は要支援2だった父ですが、今回は体の動きが著しく悪化していたため、一気に要介護4へと判定が上がりました。
これは日常生活に大きな支援が必要であることを示しています。
検査入院で判明した「硬膜下血腫」
病院でCT検査を受けた結果、父の歩行障害の原因は「硬膜下血腫(こうまっかけっしゅ)」であることが分かりました。
硬膜下血腫とは、転倒などで頭を打った際に脳を覆う膜(硬膜)と脳の隙間に少しずつ血液がたまり、脳を圧迫する病気です。
高齢者は転倒が多いため、この病気を発症しやすい傾向があります。
父も最近よく転んでおり、そのときにできた小さな出血が時間をかけて血腫となり、脳を圧迫したことで急激な歩行障害が起こったと考えられます。
手術と回復、そして再発
父はすぐに開頭手術を受け、頭蓋骨に小さな穴を開けて血液を排出しました。
手術自体は短時間で済み、血腫がなくなると驚くほど足の動きが回復。手すりを使えば歩けるほどに改善しました。
しかし、退院後すぐに再び転倒し、わずか数日で同じような歩行障害が再発。
再度のCT検査で血腫の再発が確認され、2度目の手術を受けることになったのです。
2回目の手術後は回復が思わしくなく、車椅子での生活が中心となりました。
自宅介護の大きな壁:トイレ介助
退院後の生活で最も大変だったのは「夜間のトイレ介助」でした。父はポータブルトイレを利用していましたが、一人で移動できず、毎回介助が必要です。
特に夜中は1〜2時間おきにトイレに行きたがり、そのたびに起きて介助をする必要がありました。
深夜に5〜6回も起こされる日が続き、私自身の睡眠不足と疲労が限界に達していきました。
おむつの使用を勧めても拒否され、夜中に言い争いになることも…。
この状況を通じて、「在宅介護には限界がある」と痛感するようになりました。
高齢者が突然歩けなくなる原因と注意点
高齢者が突然歩けなくなる原因には、以下のようなものがあります。
- パーキンソン病や脳梗塞などの神経疾患
- 硬膜下血腫などの頭部外傷による合併症
- 筋力低下や骨折、股関節のトラブル
- 薬の副作用や脱水症状
特に高齢者は転倒をきっかけに症状が急変するケースが多いため、「ただの老化」と思わず、すぐに病院で検査を受けることが大切です。
まとめ:家族の限界を認めることも大切
父のケースを通じて、突然の歩行障害が必ずしも持病の進行とは限らず、別の病気が潜んでいる可能性を学びました。
また、介護は家族の気力や体力に大きな負担を与えます。
「自分だけで何とかしよう」と抱え込むのではなく、介護サービスや施設の利用も検討することが、本人と家族双方にとって大切な選択肢だと実感しました。