
この記事の著者:高田 千秋(たかだ ちあき)
眼科専門医 / ドライアイ研究会会員
臨床歴15年。「治らないドライアイ・眼瞼炎」専門外来を担当し、丁寧な生活指導に定評がある。「伴走するドクター」として、患者さんの生活背景に寄り添い、一緒に治していくパートナー。
「まぶたが赤くて痒い」
「目薬をさしても、良くなったり悪くなったりを繰り返す」
そんな症状に悩み、鏡を見るたびにため息をついていませんか?
眼科に通っているのにスッキリ治らない。メイクもできなくて気分が沈む。
「もしかして、このまま治らないんじゃ……」と不安になるお気持ち、よく分かります。
でも、諦めないでください。
その不調、実は「洗い方」を変えるだけで劇的に良くなるかもしれません。
キーワードは「リッドハイジーン(眼瞼清拭)」です。
現役眼科医の私が、薬だけでは届かない「汚れ」と「詰まり」を解消し、根本から治すためのセルフケアを伝授します。
なぜ、あなたの眼瞼炎は治らないのか?隠れた犯人「MGD」とは
まず、敵の正体を知ることから始めましょう。
「眼瞼炎(がんけんえん)」と診断されて目薬を使っているのに、なぜ治らないのでしょうか?
それは、炎症の裏に「マイボーム腺機能不全(MGD)」という別の問題が隠れていることが多いからです。
「油不足」が引き起こす悪循環
まつげの根元には、「マイボーム腺」という小さな穴が並んでいます。
ここからは、涙の蒸発を防ぐための「油」が分泌されています。
しかし、汚れや加齢によってこの穴が詰まると、油が出なくなってしまいます。これがMGDです。
- 油が出ない → 涙がすぐに乾く(ドライアイ)
- 詰まる → 中で細菌が繁殖し、炎症が起きる(眼瞼炎)
- 汚れる → まつげの根元にフケやダニ(デモデックス)が溜まる
この悪循環に陥っている場合、いくら目薬で炎症(火)を抑えても、原因となる詰まり(燃料)がある限り、すぐに再発してしまうのです。

今日から始める「リッドハイジーン」。眼科医が教える2ステップ
では、どうすればこの「詰まり」を解消できるのでしょうか?
そこで登場するのが「リッドハイジーン(眼瞼清拭)」です。
リッド(Lid=まぶた)を、ハイジーン(Hygiene=衛生的にする)すること。
難しそうに聞こえますが、やることはたったの2つです。
- 温めて、固まった油を溶かす
- 洗って、汚れと油を流す
これは、毎日の歯磨きと同じです。
薬に頼るだけでなく、自分で「洗う」習慣をつけること。
これが、完治への一番の近道なのです。
【実践編1】「温罨法(おんあんぽう)」で固まった油を溶かす
まずは「温め」です。
マイボーム腺に詰まった油は、冷えたバターのように固まっています。
無理に押し出そうとせず、まずは熱で溶かしてあげましょう。
用意するもの
- ホットアイマスク(市販の使い捨てタイプや、電子レンジで温めるタイプ)
- または、蒸しタオル(濡らしたタオルを絞り、レンジで温める)
やり方
- 1日2回(朝・晩)行います。
- 目を閉じて、まぶたの上にホットアイマスクを乗せます。
- 約5分間、じっくり温めます。温度は38〜40度(お風呂くらい)が目安です。
温めることで血流も良くなり、リラックス効果もあります。
お風呂に入りながら行うのもおすすめです。
※熱すぎると火傷の原因になるので注意してください。
【実践編2】「専用シャンプー」でまつげの根元を洗う
油が溶けたら、次は「洗浄」です。
ここが最も重要なステップです。
用意するもの
- アイシャンプー(目元専用洗浄剤)
- 目にしみにくく、油汚れやダニを落とす成分が入っているため、専用品の使用を強くおすすめします。眼科やドラッグストアで購入できます。
やり方
- 泡を乗せる: 洗顔の最後に、アイシャンプーの泡を指に乗せます。
- 優しくなでる: 目を閉じ、指の腹を使って、まつげの根元を横方向(目頭⇔目尻)に優しくなでます。
- ポイント: 「洗う」というより「マッサージする」感覚で。ゴシゴシこするのは厳禁です!
- 洗い流す: お湯でしっかりと洗い流します。

よくある質問(FAQ)
患者さんからよくいただく質問にお答えします。
Q: ベビーシャンプーでも代用できますか?
A: 可能ですが、専用品がおすすめです。
ベビーシャンプーを薄めて使う方法もありますが、洗浄力が弱かったり、目にしみて涙が出ると逆に洗いにくかったりすることがあります。最近はドラッグストアでも手頃なアイシャンプーが手に入るので、そちらをおすすめします。
Q: メイクはしてもいいですか?
A: 炎症が強い時は控えましょう。
赤みや腫れが引いてきたら再開しても大丈夫ですが、「インサイドライン(粘膜に引くアイライン)」は避けてください。 マイボーム腺の出口を塞いでしまい、再発の原因になります。
Q: コンタクトレンズはいつから使えますか?
A: 充血や目やにがあるうちは眼鏡にしてください。
レンズが汚れてアレルギー性結膜炎を併発する恐れがあります。医師の許可が出てから再開しましょう。
「洗う」習慣が、あなたの瞳を守る
眼瞼炎は、一度なるとしつこい病気です。
しかし、「薬が効かない」と絶望する必要はありません。
「温めて、洗う」。
このシンプルなケアを続けることで、詰まっていた油が出るようになり、涙の質が良くなり、炎症も必ず落ち着いていきます。
自分の手でケアをすることは、自分の体をいたわること。
焦らず、毎日の習慣にしていきましょう。
スッキリとした目元を取り戻し、また楽しくメイクができる日は、もうすぐそこまで来ていますよ。
まずは今夜、お風呂でまぶたを温めることから始めてみませんか?