この記事を書いた人
片山 玲奈 (Reina Katayama)
グローバルビジネス・コミュニケーションコンサルタント / 元外資系IT企業 アジア太平洋地域広報マネージャー多数の日系グローバル企業にて、英文メールや公式文書のライティング研修を担当。APA StyleやChicago Manual of Styleなどの最新トレンドに精通。「学校で習った文法と、実際のビジネス現場での正解が違って戸惑うのは当然です。最新のグローバルスタンダードを分かりやすく解説し、あなたのプロフェッショナルとしての自信を後押しします」
全社員宛ての英文メールを作成中、「Everyone is required to…」と書いた後、「各自のパスワードを変更してください」と続ける際、「his or her」と「their」のどちらを使うべきか迷って手が止まっていませんか?
「everyoneは単数扱いだから、代名詞も単数で受けるべきだよね…でも、his or herってなんだかクドい気がする」
「かといって、theirを使ったら『everyoneは単数なのに複数形で受けるなんて、文法が分かっていない』とネイティブに思われないだろうか…」
そんな不安を抱えながら、送信ボタンを押せずにいるあなたへ。
結論から言うと、現代のビジネス英語では「their」を使うのが正解です。
この記事では、APA Styleなどの世界的権威に基づき、ネイティブが実践している最新のルールと、どうしても迷った時のスマートな言い換えテクニックを解説します。
この記事を読めば、もう送信ボタンを押す前に文法で悩むことはなくなります。
結論:everyoneの動詞は「単数」、代名詞は「they」
英文メールを書く際、まず絶対に押さえておきたい基本ルールがあります。
それは、「everyoneは常に単数動詞をとる」ということです。
everyoneは文法上「不定代名詞」と呼ばれ、グループ全体を一つのまとまりとして捉えるため、続く動詞は必ず単数形(is, has, doesなど)になります。
これは、主語と動詞の呼応(Subject-verb agreement)における絶対的な法則です。
しかし、ここで多くの人がつまずくのが「代名詞の受け方」です。
動詞が単数なのだから、代名詞も単数(his or her)で受けるべきだと学校で習った方も多いでしょう。
ですが、現代のグローバルビジネスにおける正解は異なります。
everyoneを受ける代名詞は「they / their / them」が標準なのです。
以下の例文で、良い例と悪い例を比較してみましょう。
📊 比較表
everyoneの動詞と代名詞の正しい組み合わせ
| 評価 | 例文 | 解説 |
|---|---|---|
| ❌ 誤り | Everyone have to submit their report. | 動詞が複数形(have)になっているため、明らかな文法エラーです。 |
| 🔺 不自然 | Everyone has to submit his or her report. | 文法的には正しいですが、現代のビジネスメールとしては硬く、冗長(クドい)な印象を与えます。 |
| ⭕️ 正解 | Everyone has to submit their report. | 動詞は単数(has)、代名詞はthey(their)で受けるのが、現代の最も自然で正確な表現です。 |
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: everyoneを使った文章を書くときは、「動詞は単数、代名詞はthey」とセットで暗記してしまいましょう。
なぜなら、この点は多くの日本人が見落としがちで、「Everyone have…」と動詞まで複数形にしてしまうミスが非常に多いからです。動詞の単数・複数を間違えると、ネイティブには「基礎的な文法が身についていない」という印象を与えてしまいます。まずは「Everyone is…」「Everyone has…」と書き出す癖をつけることが、プロフェッショナルな英文への第一歩です。この知見が、あなたの成功の助けになれば幸いです。
なぜ「his or her」はNG?Singular theyが世界の標準になった理由
「でも、theyって複数形ですよね?単数のeveryoneをtheyで受けるなんて、やっぱり文法的に間違っている気がして不安です…」
そのお気持ち、とてもよく分かります。
かつての学校文法では、「everyoneを受ける代名詞はhis、またはhis or herが正しい」と教えられてきました。
そのため、theyを使うことに抵抗を感じるのは当然のことです。
しかし、言葉は時代とともに変化します。
現代のビジネス英語において、「his or her」は避けるべき表現へとパラダイムシフトが起きています。
その理由は大きく2つあります。
- ジェンダーインクルーシブ(包摂的)な言語への配慮: 現代の社会では、特定の性別を前提とする「his」や、男女の二元論に基づく「his or her」は不適切と見なされるようになっています。性別を特定しない、ジェンダーニュートラルな表現が強く求められているのです。
- 文章の簡潔さ: 「his or her」は単純に文字数が多く、文章が冗長(wordy)になります。簡潔さが命のビジネスメールにおいて、これは大きなマイナスです。
これらの理由から、単数の人物を指す場合でも「they」を使用する「Singular they(単数形のthey)」が、現代英語の完全に市民権を得ました。
これは単なる流行やカジュアルな口語表現ではありません。
学術・ビジネスライティングの最高権威であるAPA Styleも、Singular theyの使用を公式に推奨しています。
Writers should always use the singular “they” to refer to a person who uses “they” as their pronoun. Also use “they” as a generic third-person singular pronoun to refer to a person whose gender is unknown or irrelevant to the context of the usage.
(筆者は、「they」を自身の代名詞として使用する人物を指す場合、常に単数形の「they」を使用すべきである。また、性別が不明であるか、使用の文脈において無関係である人物を指す一般的な三人称単数代名詞としても、「they」を使用すること。)出典: Welcome, singular “they” – American Psychological Association (APA), 2019年
APA StyleがSingular theyを公式推奨したことで、この表現は正式なフォーマルライティングとして確固たる地位を築きました。
つまり、あなたがビジネスメールで「their」を使っても、ネイティブから「文法が間違っている」と思われることは絶対にありません。
むしろ、「最新のグローバルスタンダードを理解している洗練された書き手だ」と評価されるはずです。
【実務テクニック】迷ったら「All employees」に書き換えるのが一番スマート
ここまで、「everyoneの代名詞はtheyが正解」と解説してきました。
しかし、「頭では理解できても、いざ『Everyone is… their…』と書くとなると、単数と複数がねじれているようで、どうしても気持ち悪い…」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
その感覚は決して間違っていません。ネイティブの中にも、この「ねじれ」に違和感を覚える人は少なからず存在します。
そんな時に使える、最もスマートで実務的な回避策(パラフレーズ)をお伝えします。
それは、主語自体を複数形に書き換えてしまうというテクニックです。
全社員宛てのメールであれば、everyoneの代わりに「All employees」を使ってみましょう。

主語を「All employees」にすれば、動詞は当然複数形の「are」になり、代名詞も複数形の「their」で受けることができます。これで文法的な違和感は完全に消え去ります。
さらに、「everyone(みんな)」よりも「All employees(全従業員)」の方が、ビジネス文書としてよりフォーマルでプロフェッショナルな響きを持ちます。迷った時は、この言い換えテクニックをぜひ活用してください。
everyoneとeverybodyの違いは?よくある疑問を解決
最後に、everyoneに関連してよく受ける質問にお答えします。
「everyoneとeverybody、どちらを使えばいいですか?」
結論から言うと、意味は全く同じですが、フォーマル度合い(ニュアンス)に違いがあります。
- everyone: よりフォーマルな響きがあり、書き言葉(ビジネスメールや公式文書)に適しています。
- everybody: よりカジュアルな響きがあり、話し言葉(日常会話や親しい同僚とのチャット)でよく使われます。
したがって、今回のように全社員宛てのビジネスメールを作成する場合は、「everyone」を選択するのが無難であり、正解です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
この記事では、ビジネス英文法における「everyone」の正しい使い方について解説しました。
- everyoneの動詞は必ず「単数形(is, has, does)」にする。
- everyoneを受ける代名詞は「they / their / them」が現代のグローバルスタンダード。
- 単数・複数のねじれが気になる場合は、主語を「All employees」に書き換える。
言葉は時代とともに変化します。学校で習った古いルールの呪縛から解放され、最新のルールをアップデートしたあなたは、もうネイティブとのやり取りで自信を失う必要はありません。
さあ、自信を持ってその英文メールの送信ボタンを押してください!
参考文献
*Welcome, singular “they” – APA Style
- What Is the Singular They, and Why Should I Use It? – Grammarly
*Everyone, everybody, everything, everywhere – Cambridge Grammar