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この記事を書いた人:タケシ
居酒屋探求家・おつまみ愛好家歴15年。全国の居酒屋を巡り、酒の肴に関するコラムを多数執筆。飲み会を盛り上げたいビジネスマンの良き相談相手として、知識をひけらかすのではなく「会話のスパイス」として使える粋なウンチクを伝授します。
「先輩、メニューにある『あたりめ』と『するめ』って何が違うんですか?」
今まさに居酒屋の席で後輩から無邪気にこう聞かれ、答えに詰まってテーブルの下でこっそりスマホを取り出し、この記事にたどり着いたあなた。焦る必要はありません。
結論からお伝えすると、「あたりめ」と「するめ」は全く同じものです。
しかし、後輩の質問に対して単に「同じだよ」と答えて会話を終わらせてしまうのは、少しもったいない対応です。
この記事では、なぜ同じ乾物なのに2つの呼び方が存在するのかという「江戸時代から続く粋な言葉遊び」の歴史から、大手珍味メーカーが定めている意外な区別まで、飲み会の席ですぐに使える一段上のウンチクを解説します。
この記事をサッと読めば、後輩から「先輩、物知りですね!」と尊敬のまなざしを向けられ、その場の空気をパッと盛り上げることができるはずです。
結論:「あたりめ」と「するめ」は全く同じもの!
まずは、最も気になる疑問にズバリお答えします。
「あたりめ」と「するめ」は、どちらもイカの内臓を取り除いて乾燥させた乾物であり、中身は全く同じで、名称のみが異なる同一の食品です。
イカを開いて干しただけのシンプルな製法で作られており、味付けや作り方によって「あたりめ」と「するめ」が区別されているわけではありません。
居酒屋のメニュー表にどちらが書かれていても、運ばれてくるおつまみは同じイカの乾物です。
では、なぜ中身が全く同じ食品に対して、わざわざ2つの異なる名前が使われているのでしょうか。
その理由は、日本人が古くから大切にしてきた「言葉の縁起担ぎ」に隠されています。
なぜ名前が違う?江戸時代から続く「粋な言い換え」
「あたりめ」という呼び方が生まれた背景には、「忌み言葉(いみことば)」という日本の伝統的な文化が深く関わっています。
忌み言葉とは、不吉な連想をさせる言葉を避け、別の縁起の良い言葉に言い換える風習のことです。
「するめ」という名前の「する」という響きは、博打でお金を「擦る(失う)」、あるいは財布を「掏る(盗まれる)」といったネガティブな言葉を連想させます。
特に商売人にとって、お金を失うことを連想させる「する」は非常に縁起が悪い言葉でした。
そこで江戸時代の人々は、「する(擦る)」の反対である「当たり」という縁起の良い言葉を用いて、「するめ」を「あたりめ」と言い換えるようになりました。
つまり、「あたりめ」は「するめ」の縁起の悪さを避けて言い換えた名称なのです。
この忌み言葉の言い換えは、「あたりめ」だけではありません。
例えば、ゴマなどをすりつぶす道具である「すり鉢」を「あたり鉢」と呼んだり、「すりこぎ」を「あたり棒」と呼んだりするのも、全く同じ理由から生まれた言葉遊びです。
居酒屋という商売繁盛を願う場所だからこそ、縁起の良い「あたりめ」という表記が好んで使われているのです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 後輩に違いを聞かれたら、「実は中身は同じなんだけど、昔の人が縁起を担いで名前を変えたんだよ。すり鉢を『あたり鉢』って言うのと同じだね」とサラッと答えてみてください。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、単に「同じだよ」と答えて会話を終わらせてしまう失敗が非常に多いからです。ウンチクは長々と語るのではなく、相手が「へぇ!」と驚くワンフレーズをサッと出すのが一番カッコよく、頼れる先輩を演出できます。この知見が、あなたの成功の助けになれば幸いです。
【例外あり】大手メーカー「なとり」の意外な区別とは?
ここまでの解説で、「あたりめ」と「するめ」は同じものであり、名前の由来が違うだけだとお伝えしました。
しかし、ここで終わらないのが「一段上のウンチク」です。
実は、この常識を覆す例外的な区別が存在します。
おつまみのトップメーカーとして知られる「株式会社なとり」では、社内の基準として「するめ」と「あたりめ」を明確に区別して商品を販売しています。
株式会社なとりの定義では、イカを乾燥させた「丸ごとの状態」のものを「するめ」と呼び、そのするめを火で炙り、「食べやすく裂いた状態」のものを「あたりめ」と呼んで区別しています。

「基本は同じなんだけど、実はおつまみメーカーの『なとり』だと、丸ごとか裂いてあるかで名前を分けてるんだよ」と付け加えれば、あなたのウンチクの説得力と面白さはさらに跳ね上がります。
さらに会話が弾む!「するめ」にまつわる3つの豆知識
「あたりめ」と「するめ」の違いを解説した後は、さらに会話を広げるためのプラスアルファの豆知識を3つ紹介します。
これらの知識を交えれば、お酒の席がさらに盛り上がること間違いありません。
1. 結納品では「寿留女」と書く超縁起物
「するめ」という言葉自体は縁起が悪いとされて「あたりめ」と言い換えられましたが、実はイカの乾物そのものは古くから大変な縁起物として扱われてきました。
日持ちが良いことから「幸せが長く続くように」という願いが込められ、結納の品としては当て字で「寿留女(するめ)」と記され、末永い幸せを象徴する品となっています。
2. 大相撲の土俵祭りでも使われる神聖な供物
するめの縁起の良さは、日本の国技である大相撲にも見られます。
本場所の前に行われる「土俵祭り」では、土俵の安全を祈願して、土俵の中央に勝栗や昆布と共に、するめが神聖な供物として埋められています。
するめは単なるおつまみではなく、神事に欠かせない神聖な食べ物なのです。
3. イカの種類による違い(最高級はケンサキイカ)
一般的に流通しているするめやあたりめは「スルメイカ」を原料としていますが、イカの種類によって等級が存在します。
中でも「ケンサキイカ」を使って作られたするめは「一番するめ」と呼ばれ、肉厚で甘みが強く、最高級品として珍重されています。
もしメニューに「剣先するめ」とあれば、それは普段より少し贅沢な一品です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「あたりめ」と「するめ」は中身は全く同じイカの乾物ですが、その背景には「する(擦る)」を避けて「当たり」と言い換えた、江戸時代から続く日本人の粋な言葉遊びが隠されていました。
さらに、株式会社なとりのような大手メーカーによる例外的な区別や、結納品・相撲にまつわる縁起物としての側面など、するめには語り尽くせないほどの魅力が詰まっています。
さあ、スマホをテーブルの下に置いて、答えを待っている後輩にこのウンチクを披露してあげてください。
「実は中身は同じなんだけどね…」と語り始めれば、きっとその場の空気が一段と盛り上がり、あなたは「頼れる物知りな先輩」として一目置かれるはずです。
今夜のお酒が、さらに美味しいものになりますように!
[参考文献リスト]
- 『するめ』と『あたりめ』は何が違うの? – 株式会社なとり 公式コラム
- 語源由来辞典
- 「するめ」を「あたりめ」と呼ぶワケ – 一般財団法人 日本educe食育総合研究所