深夜、突然みぞおちを雑巾で絞られるような痛みに襲われて目が覚めた…。
脂汗が出るほど痛いし、病院も開いていない。救急車を呼ぶべきか、それとも朝まで我慢すべきか。
一人で耐えているその恐怖、痛いほど分かります。
でも、まずはスマホを置いて、深呼吸してください。
結論から言います。その痛み、多くは「胃痙攣(いけいれん)」と呼ばれる一時的な発作です。
命に関わることは稀ですが、稀に危険な病気が隠れていることもあります。
消化器内科医として救急現場に立ってきた私が、「今すぐ救急車を呼ぶべきかの判断基準」と、「薬がなくても痛みを和らげる方法」をお教えします。
焦らなくて大丈夫。一緒にチェックしていきましょう。
[著者情報]
この記事を書いた人:佐々木 浩二(消化器内科専門医)
救急外来で10年以上、深夜の腹痛患者を診察。胃痙攣から緊急手術が必要なケースまで数千例を経験。「深夜の孤独な痛みに寄り添う」をモットーに、冷静かつ的確なトリアージ(緊急度判定)情報を発信している。
【緊急度チェック】この痛み、救急車を呼ぶべき? 3つの危険サイン
まずは最優先で、命に関わる危険な状態ではないかを確認しましょう。
以下の3つの症状のうち、1つでも当てはまる場合は、迷わず救急車を呼ぶか、夜間救急を受診してください。

いかがでしたか?
もしこれらに当てはまらなければ、ひとまず命の危険は低いと考えられます。
朝まで様子を見ても大丈夫ですので、少し肩の力を抜いてください。
「キューっと痛い」正体は? 9割は「胃痙攣」かもしれません
「危険なサインはないけど、とにかく痛い!」
その正体は、十中八九「胃痙攣(いけいれん)」です。
胃痙攣とは、病名ではなく症状の名前です。
ストレスや冷え、暴飲暴食などが引き金となり、自律神経が乱れて、胃の壁の筋肉が過剰に収縮して痙攣(けいれん)を起こしている状態です。
ふくらはぎが「こむら返り」を起こしてつるのと同じことが、胃で起きていると考えてください。
想像するだけで痛いですよね。
でも、筋肉の痙攣なので、時間が経てば必ず治まります。
死ぬような病気ではありませんので、安心してください。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 痛みに「波」があるなら、それは胃痙攣の特徴です。
なぜなら、筋肉の痙攣は「ギュッと縮む(激痛)」と「少し緩む(痛みが引く)」を繰り返すからです。救急外来に来る患者さんの多くもこのパターンで、点滴を打ってリラックスすると、嘘のようにケロッと治って帰宅されることが多いんですよ。
薬がない時の応急処置! 今すぐ痛みを和らげる「姿勢」と「温度」
「でも、手元に薬がない…」
そんな時でも、痛みを和らげる方法はあります。今すぐ試してみてください。
1. 右側を下にして横になる
これが最も効果的です。
胃の出口は体の右側にあります。
右側を下にして寝ることで、胃の中の内容物がスムーズに腸へ流れやすくなり、胃への負担が減ります。
また、膝を抱えて背中を丸める「エビのような姿勢」をとると、腹筋が緩んで痛みが和らぎやすくなります。

2. お腹を温める
胃痙攣は筋肉の緊張です。
温めることで血流が良くなり、緊張がほぐれます。
湯たんぽやカイロがあればベストですが、なければ温かいペットボトル(タオルで巻く)をみぞおちに当ててみてください。
※ただし、キリキリとした鋭い痛みで熱っぽさがある場合は、炎症の可能性があるので温めすぎないでください。
3. 白湯を少しずつ飲む
冷たい水は刺激になるのでNGです。
人肌程度の白湯を、一口ずつゆっくり飲んでみてください。胃が温まり、落ち着く効果があります。
昨夜、刺身を食べましたか? 「アニサキス」の可能性と対処法
ここで一つだけ、確認させてください。
数時間〜半日前に、刺身や寿司(特にサバ、イカ、アジ)を食べませんでしたか?
もし食べた心当たりがあり、かつ激痛が波のように襲ってくるなら、「アニサキス」の可能性があります。
アニサキスは胃壁に噛み付いて暴れるため、ものすごい激痛を伴います。
残念ながら、アニサキスに効く市販薬はありません(正露丸が効くという説もありますが、確実ではありません)。
この場合は、朝一番で消化器内科を受診し、内視鏡で摘出してもらうのが唯一かつ最強の解決策です。
それまでは、先ほどの「右側を下にして寝る」姿勢で耐えるしかありません。
Q&A:市販薬はどれがいい? 食事は抜くべき?
Q. 薬局で薬を買うならどれがいいですか?
A. 胃痙攣なら「ブスコパン」などの鎮痛鎮痙薬が有効です。
ただし、ブスコパンは緑内障や前立腺肥大のある方は飲めませんので注意してください。
キリキリした痛みや胃酸が上がってくる感じなら、「ガスター10」などのH2ブロッカーも選択肢に入ります。
Q. 食事はしてもいいですか?
A. 痛みがあるうちは「絶食」が基本です。
食べ物が胃に入ると、胃が動いてしまい、痛みが悪化します。
「食べなきゃ治らない」は間違いです。今は胃を休ませることが一番の薬です。水分だけ摂って、固形物は控えてください。
まとめ:朝まで痛みが引かなければ、消化器内科へ
ここまで読んで、少し落ち着きましたか?
危険なサインがなければ、まずは温かくして、楽な姿勢で横になりましょう。
あなたの体は今、必死に「休んで」と訴えています。その声に従ってあげてください。
もし、朝になっても痛みが引かない、あるいは黒い便が出るなどの変化があれば、念のため消化器内科を受診してください。
何事もないことを祈っています。お大事にしてくださいね。
[参考文献リスト]