突発的な寒気、この後熱が出る?震えが止まるまで「冷やさない」が鉄則の理由

「夕方からゾクゾクして、今は布団の中でガタガタ震えが止まらない。熱を測ってもまだ平熱なのに……」。

深夜、暗い部屋でスマホを握りしめ、このページに辿り着いた結衣さん。

明日の朝には大事な会議があり、保育園の送り迎えも待っている。

そんな「絶対に倒れられない」状況で襲ってきた正体不明の震えに、パニックになりかけていませんか?

「今すぐ氷枕で冷やしたほうがいい?」「それともお風呂で温まるべき?」

結論から申し上げます。その震えが止まるまでは、絶対に体を冷やしてはいけません。

今のあなたの体は、ウイルスと戦うために必死で熱を作ろうとしている「上昇期」にあります。

ここで良かれと思って冷やしてしまうのは、回復を遅らせる最大のNG行為です。

救急医として、そして同じく共働きで子育てをするパパとして、あなたの「生活」を守るための最短リカバリー戦略をお伝えします。

今夜をどう乗り切り、明日の朝どう判断すべきか。医学的に正しい「今夜の戦い方」を一緒に確認しましょう。


🖊️ 著者プロフィール

倉田 保明(くらた やすあき)
救急科専門医 / 内科医
救急外来にて年間3,000人以上の急性疾患を診察。感染症の初期対応から家庭でのセルフケアまで、エビデンスに基づいた実践的な指導に定評がある。自身も2児の父であり、共働き世帯の「絶対に倒れられない」プレッシャーに深く寄り添うスタンスを貫いている。


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なぜガタガタ震えるの?脳が「体温を上げろ」と叫んでいるサイン

熱はないのにガタガタと震える。この不快な症状の正体は、医学用語で「シバリング(ふるえ熱産生)」と呼ばれます。

なぜこんなことが起きるのか。それは、あなたの脳にある体温調節センターが、設定温度(セットポイント)を急激に引き上げたからです。

通常、私たちの体温は36度台に設定されています。

しかし、ウイルスが侵入すると、脳は「39度まで上げてウイルスを退治しろ!」と命令を出します。

この瞬間、実際の体温は平熱でも、脳の設定温度との間にギャップが生じるため、体は「猛烈に寒い」と勘違いして震え出すのです。

シバリングは、筋肉を激しく動かすことで熱を生み出す、いわば「全力疾走」のような状態です。

安静時の最大5倍もの熱を産生しますが、その分、体力の消耗も激しいのが特徴です。

悪寒(おかん)とは、脳のセットポイント(設定温度)が上昇した際に、実際の体温との差を埋めるために筋肉が不随意に収縮して熱を産生する生理現象である。

出典: MSDマニュアル プロフェッショナル版 – 悪寒 – MSD, 2023年

つまり、シバリング(震え)が起きている「上昇期」は、体が熱を作るのを外から手助けしてあげる(保温する)のが医学的な正解です。

ここで冷やしてしまうと、体はさらに熱を作ろうとして震えを強め、あなたの貴重な体力をさらに削り取ってしまいます。


【判定マップ】震えがあるなら温める、止まったら冷やす。今夜の正解アクション

今夜を乗り切るための最大のポイントは、「震えの有無」をバロメーターにして、ケアを180度切り替えることです。

多くの人が「熱がある=冷やす」と思い込んでいますが、切り替えのタイミングを間違えると逆効果になります。

以下のマップに従って、今の自分のフェーズを確認してください。

寒気と発熱の「温め・冷やし」切り替え判定マップ

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 震えが止まるまでは、氷枕をクローゼットにしまっておいてください。

なぜなら、この上昇期に無理に冷やすと、脳は「まだ温度が足りない!」と判断して、さらに激しい震えを命令するからです。これは軍事戦略で言えば、味方が必死に火を焚いているところに水をかけるようなもの。まずは外から温めて、脳を「もう十分熱くなったよ」と安心させてあげることが、体力を温存する最短ルートなのです。


インフル?それともストレス?翌朝「仕事に行く・休む」の医学的判断基準

結衣さんが最も心配している「明日の朝、どうするか」。

今の寒気がインフルエンザなどの感染症によるものか、あるいは過労やストレスによる自律神経の乱れ(心因性発熱)によるものか、その見分け方の基準を整理しました。

感染症(インフルエンザ等)と自律神経性の寒気は、随伴症状(セットで起きる症状)に明確な違いがあります。

📊 比較表
寒気の原因別・チェックリスト

項目感染症(インフル・風邪等)自律神経・ストレス性
熱の出方38度以上の急激な高熱が多い微熱(37度台)が続く、または平熱
全身症状強い関節痛・筋肉痛・倦怠感頭痛・めまい・動悸・不眠など
震えの特徴ガタガタと激しく震えるゾクゾクするが、激しい震えは稀
翌朝の判断【受診】 迷わず病院へ。出社は厳禁。【静養】 無理せず休み、心身を休める。

特に、「急激な高熱」「関節痛」「立っていられないほどのダルさ」の3点セットが揃っている場合は、インフルエンザの可能性が極めて高いです。

この場合、無理に出社しても仕事にならないばかりか、職場にウイルスを撒き散らすリスクがあります。

明朝一番での受診を強く推奨します。

一方、熱は上がらないのに寒気だけが続く場合は、自律神経が悲鳴を上げているサインかもしれません。

どちらにせよ、今のあなたの体は「休息」を求めている緊急事態であることに変わりはありません。


FAQ:お風呂は?薬のタイミングは?働く母が知っておきたい「今夜の備え」

深夜の不安を解消するための、実務的なQ&Aです。

  • Q. お風呂に入って汗をかけば、熱は下がりますか?
    • A. 震えがある間は絶対に避けてください。 入浴は想像以上に体力を消耗します。上昇期に入浴すると、湯冷めした瞬間にさらに激しい震えに襲われるリスクがあります。どうしても汗が気になるなら、震えが完全に止まった後に、短時間のシャワーで済ませましょう。
  • Q. 解熱剤(アセトアミノフェン等)はいつ飲むのがベスト?
    • A. 震えが止まり、熱が上がりきって「辛い」と感じてから。 震えている最中に無理に下げると、ウイルスとの戦いを長引かせる可能性があります。ただし、高熱で眠れないほど辛い場合は、我慢せずに服用して「睡眠」を優先してください。
  • Q. 枕元に用意しておくべきものは?
    • A. 経口補水液(OS-1など)と着替えです。 この後、熱が上がりきると大量の汗をかきます。脱水は回復を遅らせる最大の敵です。コップ1杯の水分を枕元に置き、汗をかいたらすぐに着替えられる準備をしてから眠りにつきましょう。

まとめ:今夜は自分を甘やかして。正しいケアで明日を迎えよう

結衣さん、ここまで読んで少しはパニックが鎮まりましたか?

今のガタガタとした震えは、あなたの体がウイルスを追い出そうと、全力で戦っている証拠です。あなたは何も悪くありません。

  1. 震えがある間は、布団を被って徹底的に温める。
  2. 震えが止まったら、脇の下などを冷やして不快感を取る。
  3. 枕元に水分を置き、明日の朝のことは明日考える。

「休むことも仕事のうち」という言葉は、決して綺麗事ではありません。

今夜、正しいケアで体力を温存することが、結果として最も早く戦線に復帰する近道になります。

まずは経口補水液を一口飲んで、布団に潜り込んでください。

軍師である私からの命令です。おやすみなさい。


参考文献・出典

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