「長男の頬が真っ赤!熱はないけれど、これってもしかして『りんご病』?」
「私は今、妊娠5ヶ月。もし自分にうつっていたら、お腹の赤ちゃんはどうなってしまうの……?」
お子さんの頬がリンゴのように赤くなったのを見て、驚きと不安で胸がいっぱいになっていることでしょう。
ましてや佳奈さんのように第2子を妊娠中であれば、ネットで目にする「胎児への影響」という言葉に、夜も眠れないほどのパニックを感じてしまうのは当然のことです。
しかし、まずは一度、深呼吸をしてください。
産婦人科医・小児科医として多くの母子を診てきた私から、佳奈さんに一番に伝えたい結論があります。
それは、「お子さんの頬が赤くなった時点では、もう周囲にうつす力(感染力)はほぼ消えている」ということです。
この記事では、医学的根拠に基づいた「長男の登園判断」と、妊婦である佳奈さんが「今すぐ産院で受けるべき検査」の具体的なステップを分かりやすく解説します。
正しく知識を持つことが、佳奈さんとお腹の赤ちゃんを守る最強の盾になります。
一緒に確認していきましょう。
著者プロフィール
ドクター佐藤
産婦人科医・小児科専門医 / 周産期母子医療センター 連携アドバイザー
20年以上の臨床経験を持ち、数千組の親子に感染症対策と胎児医学の指導を行ってきたエキスパート。母体と子供の両方の視点から、エビデンスに基づいた「家族を守るための最短ルート」を提示することに定評がある。
なぜ「頬が赤い」のに幼稚園に行かせていいの?感染力の意外な真実
「頬がこんなに赤いのに、登園させていいなんて信じられない」と思われるかもしれません。
しかし、りんご病(正式名称:伝染性紅斑)には、他の感染症とは異なる非常に特殊なタイムラインがあります。
感染力のピークは「発疹が出る前」
りんご病の原因であるヒトパルボウイルスB19の感染力が最も強いのは、頬が赤くなる7〜10日前です。
この時期は、軽い風邪のような症状(微熱や鼻水)が出る程度で、誰も「りんご病」だとは気づきません。
そして、特徴的な「赤い頬」や「腕のレース状の発疹」が現れたときには、体内のウイルスはすでに抗体によって退治され、周囲へ感染させる力はほとんど失われています。

学校保健安全法上の扱い
学校保健安全法において、りんご病は「出席停止」の指定疾患ではありません。
本人が元気であれば、診断を受けた後でも登園・登校を制限する必要はないとされています。
佳奈さんの息子さんも、熱がなく元気であれば、明日から幼稚園に行かせて大丈夫です。
むしろ、隔離すべき時期はすでに過ぎてしまっているのです。
妊婦のあなたが「正しく恐れる」ための3つの事実:7割の大人は大丈夫
次に、佳奈さんが最も心配している「自分とお腹の赤ちゃんへの影響」についてお話しします。
リスクはゼロではありませんが、パニックを鎮めるための重要なデータがあります。
事実1:大人の約70%はすでに免疫を持っている
日本産婦人科医会の調査によれば、成人の約70%は過去にりんご病にかかったことがあり、終生免疫(IgG抗体)を持っています。
もし佳奈さんが過去に感染していれば、長男からウイルスをもらうことはありませんし、お腹の赤ちゃんに影響が及ぶことも100%ありません。
事実2:初感染でも胎児への影響は限定的
万が一、佳奈さんが抗体を持っておらず、今回初めて感染したとしても、必ず赤ちゃんに問題が起きるわけではありません。
妊婦が初感染した場合、胎児への垂直感染(ウイルスが胎盤を通ること)は約30%で起こりますが、その中で重い貧血(胎児水腫)に至るのは約3%程度です。
事実3:20週を過ぎればリスクは激減する
佳奈さんは現在妊娠5ヶ月(16〜19週付近)ですね。
胎児への影響が最も懸念されるのは妊娠20週未満ですが、それを過ぎるとリスクは急激に低下します。
佳奈さんは今、まさに「最も注意すべき時期」の終盤に差し掛かっています。
📊 比較表
妊婦の抗体有無によるリスクと対応の違い
| 状況 | 胎児への影響 | 必要なアクション |
|---|---|---|
| IgG抗体がある(既感染) | なし(リスクゼロ) | 通常通りの妊婦健診でOK |
| 抗体がない(未感染) | 感染の可能性あり | 接触から2〜4週間後に再検査 |
| 今回初感染した | 胎児水腫のリスク(約3%) | 専門医による精密なエコー観察 |
【保存版】もし家族がりんご病になったら?妊婦が取るべき具体的アクション
「もしかして」と思ったら、一人で悩まずに医療機関と連携しましょう。
佳奈さんが明日、園に子供を送り出した後に取るべき行動をまとめました。
ステップ1:産婦人科へ電話相談
まずは、かかりつけの産婦人科に電話をしてください。
直接受診する前に、必ず「同居家族がりんご病の疑いであること」を伝えるのがマナーです。
📞 産院への電話用テンプレート
「お世話になっております。現在妊娠5ヶ月の山下です。5歳の長男の頬が赤くなり、りんご病の疑いがあります。私自身に抗体があるか確認したいのですが、血液検査をお願いできますでしょうか?」
ステップ2:血液検査(抗体検査)を受ける
病院では、IgG抗体(過去の感染歴)とIgM抗体(最近の感染)を調べます。
- IgGが陽性なら: その時点で「合格」です。もう心配いりません。
- 両方陰性なら: まだ感染していないか、潜伏期間中です。2〜4週間後にもう一度検査をして、変化がないかを確認します。
ステップ3:エコーによる経過観察
もし初感染が疑われる結果が出たとしても、絶望しないでください。
週に1〜2回、超音波(エコー)検査で赤ちゃんの状態(むくみや心臓の動き)を丁寧に観察することで、万が一の胎児水腫も早期に発見し、高度な専門治療へ繋げることが可能です。

よくある質問:大人の症状や第2子への影響について
Q. 私自身、最近手足の関節が痛むのですが、これもりんご病ですか?
A. 大人が感染すると、子供のような「赤い頬」は出ず、代わりに手足の激しい関節痛やむくみが出ることが多いです。佳奈さんにこのような症状がある場合は、初感染の可能性が高まるため、より早めに産院へ伝えてください。
Q. 20週を過ぎれば、もう絶対に大丈夫なのですか?
A. 「絶対」とは言えませんが、胎児の造血機能が安定してくるため、ウイルスによる貧血(胎児水腫)のリスクは大幅に下がります。まずは現在の週数での状態を正確に把握することが大切です。
まとめ:「知ること」が、あなたと赤ちゃんを守る最大の盾になります
佳奈さん、少しだけ心が軽くなりましたか?
- 長男の登園: 頬が赤いなら、もううつりません。元気に送り出してあげましょう。
- 自身の抗体: 大人の7割は免疫を持っています。佳奈さんも守られている可能性が高いです。
- 次のアクション: 明日の朝、産院に電話して抗体検査の相談をしましょう。
「もしも」を数えてパニックになるよりも、医学的なデータに基づいて「今の状態」を確認することが、お腹の赤ちゃんを守るための最も誠実な行動です。
斉藤医師をはじめ、医療スタッフは佳奈さんの味方です。
まずは深呼吸をして、明日の朝、一歩踏み出してみてください。
その勇気が、家族の笑顔を守ることに繋がります。
【参考文献リスト】