朝起きて、お子さんの目が赤く腫れているのを見てドキッとしませんでしたか?
「もしかして、はやり目? 保育園休ませなきゃダメ? 私の仕事、今日どうしても休めないのに……」
時計の針が進む中、頭の中で最悪のシミュレーションが駆け巡っているかもしれません。
その焦る気持ち、私も3人の子育てをしてきたので痛いほどよく分かります。
でも、まずは深呼吸してください。
もしその症状が「ものもらい」であれば、誰にもうつりませんし、登園も出勤も可能です。
この記事では、小児眼科医であり3児の母でもある私が、今すぐできる「ものもらい」と「はやり目」の見分け方と、保育園への連絡のコツをお伝えします。
正しい知識で判断し、落ち着いて朝を乗り切りましょう。
[著者情報]
小児眼科医 / 3児の母
大学病院での勤務を経て、現在は地域密着の眼科クリニックを開業。学校医としても活動し、保護者向けの講演も多数行う。「働くママの味方」として、医学的な正しさを守りつつ、現実的な親の悩み(仕事、保育園のルール)に寄り添うアドバイスに定評がある。
結論:ものもらいは「うつりません」。でも油断は禁物!
まず、お母さんが一番知りたい結論からお伝えします。
「ものもらい(麦粒腫・霰粒腫)」は、人から人へうつる病気ではありません。
ものもらいは、まぶたにある脂や汗の分泌腺に細菌が感染したり、脂が詰まったりして起こる炎症です。
いわば「まぶたにできたニキビ」のようなものです。
原因となる細菌(黄色ブドウ球菌など)は誰の体にもいる常在菌であり、ウイルスのように空気感染や接触感染で広がることはありません。
したがって、兄弟やお友達と一緒に遊んでも大丈夫ですし、基本的には登園・登校も可能です。
しかし、ここで一つだけ注意しなければならないことがあります。
それは、見た目がものもらいと非常によく似ている「はやり目(流行性角結膜炎)」の存在です。
はやり目はアデノウイルスなどが原因の感染症で、感染力が非常に強く、学校保健安全法で「出席停止」と定められています。
つまり、登園は禁止です。
この「うつらないものもらい」と「うつるはやり目」を見分けることが、今のあなたにとって最も重要なミッションです。
【30秒チェック】「ものもらい」vs「はやり目」見分け方リスト
では、お子さんの目を観察してみてください。以下のチェックリストを使って、どちらの可能性が高いか判断しましょう。
📊 比較表
登園可否が変わる!「ものもらい」vs「はやり目」症状比較チェックリスト
| チェック項目 | ものもらい (麦粒腫・霰粒腫) | はやり目 (流行性角結膜炎) |
|---|---|---|
| 目やにの量 | 少ない (寝起きに少しつく程度) | 大量 (目が開かないほどべっとり、日中も出る) |
| 充血の範囲 | 部分的 (腫れている場所の周辺だけ赤い) | 全体的 (白目全体が真っ赤に充血する) |
| 腫れ方 | しこりがある (まぶたの一部がプクッと腫れる) | まぶた全体 (ボッテリと全体が腫れぼったい) |
| 痛み・痒み | 瞬きすると痛い (または痒い) | ゴロゴロする (異物感、涙が止まらない) |
| 感染性 | なし (うつらない) | あり (非常に強い) |
| 登園・出勤 | OK | NG (医師の許可があるまで) |
判断のポイント:
もし、お子さんの症状が「目やにが大量に出ている」「白目が真っ赤」であれば、はやり目の可能性が高いです。
この場合は、残念ですが登園を控え、すぐに眼科を受診してください。
逆に、「目やには少なく、まぶたの一部だけが赤く腫れている」のであれば、ものもらいの可能性が高いです。
この場合は、登園の準備を進めて大丈夫でしょう。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 迷ったら「目やにの量」を最優先の判断基準にしてください。
なぜなら、初期段階では腫れ方が似ていて区別がつきにくいことがありますが、「日中も拭いても拭いても出てくる目やに」は、ウイルス性結膜炎(はやり目)の決定的な特徴だからです。このサインを見逃さなければ、クラス内での感染拡大という最悪の事態は防げます。
保育園・学校への連絡はどうする?「連絡帳」の書き方
「ものもらいだと思うけれど、先生にどう伝えればいい?」
「『うつるんじゃないですか?』と嫌な顔をされたくない……」
そんな不安を持つお母さんのために、園の先生を安心させ、トラブルを防ぐための連絡帳の書き方をご紹介します。
ポイントは、「親として確認しました」という姿勢と、「念のため受診します」という配慮を見せることです。
連絡帳の文例テンプレート:
おはようございます。
今朝、右目が少し腫れており「ものもらい」のような症状があります。
目やには出ておらず、充血もないため、感染性の「はやり目」ではないと判断し登園させました。
念のため、今日の夕方(または明日)、眼科を受診する予定です。
タオルは共有しないよう、本人にも伝えてありますが、園でも少し気にかけていただけると助かります。
よろしくお願いいたします。
このように伝えることで、先生方は「ちゃんとお家で見てくれているんだな」と安心できますし、他の保護者から何か言われた際にも「お家で眼科受診の対応をされていますよ」と説明しやすくなります。
眼帯は必要?プールは?よくある疑問Q&A
最後に、診察室でよく聞かれる質問にお答えします。
Q. 他の子にうつさないように、眼帯をして登園させた方がいいですか?
A. いいえ、お子さんに眼帯はおすすめしません。
眼帯をすると、気になって逆に手で触ってしまい、細菌が入って悪化する原因になります。また、視力が発達途中の子供にとって、片目を塞ぐことは「弱視」のリスクにもなりかねません。見た目が気になるかもしれませんが、そのままの方が早く治ります。
Q. プールに入っても大丈夫ですか?
A. ものもらいなら医学的には問題ありませんが、見学が無難です。
ものもらい自体はプールでうつりませんが、プールの塩素などの刺激で炎症が悪化することがあります。また、周囲の保護者が「目が腫れているのにプールに入っている」と不安に思うこともあります。腫れがひどいうちは、見学させてあげるのが安心です。(※はやり目の場合は、もちろんプールは絶対禁止です)
Q. 市販の目薬を使ってもいいですか?
A. 「抗菌」と書かれたものならOKですが、2〜3日で治らなければ受診を。
ドラッグストアで売られている「抗菌目薬」や「ものもらい用目薬」は使用しても構いません。ただし、子供の目はデリケートです。数日使っても良くならない、または悪化する場合は、自己判断を中止して眼科へ来てください。
正しい知識で、罪悪感なく「行ってらっしゃい」を
子供の体調不良は、働く親にとって本当に胃が痛くなる問題ですよね。
「休ませてあげたいけど、仕事も穴を開けられない」。その葛藤、本当によく分かります。
でも、今日お伝えしたチェックリストで「ものもらい」の可能性が高いと判断できたなら、罪悪感を持つ必要はありません。
「うつらないから大丈夫。行ってらっしゃい!」
そう笑顔で送り出してあげてください。そして、お母さんも胸を張ってお仕事に向かってくださいね。
もし少しでも「怪しいな」と思ったら、その時は迷わずお休みして、私たち眼科医を頼ってください。
[参考文献リスト]