その光、網膜が助けを求めているサインかも。画像で比べる「危ない光視症」と失明を防ぐタイムリミット

昨夜、寝室の電気を消して布団に入った瞬間、視界の端で「ピカッ」とカメラのフラッシュのような光が見えた……。

外に車が通ったわけでもないのに、目を閉じても光が走る。

「もしかして、このまま失明してしまうの?」

そんな得体の知れない恐怖に、今まさに震えているかもしれません。

暗闇で突然フラッシュが見える体験は、誰だってパニックになりますよね。

でも、安心してください。その不安は、あなたの体が異常を知らせる「正しい反応」です。

私は眼科専門医として、これまで延べ5,000件以上の網膜疾患に向き合ってきました。

結論から申し上げます。その光は、あなたの網膜が「今、引っ張られていて苦しいよ」と出しているSOSサイン、「光視症(こうししょう)」です。

大切なのは、そのサインが「一時的な加齢現象」なのか、それとも「網膜に穴が開く寸前の緊急事態」なのかを正しく見極めること。

この記事では、私の臨床経験に基づき、画像やイラストを使って「危ない見え方」を具体的に解説します。

今すぐ何をすべきか、このガイドで一緒に確認していきましょう。


著者プロフィール

南 達夫(みなみ たつお)
眼科専門医 / 網膜硝子体手術認定医

臨床歴20年。網膜剥離や加齢黄斑変性など、失明に直結する重症疾患の診断・手術を専門とする。これまでに執刀した硝子体手術は5,000件を超え、「手遅れになる患者を一人でも減らす」をモットーに、WebやSNSでの啓発活動に注力している。


【医療コンプライアンスに基づく注記】
本記事は、日本眼科学会および日本眼科医会の診療ガイドラインを一次情報源として作成されています。視界の一部が欠けている、あるいは急激な視力低下がある場合は、この記事を読み進める前に、直ちに最寄りの眼科救急を受診してください。

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「稲妻?フラッシュ?」画像で照合する光視症の見え方バリエーション

光視症の見え方は、人によってさまざまです。

しかし、網膜が強いダメージを受けているときには、特徴的な「光の形」が現れます。

あなたの見え方が以下のどれに近いか、照らし合わせてみてください。

1. カメラのフラッシュ型(要注意)

暗い場所で、一瞬「ピカッ」と鋭く光るタイプです。

カメラのストロボを至近距離で浴びたような、白く強い光が特徴です。

視界の端(耳側)に見えることが多く、網膜が強く引っ張られているときによく見られます。

2. 走る稲妻型(危険度:高)

視界の端を、ジグザグとした光の筋がシュッと走り抜けるタイプです。

一瞬ですが、非常に鮮明に見えることがあります。

これは網膜の一部が物理的に引きちぎられようとしているサインである可能性が高く、警戒が必要です。

3. 散る火花型(生理的変化に多い)

線香花火の火花が散るような、あるいは小さな光の粒がパチパチと見えるタイプです。

後述する「後部硝子体剥離」の初期段階で見られることが多く、比較的落ち着いた症状であることが多いですが、油断は禁物です。

光視症の見え方再現イラストギャラリー

なぜ目を閉じても光るのか?網膜が「悲鳴」を上げているメカニズム

「外は真っ暗なのに、目を閉じても光が見えるなんて、脳の病気じゃないかしら?」と恵子さんは不安に思われたかもしれませんね。

でも、実はこれ、目の中で起きている「物理的な引っ張り合い」が原因なんです。

私たちの目の中には、硝子体(しょうしたい)という透明なゼリー状の組織が詰まっています。

50代前後になると、このゼリーが少しずつ萎縮して網膜から離れていく「後部硝子体剥離」という現象が起きます。

これは白髪が増えるのと同じ、自然な加齢変化です。

問題は、このゼリーが網膜から剥がれる際、網膜と強く癒着している部分を「グイッ」と引っ張ってしまうことです。

網膜は、光の刺激しか脳に伝えられない特殊な神経です。

そのため、物理的に引っ張られた刺激を、脳は「光が当たった!」と勘違いしてしまいます。

これが、目を閉じても、暗闇でも光が見える正体です。

いわば、網膜が上げている「悲鳴」のようなものなのです。

硝子体が網膜を引っ張り、光を感じる仕組み

【緊急判定】今すぐ眼科へ行くべき「本当に危ない」3つのサイン

光視症の多くは、硝子体が網膜から完全に離れてしまえば自然に消えていきます。

しかし、中には網膜に穴が開く「網膜裂孔(れっこう)」や、そこから剥がれる「網膜剥離」へ進行してしまうケースがあります。

以下の表で、あなたの緊急度をチェックしてみましょう。

📊 比較表
光視症の緊急受診判定チャート

症状のチェック項目様子を見て良い(生理的)今すぐ受診が必要(病的)
光の回数・強さたまに見える、光が弱い頻繁に見える、光が鋭く強い
飛蚊症(黒いゴミ)以前から変わらない急に増えた、形が変わった
視界の欠損なしカーテンがかかったように一部暗い
視力低下なし急に霞む、見えにくい

特に、「光視症」と「飛蚊症の急増」がセットで起きた場合は、網膜に穴が開いた際の出血や色素が目の中に舞っている証拠です。

これは最強のレッドフラッグ(危険信号)です。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 「明日まで待とう」という判断が、一生の視力を左右することがあります。

なぜなら、網膜剥離は一度始まると、数時間〜数日のうちに中心部(黄斑)まで及ぶことがあるからです。剥離が中心まで進んでしまうと、手術をしても元の視力には戻りません。逆に、剥離する前の「網膜裂孔」の段階で見つければ、入院不要のレーザー治療(光凝固術)だけで、失明リスクをほぼゼロに抑え込むことができます。

脳の病気?それとも目?「閃輝暗点」との見分け方と検査の不安解消

光が見える症状には、脳の血管が原因で起きる「閃輝暗点(せんきあんてん)」というものもあります。

恵子さんのように脳の病気を心配される方も多いので、違いを整理しておきましょう。

  • 閃輝暗点(脳由来): ギザギザした光が20分ほど続き、視界が見えにくくなった後、激しい頭痛が来ることが多い。
  • 光視症(目由来): 一瞬の光が何度も繰り返される。頭痛は伴わない。

もし「目由来」の可能性が高いなら、迷わず眼科へ向かってください。

眼科で行う「眼底検査」の準備

眼科では、瞳を広げる「散瞳薬(さんどうやく)」を使って、網膜の隅々までチェックする眼底検査を行います。

  • 眩しさ: 検査後4〜5時間は、瞳が開いたままになるため、外が非常に眩しく、ピントが合いにくくなります。
  • 運転禁止: 車やバイクの運転は絶対にできません。公共交通機関か、ご家族の送迎で受診してください。
  • サングラス: 帰りの眩しさを和らげるために、サングラスを持参すると安心です。

まとめ:「今」動くことが、あなたの視界を一生守ることに繋がります

恵子さん、目の中で走るその光は、網膜があなたに送っている「助けて」というメッセージかもしれません。

  1. 画像で照合: 鋭いフラッシュや稲妻のような光は、網膜への強い刺激です。
  2. 随伴症状に注意: 黒いゴミ(飛蚊症)が急に増えたら、それは緊急事態です。
  3. 早期受診のメリット: 網膜剥離になる前なら、レーザー治療で視力を守れます。

「大げさだと思われないかしら」なんて心配は無用です。

私たち眼科医にとって、光視症で受診された患者さんの網膜をチェックし、「異常なし」と伝えて安心してもらうことも、大切な仕事の一つなのです。

もし異常があったとしても、今の医療なら早期発見で守れる可能性が極めて高い。

明日の朝一番で、信頼できる眼科の門を叩いてください。

その一歩が、あなたのこれからの鮮やかな視界を守る、最も大切な決断になります。


【参考文献リスト】

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