「昨日の夜、おしゃれなバルで食べたブルーチーズが原因?」
翌朝、激しい腹痛と下痢に襲われ、トイレから出られない……。
スマホで「ブルーチーズ 食中毒」と検索しては、「リステリア菌」「死亡例」といった恐ろしい言葉が目に飛び込んできて、パニックになっていませんか?
「カビを食べるなんて、やっぱり危険だったんだ」
「私、大変な病気になっちゃったの?」
そんな不安で押しつぶされそうなあなたへ。
まずは深呼吸してください。
結論から言えば、あなたが健康な成人なら、重篤な食中毒である可能性は極めて低いです。
この記事では、元食品衛生監視員の私が、病院に行くべき危険なサインと、自宅でできる正しい対処法を分かりやすく解説します。
今のお腹の痛み、その正体を一緒に冷静に見極めていきましょう。
[著者情報]
この記事を書いた人:井野 霧子(いの きりこ)
管理栄養士 / 元食品衛生監視員
保健所での食品衛生指導歴10年。「正しく怖がる食中毒」をテーマに、ネット上の過剰な不安を解きほぐす専門家。チーズ工房の衛生管理アドバイザーも務め、発酵食品の安全性に精通している。
【緊急チェック】今すぐ病院に行くべき「3つの危険サイン」
まずは、あなたの症状が「今すぐ病院に行くべき緊急事態」なのか、「自宅で様子を見ても大丈夫なレベル」なのかを判断しましょう。
以下の3つの症状のうち、ひとつでも当てはまる場合は、スマホを置いてすぐに医療機関を受診してください。

もし、これらの症状がなく、「お腹は痛いし下痢もしているけど、熱はないし水は飲める」という状態なら、少し落ち着いて大丈夫です。
それはおそらく、命に関わるような食中毒ではありません。
「リステリア菌」って本当に怖いの? 20代女性が知っておくべき真実
ネット検索で一番怖かったのは「リステリア菌」という言葉ではないでしょうか?
確かにリステリア菌は、ブルーチーズなどのナチュラルチーズから検出されることがある食中毒菌で、重症化すると髄膜炎などを引き起こす怖い存在です。
しかし、ここで重要な事実をお伝えします。
リステリア菌が牙をむく主なターゲットは、「妊婦さん、高齢者、免疫機能が低下している方」です。
厚生労働省のデータによると、健康な若年層(20〜30代)がリステリア菌に感染しても、無症状で終わるか、軽いインフルエンザのような症状(発熱、筋肉痛、軽い下痢)で済むことがほとんどです。
健康な成人の場合、無症状で経過することや、軽いインフルエンザ様の症状を示すにとどまりますが、妊婦、高齢者の方、免疫機能が低下している方(中略)は、重症化しやすいため、注意が必要です。
出典: リステリアによる食中毒 – 厚生労働省
つまり、あなたが現在妊娠中などでなければ、そこまで過度に怯える必要はありません。
リステリア菌は「健常者にとっては低リスク(Low Risk)」な菌なのです。
じゃあ何が原因? 食中毒以外に考えられる「3つの犯人」
「食中毒じゃないなら、この腹痛は何なの?」
そう思いますよね。実は、ブルーチーズでお腹を壊す原因の多くは、菌ではなく「体質」や「成分」にあります。
1. 乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)
日本人の成人の多くは、牛乳に含まれる「乳糖」を分解する酵素が不足しています。
普段は大丈夫でも、体調が悪い時や、久しぶりに乳製品を摂った時に、分解しきれなかった乳糖が下痢を引き起こすことがあります。
これが最も多い原因(Cause)です。
2. 脂質の摂りすぎ
ブルーチーズは、チーズの中でも特に脂肪分が多い種類です。
美味しいからといって食べ過ぎたり、脂っこい料理と一緒に食べたりすると、消化が追いつかずに下痢になることがあります。
3. カビへの過敏反応
ブルーチーズの青カビは食用で無害ですが、カビに慣れていない体が「異物だ!」と勘違いして、早く外に出そうと反応することがあります。
これはアレルギーとは違い、一時的なものです。
つまり、今のあなたの症状は「毒を食べたから」ではなく、「体がちょっとびっくりしただけ」の可能性が高いのです。
自分を責める必要はありませんよ。
つらい腹痛を乗り切る! 自宅でできる「正しい対処法」
原因がなんとなく分かったところで、今あるつらい症状をどう乗り切るか。
プロが教える正しいケア方法は以下の通りです。
1. 下痢止めは飲まないで!
これが一番大切です。下痢は、体に入った「合わないもの」を外に出そうとする防御反応です。
薬で無理に止めてしまうと、悪いものがお腹の中に留まってしまい、かえって回復が遅れることがあります。
つらいですが、出し切るのが一番の近道です。
2. 水よりも「経口補水液」を
下痢で失われるのは水分だけではありません。
塩分などのミネラルも一緒に出ていってしまいます。
ただの水やお茶ではなく、経口補水液(OS-1など)や、常温のスポーツドリンクをちびちび飲みましょう。
3. 食事は無理しない
「体力をつけなきゃ」と無理に食べる必要はありません。
お腹が空いてきたら、おかゆやうどんなど、消化に良いものを少しずつ食べてください。
もちろん、チーズや牛乳はしばらく控えましょう。
まとめ:ブルーチーズを嫌いにならないで
今回の腹痛は、おそらく「体質」や「たまたまの体調」が重なった結果です。
決して、あなたが悪いわけでも、ブルーチーズが危険な食べ物なわけでもありません。
- 高熱や血便がなければ、まずは落ち着く。
- 健常者ならリステリア菌のリスクは低い。
- 下痢止めは飲まず、水分補給で出し切る。
怖かったですよね。でも、これで自分の体のクセが一つ分かりました。
「私は一度にたくさん食べるとお腹を壊しやすいんだな」
そう分かれば、次は量を調節したり、体調が良い時に楽しんだりと、対策ができます。
元気になったら、また少しずつ、美味しいチーズの世界を楽しんでみてくださいね。
[参考文献リスト]
- リステリアによる食中毒 – 厚生労働省
- MSDマニュアル 家庭版 – 食中毒