
この記事の著者:加藤 博(かとう ひろし)
医療事務管理士・元クリニック事務長
内科・皮膚科クリニックにて15年間、事務長としてレセプト(診療報酬明細書)点検業務に従事。「医療費の仕組みは複雑だからこそ、患者さんが損をしない知識を」をモットーに情報発信を行う。
「最近、食後になんとなく体が痒くなる」「季節の変わり目でもないのに、鼻水が止まらない」
そんな原因不明の不調に悩みながらも、ネットで検索して出てきた「アレルギー検査 費用 2万円」という文字を見て、そっとスマホを閉じてしまった経験はありませんか?
給料日前だし、もし病院の窓口で高額請求されたらどうしよう……その不安、痛いほどよく分かります。
でも、元クリニック事務長の私から言わせれば、その「2万円」という情報は大きな誤解を含んでいます。
実は、保険証を持っていて、正しい手順を踏めば、アレルギー検査の費用は「約6,000円」でお釣りが来るのです。
この記事では、診療報酬点数という公的なルールに基づいた正確な費用の計算式と、医師に「自費(全額負担)」と言わせないための賢い受診テクニックを、包み隠さず解説します。
財布に7,000円入れておけば大丈夫。その根拠を今からお話しします。
【明細公開】アレルギー検査(View39)のリアルな費用内訳
まず、皆さんが一番知りたい「結局いくら払うのか?」という疑問に、1円単位の根拠を持ってお答えします。
ネット上には「検査料 5,000円〜」といった曖昧な表記が多いですが、病院の窓口で支払う金額は検査料だけではありません。
初診料や判断料といった「基本料金」が必ず加算されるため、これらを含めた総額を知っておく必要があります。
現在、多くのクリニックで採用されている「View39(ビュー39)」という検査(一度の採血で39項目を調べるセット検査)を受けた場合の、リアルな明細は以下の通りです。
なお、計算は令和6年の診療報酬点数に基づいています。
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このように、View39という検査の価格は「診療報酬点数(1,430点)」として国によって決められており、これに初診料などを足し合わせると、窓口での支払額は約5,700円〜6,000円になります。
これが「全国一律の公定価格」です。
つまり、保険適用で受ける限り、どこの病院に行っても2万円を請求されることはあり得ないのです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 財布には「7,000円」入れておけば安心です。
なぜなら、上記の約5,700円に加えて、もしお薬(抗アレルギー薬や塗り薬)が処方された場合、薬局での支払いがプラス1,000円程度発生する可能性があるからです。それでも合計7,000円あれば十分足ります。「2万円」というのは、人間ドックなどのオプションや、保険を使わない「自費診療」の場合の価格ですので、安心してください。
「なんとなく」はNG!保険適用を勝ち取る魔法の問診票
費用が約6,000円で済むのは、あくまで「保険適用(3割負担)」の場合です。
もし保険が適用されず「自費(10割負担)」になれば、支払いは約2万円に跳ね上がります。
ここで重要なのが、「保険適用」と「治療の必要性」の関係です。
日本の健康保険制度では、「医師が治療のために必要だと判断した検査」にのみ保険が適用されます。
つまり、受付や問診で「なんとなく心配だから調べてみたい」「アレルギーがあるか興味がある」と言ってしまうと、医師は「治療の必要性なし(=予防・健診目的)」と判断し、自費診療になってしまうリスクがあるのです。
保険適用を確実に勝ち取るためには、ご自身の症状を具体的に伝え、「治療したい」という意思を示す必要があります。
📊 比較表
医師への伝え方 OK例 vs NG例
| 項目 | 保険適用になりやすい伝え方(OK) | 自費(全額負担)になりがちな伝え方(NG) |
|---|---|---|
| 受診の動機 | 「食後に体が痒くなることがあり、原因を知って対策したい」 | 「なんとなく心配なので、一通り調べておきたい」 |
| 症状の具体性 | 「季節の変わり目に鼻水が止まらなくなり、仕事に支障がある」 | 「今は特に症状はないが、将来のためにチェックしたい」 |
| 医師への態度 | 「辛いので治療をお願いします」 | 「アレルギー検査だけやってください」 |
| 結果 | 治療の一環とみなされ、3割負担(約6,000円) | 健診目的とみなされ、10割負担(約2万円) |
このように、「3割負担」と「自費診療」は対立する概念ですが、その境界線は「患者さんの伝え方」一つで決まることも少なくありません。
嘘をつく必要はありませんが、「困っている症状」と「治したい意思」をしっかりと伝えることが、自分のお財布を守ることにつながります。
なぜ「View39」が選ばれるのか?コスパ最強の理由
先ほどから費用の計算に登場している「View39」ですが、これは「特異的IgE検査」と呼ばれる血液検査の一種です。
なぜ多くのクリニックでこの検査が採用されているのでしょうか? その理由は圧倒的な「コストパフォーマンス」にあります。
通常、アレルギー検査は「スギ花粉」「卵白」「ダニ」といった項目を1つずつ選んで検査します。
しかし、原因がわからない段階で1つずつ選ぶのは難しく、かといって個別にたくさんの項目を選ぶと費用が高額になってしまいます。
そこで登場するのが、主要なアレルゲン39項目をセットにしたスクリーニング検査「View39」です。
- 吸入系(19項目): スギ、ヒノキ、ダニ、ハウスダスト、ネコ、イヌなど
- 食物系(20項目): 卵、牛乳、小麦、エビ、カニ、大豆、ピーナッツなど
これらを個別に計算すると本来はもっと高額になりますが、セット検査として「まるめ(定額化)」されているため、1項目あたり約150円という破格の安さで網羅的に調べることができるのです。
「何が原因かわからないけれど、とりあえず主要なものを全部チェックしたい」という田中さんのような方にとって、これほど理にかなった検査はありません。
よくある質問 (FAQ)
最後に、アレルギー検査に関してよく患者さんから受ける質問にお答えします。
Q1. 子供の検査費用も同じですか?
基本的には同じ計算式ですが、多くの自治体では「こども医療費助成制度」が適用されます。お住まいの地域や年齢によっては、窓口負担が「無料」や「500円」で済む場合がほとんどです。必ず「こども医療費受給者証」を持参してください。
Q2. 何科に行けばいいですか?
内科、皮膚科、耳鼻科、アレルギー科のいずれでも検査可能です。ご自身の症状に合わせて選んでください(鼻水なら耳鼻科、湿疹なら皮膚科など)。View39は一般的な検査なので、多くのクリニックで実施していますが、念のため事前に電話で「アレルギーの血液検査はできますか?」と確認すると確実です。
Q3. 結果はすぐにわかりますか?
いいえ、血液を採取して検査会社に送るため、結果が出るまでに1週間程度かかります。後日、結果を聞くためにもう一度受診する必要があります(その際は再診料として数百円〜1,000円程度かかります)。
まとめ:7,000円を財布に入れて、明日病院へ行こう
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
「アレルギー検査は高い」というイメージは払拭されましたでしょうか。
- アレルギー検査(View39)の費用は、初診料込みで約6,000円(3割負担)。
- 「なんとなく」ではなく「症状があり困っている」と伝えれば、保険は適用される。
- View39なら、39項目を一度に調べられてコスパが最強。
この3つの事実を知った今、もう「2万円請求されるかも」と怯える必要はありません。
原因不明の痒みや鼻炎を放置して、アナフィラキシーなどの重大な事態になってからでは遅すぎます。
財布に7,000円を入れて、明日にでも近くのクリニックを受診してみてください。
原因がわかれば、食事の選び方も、部屋の掃除の仕方も変わり、今の漠然とした不安から解放されるはずです。
あなたが健康で快適な毎日を取り戻せることを、心から応援しています。
[参考文献リスト]
- 令和6年度診療報酬改定の概要 – 厚生労働省
- アレルギー検査 View39 – サーモフィッシャーサイエンティフィック
- アレルギー検査の費用は?保険適用・自費・項目別の違いを解説 – 天神皮ふ科